長編時代小説コーナ
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龍5777
基本的には時代小説を書いておりますが、時には思いつくままに政治、経済問題等を書く時があります。
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「黄昏の末(4) 生きると言うことはこんなにも苦しいものだろうか? おいらはそうは思わないね。振り返れば良いことも沢山あったよ。 年商、百億の中堅会社に途中入社し、定年まで管理職として勤めあげたし、 庶民がまだ遣らなかったゴルフを年に八十回も遣ることができた。 これも会社勤めのお蔭だよ。そんなことで夜な夜な飲み歩いたよ。 今どきの若い者には叶わないが、三十半ばから常に女は二人は居たね。 それも定年までだよ、飲みに行っては女のかけもちを遣ったものさ、 元気が良かったな。 そんな生活で一番の馬鹿は家内と結婚したことだ。世の中の半分は女だ。 地球上には何億という女が居るんだ。美人、ブス、利口、馬鹿、阿呆、 容姿端麗、短足肥満、金髪、黒髪等々、独り者はこの中から自分に合った 女を選ぶ権利があるんだが、そんな中から一番相性の悪い女を選んだことだ。 笑えるね、それが下宿の婆なんて洒落にもならないね。 相手も不幸だね、選ぶ相手をお互いに間違ったのさ、おいら口もききたくない よ。まして触るなんぞ気色が悪くて出来ねえよ。 それでも離婚は考えなかったね、それは会社の為だ。折角、出世したのに 婆の所為で棒に振りたくなかったのさ、大いなる誤算だったね。 その為に女漁りに精をだした、色んな女と知り合ったよ。 おいらは妻子持ちだから、厳密に言えば不倫だよな。そんなことは毛ほども 思わなかった。本当の意味の不倫とは亭主持ちの女だね、五人と関係をもった ね。スリルがあって女遊びの極致と思ったよ。 それもこれもババを掴んだ所為だと今になって悟った。 だが最近になって気づいたよ、おいらばかりではねえんだな。そこら辺りに ゴロゴロ居るんだよ、おいらのお仲間がね。宝クジよりも確率の悪い、異性を 選んだ連中がね、こういうことを悲劇と言うのかね、むしろ喜劇だろうね。 何億人という中から、最も相性の悪い相手を選ぶなんざ出来る芸当ではねえ よ。最近の若い連中は新婚旅行から戻り、直ぐに離婚する者が居るが早く 目覚め、好いことだと思うぜ。愚図愚図しているとおいらの二の舞いになるよ。 自分らしく生きることが大切だよ。これは年寄りの忠告だよ。 『馬鹿だよね、選り取り見取り選べたに、選りにもよってババを引く』 これがおいらの今の心境だよ、相手を選びなよ利口で容姿端麗でつくす女 をね。 黄昏の末<1)へ