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Dec 11, 2010
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カテゴリ:士道惨なり

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「士道惨なり」(12)

 これから江戸から駆けつけた目付役人と落ち合い、今井田宿で弦次郎と

会うのだ。稲葉十右衛門は愛馬の平首を軽くたたき騎乗した。

「奴を斬る」  低く呟きを残し馬腹を蹴った。馬が竿だちとなり一気に駆け

だした。ようやく周囲の山並みの稜線が明るくなってきた。

 稲葉十右衛門の鹿のなめし皮の羽織が、風をはらんで大きくふくらみ、

樹木の間に消えていった。


 その頃、弦次郎はお刀袋をかかえ旅籠から忍び出ていた。人目を避けながら

宿から見えた小高い丘に向かっていた。

 清流の音と小鳥のさえずりと草の匂いが心地良く身を包む。

 半刻後に彼は旅籠に戻ってきたが、手には何ももってはいなかった。

「ご散歩でございましたか」 

 旅籠の女衆が秀麗な顔をした、弦次郎を眩しそうに眺め声をかけた。

「そうじゃ、余りにも風景が綺麗での」

 彼は部屋に戻り、為すこともなく終日を過ごした。脳裡には稲葉十右衛門

への疑惑が黒雲のよに湧き上がっていた。

 まずは気を引き締め彼の出方を見よう、そう考えをまとめた。

 夕刻を迎える頃、武蔵屋の前が騒がしくなった。馬のいななきと馬蹄の

音が部屋まで聞こえてくる。稲葉一行が到着したようだ。

 弦次郎は素早く身繕いをととのえ彼らを待った。

 廊下に乱れた足音を響かせ、稲葉十右衛門の声がする。

「弦次郎、何処におる」

 相変わらず慌しいな男じゃ。弦次郎が苦笑を浮かべ部屋の外に出た。

そこには鹿皮の羽織姿の稲葉十右衛門が、精悍な顔をみせ待ち受けていた。

「弦次郎、ご苦労じゃ、遅くなって済まぬ」

 四人の配下が従っている、いずれも腕のたちそうな面構えの男で緊張気味

に弦次郎を見つめている。

「疲れたであろう、ここが拙者の部屋じゃ。まずはあがれ」

 番頭が茶を置いて去った。十右衛門があたりを警戒し声を低め訊ねた。

「お刀は無事か?」  「無事じゃ」

 弦次郎が破顔をし簡潔に答え、道中の様子を語った。

「妙じゃな、お主が一人と知りながら襲ってこぬとはな」

 十右衛門が平然と一人芝居をしているが、弦次郎は素知らぬ顔をして

聞き流した。

 窓の手すりに腰をおろした十右衛門が、街道に視線を這わせた。

「よく見渡せる」 精悍な顔で感心している。

「だから、この部屋を選んだ」  弦次郎がこともなげに答えた。

「弦次郎、お刀を引き渡せ、ここからは我等が引き受ける」

「この部屋にない」

 弦次郎の答えに稲葉十右衛門の顔が険しくなった。

「焦るな、大切なお刀を旅籠なんぞに置いてはおけぬ」

「何処ぞに隠したと申すか」  「左様」  「何処じゃ」

 二人のやり取りを見た四人が強ばった表情で弦次郎を見つめた。

「夜まで待て、ここから街道を見よ、日中では人目につく」

 街道は武家、町人等が三々五々と急ぎ足で行き交っている。

「間違いはなかろうな」 

 十右衛門の躯から殺気に似た気配が湧き上がった。

「稲葉、日頃のお主らしくないの、次第によっては拙者を斬るか」

 弦次郎が気迫を漲らせ厳しい顔をした。彼の脳裡に飯盛女に化けた、

お袖の言葉が現実味をおび、頭の片隅をよぎったのだ。

「許せ、気がたっておる」 あっさりと十右衛門が詫びた。

「夕食後に案内いたす。それまでは休息いたせ」

「そうじゃな拙者らは下の部屋じゃ、酒でも飲んで待つとしよう」

「刻限となったら、拙者が迎えに行く」

 その言葉で稲葉らは部屋から引き上げた。その後姿を見送り十右衛門が

人代わりしたように感じられた。

 何か企んでおるな十分に用心することじゃ。弦次郎は気を引き締めた。

 先刻の十右衛門から、発せられた殺気が気にかかった。奴が公儀の狗なら、

お刀を引き渡す時が危ない、これは剣客として勘であった。

 併し、藩内で竹馬の友として付き合った彼が、まさかと思う気持ちが勝った。

 今日の夕刻にお刀を稲葉十右衛門に引き渡せば、自分の任務は終わるのだ。

 そんな気の緩みが弦次郎の全身をつつみ込んでいた。

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Last updated  Dec 11, 2010 11:55:18 AM
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