1187153 ランダム
 HOME | DIARY | PROFILE 【フォローする】 【ログイン】

長編時代小説コーナ

長編時代小説コーナ

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! --/--
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x

PR

Keyword Search

▼キーワード検索

Profile

龍5777

龍5777

Favorite Blog

シュウマイ New! Pearunさん

^-^◆ 思わず にっと… New! 和活喜さん

阪神タイガース、ア… New! クラッチハニーさん

天使の箱庭 第6話 New! 千菊丸2151さん

いっぷくする前に! 韓国の達人!さん

Comments

 人間辛抱@ Re:何故、安保法制が必要なのか。 (08/09) どうもお久しぶりです。 新型コロナウイル…
 http://buycialisky.com/@ Re:士道惨なり(11)(12/10) cialis muscle paincialis daily use side…
 http://buycialisky.com/@ Re:改定  上杉景勝(12/11) cialis 5 mg prezzo in farmaciaanti cial…
 http://buycialisky.com/@ Re:騒乱江戸湊(04/28) cialis in spanien kaufenavoid counterfe…
 http://buycialisky.com/@ Re:「改訂  上杉景勝」(04/21) what happens if a woman takes viagra or…
 http://viagraky.com/@ Re:士道惨なり(11)(12/10) offshore viagra &lt;a href=&quot; <sma…

Category

Freepage List

Calendar

Dec 14, 2010
XML
カテゴリ:士道惨なり

にほんブログ村 小説ブログ 歴史・時代小説へ クール にほんブログ村 小説ブログへ 


「武士道惨なり」(14)

        (四)

 筆頭家老の望月家に黒岩藩の主だった者がひそかに集まってきた。

 次席家老の亀田新左衛門が真っ先に訪れてきた。

「困った事態になったものじゃ」

 彼は弱々しい声で何度となく同じ言葉を呟いている。

「亀田殿、中老の土井武兵衛殿は遅いのう」

 望月大膳が床の間を背にし、貧乏ゆすりをしながら新左衛門に語りかけた。

 部屋の隅には稲葉十右衛門が、そげた頬をみせ鋭い眼差しで二人の家老を

眺めていた。

「土井さま、ただいまおこしにございます」

 望月家の用人が土井武兵衛の到着を伝えた。

「遅くなりました」 しわがれ声とともに土井武兵衛が肥満した姿をみせた。

「藩の重大事との事、何事が起こりました」

 相変わらず顔に汗を浮かべている。

「お座り下され」 大膳に促され、武兵衛が窮屈そうに尻を据えた。

「土井殿、既に亀田殿にはお伝えしたが、ご貴殿にも話さねばなりません」

 望月大膳の態度が妙に落ち着きがないと武兵衛には映った。

「筆頭家老の貴方さまが、そのように取り乱す訳はなんでござる」

「土井殿、あの妖刀の村正が当家に仇を為すやも知れませぬのじゃ」

「なんと・・村正が、それは可笑しい」 武兵衛が苦笑で応じた。

「土井殿、笑い事ではすまない失態が起こり申したのじゃ」

 望月大膳の言葉を遮るように武兵衛が反論した。

「貴方さまも承知の筈、あのお刀は森弦次郎とそこに居る、十右衛門が

永昌寺に秘匿いたした筈でござろう」

「いや、話はいささか込み入ってござる。順序だててお話いたそう」

「・・・」 武兵衛が不審そうな顔をした。

「当家に隠れ忍びの存在が顕かとなり、それがしの一存で稲葉十右衛門に

密命を下した件がござる」

「隠れ忍びとは里忍びにござるな、その者が当家に潜んでおると申されますか」

「左様、馬廻役の森家がその隠れ忍びにござる」

「馬鹿な、殿の信頼の厚い弦次郎が隠れ忍びと申されるか、嘘でござろう、

隠居の弦太夫も殿の信任が厚かった。それは何かの間違いじゃ」

 土井武兵衛が顔を赤らめ反論した。

「ご中老、すでに矢は弓から離れました」 稲葉十右衛門がかわって答えた。

「目付の分際で出すぎじゃ」 土井武兵衛が怒声を発した。

「ご中老さま、失礼ながら貴方さまにもその嫌疑がござる」

「なに・・何と申した」

「試し斬りは貴方さま方と殿に弦次郎しか知らぬ事にござった、この目付の

拙者にもお知らせはござらなんだ。その場に何ゆえに公儀の忍びが現れまし

た、それは誰かが漏らしたからにござる」

「むっ-」 武兵衛が怒りを堪えている。

「また村正の件は土井さまと弦次郎しか知らぬことでしたな」

 稲葉十右衛門が鋭く武兵衛を見つめた。

「それ故に弦次郎に嫌疑がかかり、拙者が今井田宿で奴を始末いたしました。

奴は崖下に転落いたし、我等の探索も虚しく死骸は発見出来ませなんだ」

「弦次郎の命を絶ったと申すか?」

「御意に」  見るみる土井武兵衛の顔色が変わった。

「十右衛門、村正も弦次郎と一緒か」

「はい、お刀の発見はもはや絶望かと思いまする」

「なぜ村正の発見が出来ぬ」  武兵衛が怒りを鎮め訊ねた。

「川は増水ですごい濁流にございました。我等は川下まで探索いたしましたが、

何も発見出来ませなんだ」

「万一、弦次郎の死骸があがっても、我が藩が係わった証拠とはならぬ」

 望月大膳が一座の者が安堵いるように言った。

「ご家老、森家をこのまま放置いたせば、必ずや公儀の耳に入りましょう。

繋ぎの忍びが当家に入り込まぬうちに、手を打たねば由々しき事になります」

「殿に申し上げねばならぬな」 亀田新左衛門が思案しつつ呟いた。

「それでは手遅れとなりますぞ、森家は我等目付が見張っております。当家の

取る策はひとつ、藩境を閉ざし関所を設け人々を監視せねばなりませぬ」

 稲葉十右衛門が鋭い目付きで一座を見つめ断じた。

 一座に重苦しい沈黙が漂った。

士道惨なり(1)へ






お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  Dec 14, 2010 11:43:22 AM
コメント(3) | コメントを書く
[士道惨なり] カテゴリの最新記事



© Rakuten Group, Inc.
X