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Dec 3, 2010
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カテゴリ:士道惨なり

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「士道惨なり(5)

 一人となり弦次郎は腕組みをし、今日の城内の騒動を思い起こしている。

 殿が村正を入手された事からこの度の騒ぎとなった。それはあまりに出来過

ぎたことと思われる。どこぞから眼を光せ監視せねば不可能なことである。

 それなくしては公儀の忍び者が試し斬りの場に、姿を見せることは考えられ

ないのだ。どこの誰から事が洩れたのか疑問とし、心に重くのしかかっていた。

 微かな足音が響き、夕餉の膳を持った香代が現れた。

「貴方、お疲れと存じ一本お付けいたしました」

 見ると大徳利がのっている、思わず弦次郎の顔が和んだ。

 香代の酌で一杯飲み干した。 「美味い、異の腑に染み入る」

 香代は何も尋ねず、夫の側にひっそりと座っている。杯を手に弦次郎は妻を

眺めやった、今年で三十一歳になった筈である。

 嫁いできて十年になるが、口数が少なく家事にもそつがなく、母のお気に入り

の嫁である。弦次郎も香代を愛していた。

 それ故にお城での出来事を話すことを控えてきたが、酒が入り寡黙な彼を

饒舌にかえた。弦次郎は今日の出来事を香代に告げた。

「恐ろしいことですね、ご公儀に知れたらいかがになります?」

 切れ長の眼で夫の弦次郎を見つめた。

「心配いたすな、明日、その為の話し合いがある」

 答えながら佳代の横顔に見蕩れた。最近はしみじみと妻の顔を見たためしが

なかった。夫の視線を感じ香代は頬を染めた、旦那さまにこのような眼で見られ

るなんて久しぶりのことであった。香代は幸せを感じた。

「貴方・・・」 香代が口ごもった。

「どうか致したか」 優しく問われ、香代の顔に恥じらいが浮かんだ。

「ややが」  「赤子か?」  「はい」 香代の返事で弦次郎の顔が緩んだ。

「祝着至極じゃ、ようやった男の子なら良いがの」

「まだ三ヶ月です」 香代が頬を染め逃げるように部屋を辞して行った。

 弦次郎は妻の懐妊の知らせで、一瞬なりと城内での悪夢を忘れた。

         (二)

 翌日、評定所で事件の話し合いがもたれた。筆頭家老の望月大膳を上座と

し、次席家老の亀田新左衛門、中老の土井武兵衛の重役と稲葉十右衛門と、

森弦次郎の五名が同席していた。

「公儀の忍びが一人と判明いたし、我等も一安心じゃ」

「そのように暢気に構えられては困りますな」

 稲葉十右衛門が刺のある口調を浴びせ、一座を見廻し眼を光らせた。

「なにっ、わしらを暢気者と申すか」 望月大膳が怒声をあげた。

「左様、この度の事件は殿のご道楽から起こったこと、公儀に弓をひくような

お刀を購った為の騒動にござるぞ」

 稲葉十右衛門がそげた頬をひくっかせ応じた。

「殿まで悪しざまに言うとは許さぬ」 土井武兵衛が応酬した。

「拙者は目付としてのお役目から申したまで、いくらご道楽とは申せ、村正など

を入手された殿に何ゆえに諫言なさいませぬ」

「殿は我等の諫言なんぞに耳をかされぬわ」

土井武兵衛が汗を滴らせ荒々し声を発した。

「その為のご重役ですぞ」 土井武兵衛が言葉を詰まらせた。

「稲葉っ、幸いにも曲者は一人であった。今後は我等三名がご諫言申しあげる」

 次席家老の亀田新左衛門がなだめるように諭した。

「ご三方は何もお分かりに成ってはおられぬ」

 稲葉十右衛門が精悍な顔に皮肉を浮かべ、望月、亀田、土井の三人をねめ

廻した。

「下役の分際で無礼じゃ」  「それでは話し合いになりませぬな」

 稲葉十右衛門が、そげた頬に苦笑を刻み言葉をかさねた。

「忍びが一人でないとしたら、ご三方はいかが為される」

「止せ、お主の言葉が真実としたら、村正をどこぞに隠さねばなるまい」

 弦次郎がはじめて口を挟んだ。

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Last updated  Dec 3, 2010 12:31:18 PM
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