長編時代小説コーナ
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龍5777
基本的には時代小説を書いておりますが、時には思いつくままに政治、経済問題等を書く時があります。
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「騒乱江戸湊(24) 「わしは組頭の山部美濃守さまに古賀と勝沼両名の殉職を伝えて参った。 組頭さまの意向は岡場所と賭場の取り壊しにある。そのことを若年寄さまに ご相談なされると仰せだされた。 我等には探索を十分にやれとのお言葉じゃ、皆も心してあたってくれ。 また薩摩藩の方々の話で両人を殺害した下手人と覚しき男が浮かんできた」 「それは真の話にござるか?」 天野監物の疑問である。 「嘘など言うものか、良く聞くのじゃ。その男は元薩摩藩士の遣い手じゃ。 名を橋口龍五郎と名乗る男じゃ。奴は裏世界では有名な殺し屋として知られ ておる、長身で左眼が糸のように細い顔をしていると判明した。発見しても みだりに手をだすな、古賀や勝沼を一刀で仕留めた男じゃ」 「お頭、その者の似顔絵を番屋に張り出したらいかがにござる」 「天野、良いところに気付いた。早速、手配いたせ」 こうして火付盗賊改方の面々が朋輩の仇討ちの為に、浅草、奥山一帯 に探索の輪を強化した。 しかし、組頭からは賭場と水茶屋の取り壊しの下知が一向にこなく、 探索方の面々はじりじりした気持ちで連日、張り込みを続けていた。 山部美濃守は千代田のお城から、顔を真っ赤に染めて退出してきた。 賭場、岡場所の取り壊しの件は、既に数日前に許可願いを提出していた のだ。若年寄の牧野忠雅(ただまさ)からは、内々の許可をえていたか、今日 になって中止命令をうけたのだ。 牧野忠雅は山部美濃守から聞いた闇世界の実力者の存在を老中首座で ある、阿部正弘に報告し、彼等の利権の温床である賭場、岡場所の取り壊し を願いでていた。阿部正弘にとってその話は寝耳に水の話であった。 まして闇世界に闇公方などと名乗る男が、風聞とは言うものの存在すること に驚いた。 彼は諸藩の賢候と言われる、水戸斉昭(なりあき)、越前の松平慶永(よしな が)、土佐の山内豊信(とよのぶ)等に相談した。 「けしからん」 真っ先に激怒したのは水戸斉昭であった。 闇公方などと名乗る男が存在することに怒りを爆発させたのだ。その男を 捕え処刑するには、賭場、岡場所の取り壊しは証拠隠滅に通じる。これが 反対の理由であった。 こうしたことで若年寄の牧野忠雅の進言は、老中首座の阿部正弘の命で 中止と決定されたのだ。 この処置で面子を潰された火付盗賊改方の長官、山部美濃守は徹底的な 探索強化を命じてきた。 (殺戮) 江戸の町は行楽期を迎え浮き立っている。桜見物や見世物見物で浅草、 奥山、上野山下、深川八幡などに人々は争って繰り出していた。 これが江戸っ子の楽しみであったのだ。 見世物は三種類に大別されていた。手品、奇術、軽業などを見せるもの。 象やラクダなどの珍獣を見せるもの、からくり、生人形、ギャマン細工など 凝った細工物を見せるものに分かれていた。 特に浅草、奥山は大道芸が人気をはくし、居合抜きを見せ膏薬やガマの油 を売りつける者、浄瑠璃を模した芸などを辻で見せる者が居た。 それらを見ようと人々は争って行楽地を訪れ、由蔵の経営する淫売宿で女 を買って憂さを晴らす者がいた。 その光景を物陰から監視する、火盗改方の面々は切歯扼腕し眺めていた。 しかし、夜の帳が訪れる前に人々は一斉に引き上げ、代わって荷物を満載 した荷船が奥山の堀割りを遡ってくる。大八車も荷を積んで小道に消えてゆく。 騒乱江戸湊(1)へ
騒乱江戸湊 Aug 9, 2011 コメント(198)
騒乱江戸湊 Aug 8, 2011 コメント(43)
騒乱江戸湊 Aug 6, 2011 コメント(59)
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