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May 8, 2011
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カテゴリ:伊庭求馬無情剣

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      「騒乱江戸湊(22)

「源次郎、気をつけよ。闇世界で名の知れた殺し屋じゃ」

 十右衛門がはっと気づき忠告をした。

「面白い、薩摩の芋侍に敗けはせぬ」

 源次郎には浅利又七郎から学んだ、小野派一刀流の意地がある。

かたや十右衛門には、千葉道場での北辰一刀流の自負があった。

 二人は地獄の龍と名乗った浪人を、鋭く見据え間合いをつめた。

 桜吹雪が舞いあがった。

「やい、薩摩ぽ。さしずめ由蔵からの頼まれ仕事じゃな」

 源次郎が声を荒げるなか、地獄の龍が無言で同田貫の柄に手を添えた。

 三人の躰から凄まじい剣気が立ち昇り、潮合が決まった。

「きえっ―」  

 源次郎が懸け声を発し大刀が闇を裂いて奔った。

 それに呼応し十右衛門の大刀も地獄の龍に襲いかかった。

 同時に二本の大刀が桜の散る春の闇を裂いたのだ。

「チェストー」

 示現流独特の怪鳥のような凄まじい懸け声が夜空を震わせた。

 地獄の龍は二人の太刀を避けようとはせず、眼にも止らぬ疾さで

一閃、二閃と同田貫が闇を斬り裂いて奔りぬけた。

 その斬撃の速さは凄く躱すいとまもないものであった。

 源次郎が躰から血飛沫をあげ、悲痛な声を漏らし側溝に転がり落ち、

十右衛門の大刀は虚しく宙に流れ、示現流の一撃を頭蓋に受け、仰向けに

どっと地面に斃れた。それはほんの一瞬の出来事であった。

 血の臭いのなかで地獄の龍は斃した二人を覗き込んでいる。

 懐紙がぱっと夜空に舞い上がった。

 大刀が鞘に納まる音が響き、地獄の龍が辺りを警戒し佇んでいる。

 まさに地獄から現れた男のようで、長身から殺気を漲らせ踵を返し闇に

消えて行った。

 示現流とは立木打ちの鍛錬で太刀ゆきの速さを極める、実戦むきの剣法

であった。親指ほどの木を数本束ね一尺ほどにし、それを三尺ほどに立て

並べ懸け声とともに木剣で三千回を限度とし、打ち続ける凄まじい稽古で

業を極める流儀であった。

 その間は懸け声を絶やしてはならない。ただひたすらに打ち続け太刀

ゆきの速さのみを目的とした剣で受け太刀のない剣法であった。

 地獄の龍は示現流の一撃で二人を斃し去ったのだ。

 血腥い風が吹き抜け、斃れた二人の死骸に花びらが降りそそいでいた。

      (三章)

 火付盗賊改方の面々が、現場を封鎖して二人の死骸を改めている。

 河野権一郎は心から驚嘆していた。二人とも大刀を抜いて斃れていたが、

その大刀には一欠けらの疵跡もないのだ。

 古賀源一郎も勝沼十右衛門も手練者として知られていたが、その二人が

相手の攻撃を防ぐ間もなく、手もなく斬殺されたということを示していた。

 古賀源次郎は額から胸元まで一颯で薙ぎ斬られ、勝沼十右衛門は頭蓋を

断ち割られての絶息であった。

「これは間違いなく噂で聴く示現流で殺られた傷じゃ」

 河野権一郎は一目見て刺客の流派を見破った。

 しかし江戸で示現流を遣うことは珍しいことである。もし遣う者が居ると

したら薩摩藩士のみだ。だが両人を赤子のように水際立った腕で斃せる者

は、薩摩藩士といえどもなかなか居ないと思われた。

「お頭、古賀さんの懐中に日記が残されております」

「なんと、日記とな見せろ」

 半紙を綴じた日記帳には、源次郎らしくない几帳面な文字で探索の様子が

綴られていた。

「お主、勝沼家に参り、日記の類がないか確かめて参れ」

 河野権一郎の下知で配下が駈け去った。


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Last updated  May 8, 2011 03:21:10 PM
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