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Aug 1, 2011
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カテゴリ:伊庭求馬無情剣

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   「騒乱江戸湊(98)」

「六十名にござるか」

 向井将監が腕組みをして考えこんだ。

「なんと申しても海上に停泊する大船襲撃です。船手組の助けがなくては

成しがたいことになります」

 求馬が語調を強めた。

「承知いたした、船手組の手練れを集めてみましょう。ところで鈎綱は分かり

ますが、短弓には合点が参らぬ」

 将監が承諾し疑問を呈した。

「鳳凰丸には火縄銃をもった者共が警備にあたっております。それらを倒し、

船上に登りつくには短弓が一番かと心得た次第です」

 将監がニヤリと顔を崩し大きく肯いた。求馬の戦法が理解できたのだ。

「畏まった」

「向井殿、猪牙船は石川御用地と六万坪地に半数づつ隠して下され、石川

御用地からは、火付盗賊改方同心の若山豊後と申す者が指揮を執ります。

六万坪地はそれがしが承る」

「なんと・・火付盗賊改方同心が指揮を執りますのか?」

 向井将監が不快そうな顔をした。

「向井殿、この件も伊庭殿の忠告で首座殿も承知いたしてござるよ」

 嘉納主水が助け舟をだした。

「左様か」  向井将監はあっさりと承諾し、求馬に声をかけた。

「大船の左右から乗り込みますか、拙者もご一緒したいくらいじゃ」

 向井将監が赤銅色の顔をほころばしている。その様子を見た主水が満足

そうな笑みを浮かべた。

「伊庭殿、それがしは屋敷に戻り明日の用意をいたす」

「ご足労をおかけしました、くれぐれも地獄の龍にはご注意下され」

「了解いたした。事件が終わったら美味い酒でも飲み交わしましょうぞ」

 求馬の忠告を耳にし、主水が不敵な言葉を残し肩をゆすって去った。

 その姿を眼で追った向井将監が塩辛声で質問をした。

「さて伊庭殿、船手組の出撃の刻限をお聞かせ下されよ」

「鳳凰丸は決まって丑の刻に停泊すると申しましたな、それまでに必要な準備

をお願いします。今ひとつは猪の吉と申す男が焔硝を運んで参ります、それを

六万坪地の指揮船に乗せて下され。刻限はおってお報せいたす」

「猪の吉と申す男ですな、承知いたした。まだ陽が落ちるまで間がござる。

一杯いかがじゃ」

 向井将監が是非にという顔つきで誘った。

「有難い仰せながら、それがしは奥山に用がござる。事件が終わったら

頂戴に参りましょう」

 求馬が丁重に断り、黒羽二重の裾を靡かせ足早に去って行った。

「組頭殿、あの浪人に大船襲撃の指揮権を譲りますのか?」

 傍らの水主(かこ)同心が不満そうに訊ねた。

「昔から存じておる。元公儀隠密団で一番の遣い手と知られた人物じゃ」

 将監が白い歯を見せ、「酒じゃ」 と塩辛声を張りあげた。

「良いか、伊庭殿の下知はわしの下知と知れ、決して逆らってはならぬ」

「はっ」  将監の言葉で水主同心が一斉に平伏した。

 この船手組の水主同心は他の部署の同心と同じく、薄給の御家人で昔の

言葉で表現すれば足軽の身分である。

 求馬の痩身が浅草寺境内に現れた。前方から大八車を引いた猪の吉の姿が

見えた。素早く求馬を見つけ猪の吉が汗みどろとなって近づいてきた。

「旦那、運んでめえりやした」

「ご苦労じゃが、永代橋の船手組組頭の向井将監殿に届けてくれ。

それが済んだら、駿河台の嘉納殿の屋敷に行くのじゃ」

「嘉納の旦那の?」

「そうじゃ、お主は今日から嘉納殿の配下じゃ」

「そいつは殺生ですぜ」

 求馬の乾いた声に反発し、猪の吉が情けない顔をした。

「嘉納殿は闇公方の隠れ家の下谷御徒町の指揮をなされるが、古屋敷のことは

何もご存じない。お主が補佐をいたすのじゃ」

「旦那は?」

「わしは鳳凰丸を襲撃いたす」

 求馬はそれだけを猪の吉に告げ、雑踏の中に姿を消し去った。

「畜生め」

 猪の吉が口中で罵り声をあげ、大八車を引いて駈け去った。


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Last updated  Aug 1, 2011 11:16:34 AM
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