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Sep 2, 2011
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カテゴリ:伊庭求馬活殺剣
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     「影の刺客」(3)

「天野さん、死骸は三つ凄い斬り口です」

「嘉納さまの手だ、早く証拠を探ってくんな。雨になるぜ」

 風がますます強まり、辺りの樹木が騒がしく揺れ動いてきた。

「この闇夜じゃ、死骸を番屋に運び探索は明日にしょう」

 天野監物が捕吏に命じ、突棒や指股などの捕り物道具を刀の下端で

即席の担架を作り運び去った。

 その九日の夜半に江戸の町は強風に襲われた。凄まじい暴風と横殴り

の大雨で大川はみるまに水かさをまし、大川の東の小名木川、竪川の堤防

が決壊し、本所、深川一帯は家屋敷が倒壊し水没の憂き目にあった。

 なんせ、この一帯は低地で聞こえた悪所で家を失った人々は、水没を

まぬがれた寺院に避難し、大風のおさまるのを待つばかりであった。

 千代田のお城も甚大な損害を被り、樹齢、何百年の巨木が倒れ石垣の

一部が崩れる惨状を呈した。

 幕閣は普請奉行や関係先に命じ、お城の修理と被災で逃げ遅れた人々

の救出に躍起となっていた。

 町奉行所も治安対策として救援をよぎなくされ、難民救済に懸命な

努力をはらっていた。

 こうした努力を嘲笑うかのように、翌日は快晴の秋晴れとなり、澄み

きった青空が広がり、鰯雲が綿菓子のように浮いている。

「畜生め」

 人々は空を眺め昨夜の大風を呪った。

 今年は既に二度にわたる野分の襲来で、江戸の町は荒れ果て幕府の

財政はさらに悪化した。

 ようやく水が引き人々が荒れ果てた我が家に帰り、日常生活に戻れた

のは、九月の末であった。親を失った子や、子を失った親は天候を恨む

暇もなく、その日の生活に追われる羽目となった。

 こうした江戸の町に盗賊が跳梁(ちょうりょう)しだした。

 夜間ともなると奉行所の役人や、市中二十三組の町名主の命で町方の

若者が、町木戸に屯して警戒にあたっていた。

 当然、火付盗賊改方も辻々を巡回し治安にあたっていた。

 この当時は公許の遊郭吉原をのぞき、暮れ六つ(午後六時)が大名家の

門限で、旗本は五つ(午後八時)を門限としていた。

 町木戸が閉められる刻限は夜の四つ(午後十時)とされていたが、非常時

のために半刻、早められ七つ半(午後五時)には辻番に高張提灯が点灯さ

れるようになった。こうした措置で十月半ばともなると、暮れ六つを過ぎると

人っこ一人見当たらない闇の町へと変貌し、町奉行所の役人や岡っ引が

辻番として警戒する姿だけが目立った。

 町人たちは冬にむかい荒れ果てた家を修繕し、成すこともなく早い眠りに

つくようになった。

 こうした状況が盗賊の跋扈(ばっこ)を許す結果となったのだ。

 幕閣は民政安定の施策として、江戸への物資の搬入を優先させ、十月末

には生活用品が近辺や上方から、大量に送り込まれてきた。

 これをみて人々は安堵するようになった。

 最近はようやく辻売りの店が町に復活してきたが、二度の大風の影響で

農作物は壊滅状態となり、特に青物の高騰は眼を見張るものがあった。

 白菜、ネギなどは十倍の値をつけ、庶民にとり高嶺の花となっていた。

 百姓は土地を捨て職を求めて江戸に流れ込み、流人化した百姓が広い

御府内(ごふない)の無人の家に集まっていた。

 御府内と埋立地の境界線に、掘立小屋を建て住み着く者もいた。

 そうしたなかに無宿人や罪人が混じっていた。目ざとい者は彼等を狙って

濁酒(どぶろく)売りや、安女郎屋を店開きしてあくどい稼ぎをはしめた。

 女房や娘連れの百姓を狙い、路傍では安銭をかけた路上博打が横行し、

賭け金のかたとして女房や娘は岡場所に売られていた。

 こうした場所は御府内と府内外の境界線に近く、町奉行所の管轄すれす

れに位置し、町奉行所も迂闊に入れない情況にあった。

 その取り締まりが火付盗賊改方に下った。


影の刺客(1)へ





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Last updated  Sep 3, 2011 09:49:42 AM
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