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Dec 4, 2010
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カテゴリ:士道惨なり

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「士道惨なり(6)
  
「話が分かるの。公儀に知れたら幕府より使者が参り、きつい詮議と城内の

探索をいたすことは明白じゃ。そうなれば我等はどう対処いたす」

 ようやく三人の重役はことの重要性を悟ったようだ。

「村正を処分せねばならぬの。いっそ九頭竜川へでも捨てるか」

 望月大膳が憂い顔で呟いた。  「それは殿がお許し為されまい」

 土井武兵衛が反論した、彼は殿の忠義の刀に対する執着心を知っていた。

「稲葉、目付としてのお主の考えを訊きたい」

「ご家老、これは異なことをお尋ねなさる。拙者はご重役の差配に従って

動くものと心得ております」 稲葉十右衛門が望月大膳に毒づいた。

「臍の曲がった男じゃ。お主には頼まぬ、口を閉じておれ」

 日頃、温和な次席家老の亀田新左衛門までが顔色を変えた。

 一座に重苦しい沈黙が漂うなか、弦次郎が沈黙を破った。

「ご重役、信濃の馬籠に永昌寺がございますな、殿の遠縁にあたられるお方

が住職と聞き及びます。そこに寄贈いたせば一件落着いたします」

「永昌寺か、美濃街道から郡上街道に進み、無事に中山道に抜けることが

出来れば、極秘にお刀の始末は可能じゃな」 

 筆頭家老の望月大膳が膝をうった。 

「誰がお刀を運びます。稲葉の申すとおり公儀に洩れたと仮定したら、

途中の道中が危ういことになりますぞ」

 土井武兵衛が顔を曇らせ首を傾けた。

「弦次郎の考えはなかなの良案と思います」

 稲葉十右衛門が真っ先に賛成した。

「お主に良き策でもあるのか?」

「中山道入ると今井田宿がございます。拙者は早馬で江戸に向かいます」

「何ゆえの江戸行きじゃ」 望月大膳が不審さうな顔をした。

「美濃、郡上街道は人通りが寂しゅうございます。襲うにはもってこい場所

ながら、お刀を持参する者が警戒し襲撃者は躊躇いたしましょう」

 稲葉十右衛門が答え、なおも言葉を継いだ。

「中山道は天下の街道、そこに踏み込めば警戒も緩みます。拙者は江戸藩邸

の目付役人を引き連れ、先に今井田宿に待機いたします。そこでお刀を引き

継ぎ信濃の永昌寺まで持参いたします」

「それは妙案じゃが、誰がお城からお刀を運ぶかじゃ」

「殿の道楽に付き合った、馬廻役にお命じなされ」

 稲葉十右衛門が、そっけなく答えた。

「ご重役、この務めは拙者がやりましょう。十右衛門の申す通り、責任の

一端は拙者にもございます」

「弦次郎、お主が行ってくれるか。ならば安心じゃ」

 望月大膳と亀田新左衛門が同時に安堵の声をあげた。

「弦次郎、お主は心形流の遣い手じゃ。公儀の忍びに発見されたも無事に

斬り抜けられよう」  土井武兵衛が顔の汗を拭っている。

「十右衛門、お主しくじるなよ、今井田宿で落ち合うことが叶わぬ場合は、

拙者が信濃まで足を伸ばさねばならぬ」

「拙者がしくじるか」  弦次郎と十右衛門の視線が絡まった。

 仔細な話し合いが続き、稲葉十右衛門が国許を発った十日後に、弦次郎も

国許を出立すると決まった。

「さて長い評定であったが策が出来た、稲葉は明日にでも早馬で発て。弦次郎、

お主は十日後じゃ。道中くれぐれも注意を怠るな、支度金は勘定方にわしから

話をつけておく」 望月大膳が満足そうに断を下した。

「ご家老、老婆心ながら申し上げますが、弦次郎が発つまでお刀の警護は

万全になされよ」  「心得ておる」

「郡上藩から中山道に入る途中が、最も危険と思われる。宿場に着く日に

拙者が現れなんだら、途中で何かがあったと思ってくれ」

 弦次郎が思案しながら稲葉十右衛門に念をおした。

「どういう意味じゃ」  「危険と感じたら、拙者の独断で信濃に向かう」

「案ずるな、巧くゆく」  稲葉十右衛門がはじめて笑みを見せた。

 土井武兵衛が不安そうにさかんに汗を拭っているが、筆頭家老の望月大膳は

ことが成ったと涼しい顔をしていた。

 弦次郎には何か心騒ぐものがあった。それが何処から来るのか分からない

が、前途に暗雲の漂いを本能的に嗅ぎ取っていた。

 それは剣客としての嗅覚のようである。

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Last updated  Dec 5, 2010 01:04:10 PM
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