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Dec 18, 2010
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カテゴリ:士道惨なり

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「士道惨なり」(18)

「そろそろ潮時じゃ、奴等が痺れをきらせ襲って参ろう。そち達は奥の

部屋に移るのじゃ、闘いが始まったら分かるの、自害いたせ」

 弦太夫が非情な言葉をかけ、二人の顔を名残惜しそうに見つめた。

「父上さま、子供達はわたくしが、その後に自害いたします。永いあいだ

お世話になりました。お別れいたします」

 細面の香代の横顔に毅然とした決意が秘めら、彼女は礼を述べ静かに

部屋を去った。微かな足音が聞こえたが、それも途絶えた。

 それを待って弦太夫は老妻を凝視した、言葉など不要な二人である。

「お先に参ります。香代殿と孫達の最後を見届けますのでご安心下さい」

 老妻の千代が弦太夫の手を握りしめた。

「千代、最後の願いじゃ。自害いたすまえに部屋に火を放て」

 千代が涙が宿った瞳で肯き、部屋を辞して行った。

 静寂の中に一人残された弦太夫は、一升徳利を引き寄せぐびっと飲み

干し、十文字に襷を結び立ち上がった。

 廊下は薄闇に覆われほの暗い、彼は廊下の掛け行灯に灯りを点して廻った。

 最後の時が訪れようとしている、大扉を破るカケヤの音が響いてきた。

(来よったな) 弦太夫の眼が凄味をおびて輝いた。

 我が家の意地を見せてやる、老齢の背中がしゃきと伸びきっている。

 弦太夫は廊下の所々に愛蔵の大刀を、倒れぬように立てかけて廻り、

脇差一本を腰に佩び、愛用の手槍を手に廊下に佇んだ。

 大扉が破られたようだ、玄関からもカケヤの音が響いてきた。

 この歳で斬り死にか、思いもせなんだが武士としては本望じゃ。

 行灯に照らされた弦太夫の顔に、爽やかな笑みが浮かんでいる。

「森弦太夫、まだ浮世に未練があるか」

 声と同時に乱れた足音がし、数名の藩士が抜き身を手に現れた。

「馬鹿者、何人冥途へ連れてゆけるかと楽しみに待っておった」

 厳重な身形の弦太夫が、仁王立ちとなって愛用の手槍を構えた。

「糞っ、このような小細工をしよって」

 藩士等が廊下一本となった屋内の様子を眺め罵声を浴びせた。

「貴様等に分かるか、命の遣り取りとは一対一じゃ」

 弦太夫が歯を剥きだし、不敵な含み笑いを洩らした。

「死ねえ-」 

 怒号とともに一人の藩士が無謀にも廊下をすべり突きかかってきた。

「えいっ」 しわがれ声の気合を発し、弦太夫が手槍をくり出した。

 苦痛の呻き声を残し、襲いきた藩士が廊下に転がった。弦太夫の手練の

槍が、相手の胸板を突き刺したのだ。

「死骸が邪魔じゃ、これでは斬り込みが出来ぬではないか」

 あとから突入した藩士が、廊下のたたずまいを見て驚きの声をあげた。

 弦太夫が軽快な足取りで、跳びはねるように前進し縦横無尽に手槍を

くり出している またもや藩士に犠牲者が出た。

「用心いたせ、爺と侮ってはならぬ。案外と手ごわい」

「馬鹿者、老いたりと言えども貴様等に遅れをとるわしではない」

 叫ぶゃ、さっと手槍をくり出した、相手は素早く身を翻し弦太夫の手元

に躍りこもうとしたが、弦太夫は手練の早業で槍を手元に引き寄せた。

「糞っ」 罵声を浴びせた相手の足元が乱れている。

 それを見逃さず、弦太夫が逃さずと手槍を投げつけたのだ。まさか得物を

捨てるとは思わぬ藩士は、胸板を深々と刺しぬかれ絶叫をあげて昏倒した。

 それを横目に見て弦太夫は立てかけておいた大刀を鞘走らせ、目前に迫っ

た藩士の空け胴に猛烈な突きを仕掛けた。血飛沫が吹きあがった。

 既に弦太夫は四人を手にかけている。

「どけえ-」 怒声をあげ稲葉十右衛門がはじめて弦太夫の前に現れた。

「十右衛門か、倅の仇じゃ」 弦太夫のしわ深い顔が憎しみに歪み、片手殴り

の一閃が十右衛門の肩先を襲った。火花が散った。

 刃と刃が行灯に照らされ交差し、鍔競り合いとなった。

 互いの顔と顔が近づき稲葉十右衛門が、弦太夫の耳元に低く囁いた。

「ご隠居、拙者は昔から弦次郎に嫉妬しておった」

「外道者、我等一家をはめた者は己じゃな」

 弦太夫が大刀を手放すや、脇差を抜き放ち怒りの一颯を送りつけた。

 予期せぬ攻撃を受け、稲葉十右衛門は辛うじて身を引いたが、脇腹に

浅手を負った。  「死に損ないの爺め」

 口汚く罵った十右衛門の必殺業が宙を裂いた。弦太夫が弾かれたように、

態勢を崩した。十右衛門の攻撃で左肩を割られたのだ、弦太夫の息があが

った。(わしも最後じゃな) 冷静に余力を計っている。

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Last updated  Dec 18, 2010 12:23:43 PM
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