長編時代小説コーナ
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龍5777
基本的には時代小説を書いておりますが、時には思いつくままに政治、経済問題等を書く時があります。
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「騒乱江戸湊(3) 「お頭は与力の河野権一郎さまか?」 「そうじゃ、さっそく明日から任務につく」 「有難い、役扶持がもらえるな」 十右衛門が嬉しそうに顔を崩した。この時代は封建社会が確率し、 門地門閥により大名、旗本、御家人と区分され、石高百俵(百石)以下を 御家人と呼ばれていた。彼ら二人は先手組同心とし三十俵二人扶持の 身分であった。与力同心は町奉行と同じく一代抱えの身分であったが、 親が死亡すると、倅が新規お召抱えという形式で跡目を継いできたのだ。 彼らは先手組から火付盗賊改方のお役変えとなると、勝沼十右衛門が 喜んだように役扶持とし、与力同心には新たに二十俵の扶持が支給された のだ。火付盗賊改方とは町奉行の管轄地の御府内、朱引地以外と他領にま で及んだ治安活動を任務としており、寺社奉行の管轄地も許可なく探索が 出来た。時には町奉行所も真似のできない荒っぽい探索も平気でやった。 その背景は先手組が歴とした戦闘部隊として生まれた経緯があり、戦士 の組織であったが、町奉行の役人は町人等が対象であり今で言う文民組織 で江戸の町の治安を守っていた。 源次郎と十右衛門にかせられたお勤めは、浅草奥山の水茶屋の実態を 探ることであった。 「役扶持がいただける祝い酒じゃ」 冷え込みの烈しい屋敷で二人は久しぶりの酒に酔い痴れていた。 (一章) この天保十四年に老中首座の水野忠邦が失脚し、阿部正弘が跡を 継いでいたが、天候不順がつづき各地に不穏な動きが頻発していた。 江戸では岡場所、水茶屋は禁止されていたが、こうした不景気な 時期にこそ岡場所や賭場が復活するのである。 その利権を一手に握る者が、闇の世界の実力者の闇公方と呼ばれる 正体不明の人物で、町奉行所と火付盗賊改方の幕吏は必死で探索に あたっていたが、いぜんとして足取りがつかめずにいた。 「十右衛門、明日の四つ(午前十時)に吉原の面番所で会おう」 「なんで遠廻りして吉原なんぞで落ち合うのじゃ」 「そんな不審そうな顔をするな、明日も雪じゃ。ついでに吉原の雪見を 楽しもう」 「そうか、分かった」 官許の遊里吉原は江戸町奉行所の管轄内である。そのために吉原大門 の脇に、町奉行所の隠密廻り同心が詰める面番所があった。 翌朝、二人は吉原の大木戸の左にある面番所で落ちあった。 「何事にござる?」 隠密廻り同心が不審そうに二人を見つめた。 「火盗改方にござる、これから御用の筋で奥山まで参るが雪見が観たくての」 「左様ですか、ご苦労にぞんずる」 この寒空での探索に隠密廻り同心が気の毒そうな顔で応じた。 今も雪が舞っている。二人は吉原の廓内に踏み込んだ。 遊女三千と言われる紅灯の巷は雪に覆われている。 二人は肩をならべ、南北に伸びた仲の町へと向かった。左右には江戸町 一丁目、二丁目。京町一丁目、二丁目。角町と並び廓内でもっとも賑やかな 通りである。 騒乱江戸湊(1)へ
騒乱江戸湊 Aug 9, 2011 コメント(198)
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騒乱江戸湊 Aug 6, 2011 コメント(59)
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