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Dec 13, 2010
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カテゴリ:士道惨なり

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    「士道惨なり」(13)

 今井田宿に闇が覆いはじめた、付近の旅籠からは酔った濁声と嬌声が

洩れてきた。

 裕福な旅人や、憂さをはらす人々が女を侍らせ飲んでいるのだろう。

 弦次郎が旅姿となり、ゆっくりと稲葉十右衛門の部屋を訪れた。

「行くか」 稲葉十右衛門が鋭い目付きで立ち上がった。

「十右衛門、拙者が一足さきに行く」

 弦次郎が窓を開け放ち闇の中を指差した。

「あの丘の頂上に古びた祠があるが、そこに隠してある。人目もあろう、

用心して跡を追ってくれ」

 十右衛門の視線に黒々と山並みが連なり、旅籠宿を覆いかぶさるように

聳えたっている。その山並みの翳に小高い丘が見えた。

「あの右手の丘か?」 闇を透かし十右衛門が問いかけた。

「そうじゃ、旅籠を出ると橋を渡る細い小道がある。伝えば自然と祠に着く、

くれぐれも公儀の忍びに悟られぬようにな」

「分かった。お主が出たら、潮合をはかって我等もそこに向かう」

 打ち合わせを終え、弦次郎が素早く姿を消した。

「抜かるな、奴は心形流の遣い手じゃ。拙者が仕掛ける、お主らは奴の退路

を絶つのじゃ。決して逃してはならぬ」

 稲葉十右衛門が厳重な注意を与え、五名は風のように旅籠から去った。

 弦次郎は丘の頂上に立っている。暗闇が支配する崖下から濁流の音が

聞こえるが、何も見えない。彼は祠から村正を取り出し背におぶった。

下の方角から忍び足が聞こえてくる。

「弦次郎、何処におる」 低い稲葉十右衛門の声がした。

 なんとなく不自然な声に聞こえたが弦次郎が応じた。

「ここじゃ」  生暖かい闇の中から五つの影が現れた。

「なんじゃ、その形は?」

 稲葉十右衛門が弦次郎の姿を見咎めた為である。

「街道までは拙者が運ぶ、あとはお主が信濃まで運んでくれ」

「承知。三名はもどり丘の裾まで馬を引いて参れ」

 十右衛門が命じ三名が丘を駆け下って行った。残った一人に、

「お主は、誰ぞ潜んでいないか先を警戒するのじゃ」

 十右衛門がてきぱきと指図を終えた。

「十右衛門、不審な者は見かけなんだな」  「勿論じゃ」

「よし、拙者が先導する」 弦次郎が素早く先にたって熊笹を掻き分けた。

「弦次郎っ」 呼び止めた声が不気味に聞こえた。

「何じゃ」  振り向いた途端、背後から凄まじい掛声があがった。

 闇を裂いて鋭く刃が襲いかかった。弦次郎の腰間の愛刀が鞘走り絶叫が

あがった、血の臭いが漂った。

 先に警戒にあたる為に去った目付役人の一人が仕掛けたのだ。

「十右衛門、計ったな」  「馬鹿め」

 闇の中からあざ笑うような十右衛門の声がし、今まで経験したこともない

斬撃が襲いかかってきた。

「くっ-」 弦次郎のひたいに激痛が奔り抜けた。

 眼の前に十右衛門の姿が朧に見えた。弦次郎は見た、かって一度も見た

ことのない構えで十右衛門が佇んでいた。

「貴様」  眼に血潮が入り視界が薄れた。

「弦次郎、上意である。里忍びとし藩を探るとは不届きなり」

「なんと」  驚きの声をあげた弦次郎に凄まじい刃風が襲った。

 動揺した弦次郎が辛うじて受けたが、大刀が薙ぎ落とされた。

「この場で里忍びは地獄に堕ちるのじゃ」

 稲葉十右衛門の冷酷な声が響き、躱すに不可能の攻撃を受けた弦次郎の

左肩に痛みが奔り抜けた。  「矢張り、貴様であったか」

 弦次郎の悲痛な叫びが途中で途絶え、視界を失った身体が宙に浮いた。

 彼は斜面を転がり落ち、濁流に飲み込まれたのだ。

「しまった」  稲葉十右衛門が無念の声を漏らした。

 村正を失ったのだ、轟々と濁流の音が聞こえるのみであった。

「稲葉さま、奴はどうなりました」

 三名の配下がもどり十右衛門に声をかけた。

「奴め、村正とともに川に消えた」  「これでは助かりませんな」

「お主らは川下を探ってくれえ、奴を探し出すのじゃ。お刀はなんとしても

手に入れねばならぬ」

「心得ました」 配下が闇に消えた。

「弦次郎め」

 稲葉十右衛門が吠えた、確かな感触は残っているが村正を失ったことが

痛い。懸命な捜査も虚しく弦次郎の遺体を見つけ出すことは出来なかった。

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Last updated  Dec 13, 2010 11:12:54 AM
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