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Dec 16, 2010
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カテゴリ:士道惨なり

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「士道惨なり」(16)

 忠義は迷いに迷っている。その苦悩は大膳とて理解できる、だが迷っている

暇はないのだ。一刻の猶予もなくことを治めねばならない。

「殿、ご決断を願わしゅうございます」

 無慈悲な事と知りながらも、藩主として断を下さねばならないのだ。

「大膳、酷く悲しきことじゃな」

 忠義の言葉に望月大膳が平伏した。彼にも殿の胸中は痛いほどに分かる。

「公儀に洩れぬうちに森家の者は一人残らず命を絶つよう、目付の稲葉に

申しわたせ」

「はっ、森家の者は捕縛いたし処刑いたしますか?」

「事の真実に疑いがある、藩としての処刑はならぬ」

「上意を頂きとうございます」  「書こう」

 こうして黒岩藩としての裁定が下された。

    (その一)

 森家の居間では弦太夫と老妻の千代が朝の茶を喫していた。

「良き天候が続くの、今年は米も豊作じゃろう」

 弦太夫は庭の樹木を眺めながら、老妻と柔和な会話を交わしている。

「嬉しきことにございますな、それにしても弦次郎の帰国が遅うございますな」

 千代が碗を置いて心配そうに弦太夫をみつめた。

「案ずるな、倅は信濃に足を伸ばしたのじゃ」

「信濃にございますか?」

「出かける前に、わしにそっと耳打ちをして行きおった」

「まあ」 千代が驚いている。廊下に小さな足音が響いた。

「弦一と路じゃな」 

 弦太夫の頬に微笑が浮かんだ、孫が可愛くて仕方がないのだ。

「お爺さま、お婆さま、お早うございます」

「おう、良き子じゃ」  勝手口の用を済ませた香代も顔を見せた。

 こうして五人が朝、弦太夫の居間で顔を合わせるのが森家の日課となって

いた。心持ち香代のお腹がふくらみを感じさせる。

 突然、朝の静寂が破れ、馬蹄の音が地鳴りのよう轟いた。

「何事でございましょう」 千代と香代が不安そうに顔を見つめあった。

 馬蹄の音にまざり野太い声が聞こえ、屋敷の周りが騒がしい。

 弦太夫が玄関に向かった、門前にはびっしりと藩士等が険しい顔で群がって

いる。中には顔も知らぬ者も混じっている。

「早朝から何事にござる」 弦太夫がしわ深い顔を引きしめ訊ねた。

 藩士等の群れを掻き分け騎馬の武士が現れた。

「これは目付の稲葉十右衛門殿か」  「森弦太夫、上意じゃ」

 精悍な風貌の稲葉十右衛門が鋭い声を発した。

「なんと、ご上意とな」  弦太夫が驚いて膝をついた。

 騎乗したまま稲葉十右衛門が、懐中から上意書を取り出し、弦太夫にさし

示した。弦太夫が眼を細め仰ぎ見た。

「森弦太夫、恐れ多くも三代にわたり、隠れ忍びとして黒岩藩に忍び込んだる

は不届き至極。よって森家の者に死罪を申しつくる」

 稲葉十右衛門の遠慮のない声が乾いて聞こえた。

「何を仰せじゃ。何ゆえに我が家を隠れ忍びと申される」

「痴れ者、言葉を慎め」 容赦のない声を浴びせられた。

 弦太夫の柔和な顔が一変し、眼に怒りの色が浮かんだ。

「ただ今のお言葉には従いかねる」 しわがれ声に凄味が加わった。

「黙れ、これは殿のご上意じゃ。倅の弦次郎は拙者が今井田宿にて討ち果た

した。殿も不憫と思し召し、夕刻までに自害いたせとの仰せじゃ。謹んでお受け

いたせ」  「なんと倅の弦次郎をお主が手にかけたと申されるか?」

「村正を持って江戸に逃れようとしたためじゃ」

「これは異なことを申される、何ゆえに弦次郎が江戸に行かねばなりませぬ」

「問答は無用じゃ、公儀の狗が何をほざくか。ご上意は確と申しわたした」

 稲葉十右衛門が馬首を返しながら大声で叫んだ。

「理不尽な言いがかりじゃ」 弦太夫の声が虚しく響いた。

 藩士等は遠巻きに屋敷を取り囲み、静まり返っている。

 季節外れの突風が吹きぬけた。何かを暗示させるように弦太夫は感じられ

た。

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Last updated  Dec 16, 2010 04:30:23 PM
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