長編時代小説コーナ
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龍5777
基本的には時代小説を書いておりますが、時には思いつくままに政治、経済問題等を書く時があります。
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「黄昏の末」(1) (序章) おいらの名は直木宗一、当年とって六十九歳の年金生活者である。 家族は老妻と倅の三人家族である。 老妻とは三十年前から家庭内別居の状態である。原因は長年にわたる おいらの女遊びにあった。 今更、言い訳なんぞしたくもないので冷え込んだ生活に甘んじている。 いい歳をした倅も今のご時世のおかげで非正規社員の身で独身を通してい る。こんな境遇の生活で将来の不安が常に付きまい、死を考えお迎えの 来ることを願う毎日である。 もう充分に生きたと自分では思っているので後悔はなにもない。 死後の世界に興味はあるが、死の恐れは皆目ない。むしろ早くお迎えが来な いかと思っている。 そんなおいらにも、たったひとつの願望がある。人が聞いたら呆れかえって 笑うだろうが、当事者のおいらには真剣極まりない問題であるのだ。 若い時から人並みはずれた女好きのおいらの倅は、泌尿器と性器の両方が 健在であり女の肉体を欲し、朝の微睡(まどろみ)の時間には何時も女の妖し げな姿態が夢となって襲ってくるのだ。 時には顔の分からない女との交合の場面が、迫真のシーンとなって登場する 始末である。そんな時の倅は我ながら吃驚するほど、隆々と勃って若い時期と 変わらぬ硬度を保っていのるだ。好々爺となり孫を抱いて遊んでいる年代の おいらが女の身体を求め悶々としているなんざ、笑いものにもなるまい。 お迎えの来る前に一度でいいから、女体を抱きしめたい欲求の虜となってい る。毎日が死と女とのセックスを思い描く生活なんざ、人並みの人間の考える ことではないが、経験した女達の乳房、秘毛、女陰(ほと)の感触、甘い吐息、 そうしたこをもう一度、味わってみたい妄想に苛まされいるのだ。