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Apr 29, 2011
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カテゴリ:伊庭求馬無情剣

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      「騒乱江戸湊(13)

「源次郎、由蔵にあれだけの資金があるとは考えられぬ」

 十右衛門が和んだ眸で源次郎を見つめている。

「奴の背後には宗匠頭巾の武士がおるな、奴が闇公方かも知れぬ」

 源次郎が考え深そうに思案し断言した。

「源次郎、それは探索を続けねば分からぬ。あとの四軒にも足を運ばねば、

あの謎の武士には遭えぬな」

「役廻りの良いことじゃ、また新しく別の妓を四人も抱けるの」

「探索じゃ。妬くな、この金子はしばらく拝借する」

 十右衛門が笑いを残し去った。暮れ六つの鐘の音を待って源次郎も

屋敷を出た。江戸の町は相変わらず喧噪に満ちごったがえしている。

 既に帳がおちて大店の玄関には灯りが点っている。

 町人は暮れ六つ(午後六時)に仕事を終え、六つ半(午後七時)に夕食をとる

ために争って家路へと急ぐ。五つ(午後八時)には人々は寝静まるのだ。

 夜の四つ(午後十時)には町木戸が閉まる、これが江戸の町の生活である。

 源次郎は雑踏をかき分け、浅草に向かって足を速めていた。

        (謎の女)

 神田駿河台の旗本屋敷に孤影が現れ、雪駄の音を響かせ大目付の嘉納邸

に近づいた。三千五千石の大身の屋敷は相変わらずの佇まいをみせている。

 鬱蒼と繁った松や杉の大木が道に濃い翳をおとし、闇夜が広がっている。

 寒椿の甘い香りが微かに漂っている。

 孤影の武士は痩身を脇門に止め、迷うことなく扉を軽くたたいた。

 門番が不審そうな顔を覗かせ、孤影の主をみて慌てて屋敷にいざなった。

 玄関に続く石畳を踏む足音が響き、用人の根岸一馬が満面の笑顔で

出迎えた。

「お久しぶりに存じます。主人がお待ちにございます」

 孤影の主は元公儀隠密の伊庭求馬であった。彼は廊下を伝い書院の前で

足を止めた、何度も訪れた書院である。

 二人は身分の垣根を越えて刎頸の交わりを結んでいた。

「お入り下され」

 部屋の主の野太い声に誘われ、痩身を書院にいれた。

「久しい、伊庭殿」

 部屋にはこの屋敷の主人、大目付の嘉納主水が濃い髭跡をみせている。

「永らく旅に出ており、今宵、江戸に戻りました。お元気そうで結構」

 求馬が白面の相貌をみせ、主水に江戸帰着の挨拶をした。

「お座り下され」  「御免」

 伊庭求馬が座布団に痩身を据えた。

 「何処に旅を致された?」

  大目付の嘉納主水が興味を浮かべ、求馬の双眸を覗こんでいる。

「西国諸藩を巡って参りました」

「西国の景気はいかがじゃ」

 行灯の灯りに照らされた主水は着流し姿でくつろいでいる。

「どこも飢饉で苦しんでおりますな」

「幕府も財政難で阿部正弘さまも難儀してござる」

 主水が髭跡の濃い顔で幕閣の様子を告げた。

「老中首座となられたそうですな」

 求馬の問いに主水が無言で肯いた。

 部屋に根岸一馬が現れ、腰元が付き添い膳部を並べ引き下がった。

「根岸、酒をきらすな」

 酒好きの主人の声に畏まった根岸一馬が退出して行った。

「さて、久闊を祝って独酌と参ろう」

 主水が剛毛の生えた手の甲をみせ己の杯を満たした。

「頂戴いたす」  二人は常に独酌であった。

「西国の何処に行かれた?」

「京から長州、さらに足をのばし九州各地を巡って参りました」

 行灯の芯が、じしっと微かな音を響かせている。

「九州はいかがにござった」  「薩摩藩が眼につきましたな」

「ほうー、薩摩にござるか?」

 主水の顔に興味の色が刷かれた。



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Last updated  Apr 29, 2011 12:32:07 PM
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