長編時代小説コーナ
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龍5777
基本的には時代小説を書いておりますが、時には思いつくままに政治、経済問題等を書く時があります。
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「騒乱江戸湊(7) 一方の勝沼十右衛門は首尾よく、一軒の水茶屋に揚がり込んでいた。 彼はこのような任務は苦手としていた、もともと謹厳実直な性格で任務 といっても、妓と褥をともにすると思うと気が重かったのだ。 「旦さん、初めてでござんすね」 やり手婆が十右衛門の姿形を素早く探っている。 「良く分かるの」 「これでも年季が入っていますでの」 「遊ばせてくれると聞いてきた」 「分かっておりますよ、偲ぶ恋路とちょつと違う」 やり手婆が鼻歌で戻っていった。 十右衛門は案内された部屋で妓を待ちながら、手酌で飲んでいる。 部屋はなにもかも新築らしく木と畳の匂いが心地よく感じられる。 元来、水茶屋とは湯茶の接待を行う店であるが、推察どおり女の世話を 生業とする淫売宿のようである。 (闇世界の大物が資金を出して造ったのか) と十右衛門は直感した。 「ご免なさいな、入らせていただきますよ」 襖ごしから若い女の声がし、十右衛門は杯を伏せ入るように促した。 緋縮緬の長襦袢の上から羽織をまとった、二十歳前後の妓が部屋に 現れた。一目で十右衛門の胸が高鳴った。 今まで女遊びはしてきたが、妻を迎えてから他の女と関係したことが なかったのだ。それ故に興奮で血が滾ったのだ。 「あたいはおよねと申しますのさ」 言葉のわりにすれてはいないようだ。彼女はぺったりと十右衛門の 傍らに座った。忘れていた若い女の体臭が彼の鼻孔をくすぐった。 「おまえはまだ日が浅いようじゃな」 「野暮な話はなしですよ」 およねが長襦袢の裾から白い膚をさらし酒を勧め、目に媚びを浮かべ 十右衛門の眼をのぞき見て訊ねた。 「このまま床入りしますか?・・・それとも目の保養なんぞいかがです」 「目の保養?」 十右衛門が不審そうな顔をした。 「他人の濡れ場をみて興奮してから、あたいを抱いて下さいな」 およねが濡れぬれとした眸で十右衛門を見つめている。まだこの稼業に 浸かってない眼の色をしている。 「さね師が居るのか?」 十右衛門にもそうした知識はあった。 「あたいには分かりませんが、今夜が初見せだそうです」 「そばに寄れ」 およねがその言葉に応じ熱い躰を寄せた。十右衛門が襦袢の裾をわり、 ぬめぬめとした太腿の感触を楽しみ、秘毛の下の狭間に指を差し入れた。 およねがよがり声をあげ、十右衛門が苦笑いを浮かべた。彼女の秘所は 乾いている。(さね師の手管でも見せねば媾合は無理じゃな) 十右衛門はおよねの秘所を確かめそう感じた。 この当時のさね師と呼ばれる者にはふた通りあった、ひとつは女のさね師 で、芸として秘所を客に見せる稼業で銭を秘肉に銜えたり、賽子を銜えこんで 丁半の目をだしたり、客に秘所をまじかに見せ、指を入れさせたりする行為を した。もうひとつは男女の組み合わせで、客の目の前で媾合を見せつけるさね 師であった。この男女のさね師は見る者を興奮させ評判が良かった。 「およね、今晩の趣向は女か男女の組か知っておるか?」 「さあ、あたいはまだ見たことがありませんのさ」 「そうか見物しょう、案内いたせ」 「あいな」 およねが手を握って案内にたった。廊下ぞえの部屋から男女の歓喜の呻き 声が洩れ聞こえ、およねの手のひらがじっとりと汗ばんできた。 「旦那、この部屋です」 およねが欲情でかすれた声で部屋の襖をそっと開けた。その瞬間、 十右衛門の頭の芯が真白くなった。 男女の絡みを目の当たりにするのは初の経験であった。それだけ強烈な 刺激を受けたのだ。およねが十右衛門の手を強く握りしめた。 騒乱江戸湊(1)へ
騒乱江戸湊 Aug 9, 2011 コメント(198)
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