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Aug 4, 2011
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カテゴリ:伊庭求馬無情剣

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   「騒乱江戸湊(100)」

 地獄の龍が素早く同田貫を引き寄せた。

「御前、ここも役人の手が廻りましたとばい」

「そうじゃな、今宵が勝負じゃ。皆共、船着場に急げ」

 闇公方が宗匠頭巾を被り、剽悍な眼差しをみせ下知した。

 行灯が消され、地獄の龍を先頭に一同は裏の船着場に駈けた。

 足音に驚いたのか蝉が鳴き声をあげている。

「糞っ」  地獄の龍が前方をみつめ吠えた。

 堀割りの周辺は御用提灯の明かりで真昼のようである。

 一同は闇を縫って船着場に舫われている、屋形船に乗り込んだ。

二艘の屋形船が堀割りから、神田川に向かって漕ぎだされた。

 先頭の船の舳先には地獄の龍がうずくまっている。

「御用じゃ」  「神妙にいたせ」

 捕吏の声が響き、「チェスト-」 地獄の龍の懸け声が闇夜を震わせた。

進路を塞ごうとした御用船に龍が飛び移り、五名の捕り方を瞬時に斬り斃し

た懸け声であった。

 悲鳴と水飛沫があがり、御用船の舷側をすり抜け、二艘の屋形船が

神田川に現れた。

「現れたぞ、あの屋形船じゃ」

 待機していた奉行所の同心と捕吏が、どっと両岸から追跡を始めた。

「逃すでない」

 主水が陣笠を被り馬腹を蹴って猛然と土手を駈けだした。

 川では近づく御用船に対し、闇公方の浪人の大刀が煌めき、その度に

絶叫があがっている。捕吏と浪人の腕が格段の違いを見せている。

 疾走する主水の騎馬の前に人影が現れ、主水が手綱を引き騎馬を止めた。

「嘉納の旦那」  声で飛礫の猪の吉と知れた。

「猪の吉か?」

「へい、あっしです。この先の船着場に猪牙船が待機しておりやす」

「猪の吉、奴等は大川に逃れる」

「今晩は逃しやしませんよ」 猪の吉が不敵な返答を返した。

 奉行所の一向が猪牙船に乗り込み、次々と神田川を漕ぎ進み大川に向かっ

た。主水が舳先から前方を見つめているが、二艘の屋形船の影も見えない。

「猪の吉、奴等を逃したぞ」

 主水の野太い声に猪の吉が自信満々で答えたものだ。

「ご安心くだせえ、仕掛けは万全にござえやすよ」

 風がさらに強まってきた。神田川の川面が白く泡立っている。刻限は四つ半

(午前十一時)を、とうにまわっている。

「龍五郎、役人共の船は撒(ま)いたようじゃな」

「左様にごあんな」  舳先から地獄の龍の余裕の声がする。

 二艘の屋形船は大川に近づいていた。あと一刻半(二時間)ほどで鳳凰丸が

江戸湾に停泊する筈である。

 跡から追跡してくる御用船の影も見えない。

「御前、あれを」

 地獄の龍が驚愕の声をあげ大川の対岸を指さした。

 両国橋から新大橋、永代橋にかけて東の川岸に大篝火が延々と続いている。

「おのれ―」  

 思わず闇公方が怒声を発した。大川の対岸から竪川に入り江戸湾に逃れよう

とする策が破れたのだ。

 闇公方が浅草方面の夜空を眺めたが、江戸の町は寝静まり火の手の一欠け

らも見えない。今頃は五十嵐次郎兵も奥山で討死したなと感じられた。

 もし、成功しておれば浅草方面の夜空は赤く染まっている筈である。

彼は自分の策が破れたことを悟った。

 闇をついて御用提灯を掲げた船が近づいてくるのが見える。

「どげんしまっしよ」

「龍五郎、知れたこと船を堀割りに乗り入れよ。なんとしても永代橋の向こう

側に出るのじゃ」

 闇公方が頭巾を抜き捨てた、若々しい精悍な風貌が浮き上がった。

「良いか、なんとしても江戸湾に出るのじゃ」

「そうでごわすな、出れば鳳凰丸が待っちょりますな」

「そこの堀に船を入れよ」

 闇公方が葦の繁った堀割りを指差し、二艘の屋形船が大川の西側を

縦横に走る堀割りへと忍び込んでいった。

 その頃、奥山一帯では闇公方の危惧したような事態となっていた。

 五十嵐次郎兵が率いる浪人と火付盗賊改方の猛者との闘いで、浪人等

は押し詰められていた。十分な態勢で待ち受けていた火付盗賊改方が

猛然と白兵戦を挑んでいたのだ。

 集まった浪人達が、五十嵐次郎兵の目前で次々と縄をうたれている。

 鈴木大善も堀三蔵も、壮烈な討死を遂げていた。



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Last updated  Aug 4, 2011 12:19:28 PM
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