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Nov 30, 2011
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カテゴリ:伊庭求馬活殺剣
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     「影の刺客」(74)

 翌日の昼、求馬と猪の吉が奥の座敷で話し合っていた。

太陽暦の二月四日を明日に控えた日である。立春の前日のことであった。

 猪の吉が昨夜、知りえた出来事を語り、求馬が一橋家襲撃の一件を語り

終えたところであった。

 二人、お蘭の家で情報を語り合っていたのだ。

「旦那、昨夜の襲撃の顛末は、嘉納の旦那からの伝言にござえやすな?」

 求馬が無言で肯き、視線を猪の吉に注いだ。

「良くぞやってくれたの」

「怪我の功名にございやす、まさか勘が当たるとは思ってもおりやせんでした」

「さて、今回の事件は長かったが、ようやく先が見えたようじゃ」

 求馬がギャマンの窓から、大川を眺めぽっりと呟いた。

 真冬というのに真っ青な空が広がり、高瀬船や荷船が忙しく上下している。

「旦那、この事件の裏側が見えてこられやしたか?」

 猪の吉が眼を光らせた。

「それもすぐに判明いたそう」

「旦那には見当がついておりやすな」

 猪の吉の問いに、求馬が薄い笑いを浮かべた。

「お主の捜ってきた三日後にはっきりいたそう。昨夜の一橋家襲撃のさい、

曲者は陽動策として本郷の古寺に放火をしたが、それが墓穴を掘ったとは、

皮肉な事じゃ。放火をしたが、類焼をせぬような万全な方法をとったのじゃ。

そのことで黒幕の正体が、朧ながらも見当がついた」

「そんな心遣いを奴等がみせやしたか?」

 猪の吉にとり初耳であった。

「猪の吉、幕府の高官を襲いながら、江戸の町を守ろうとする黒幕の意図は

何を意味する。そうした中で奴等は一橋家を襲いおった、そうした命令をだす

黒幕の狙いをなんとみる」

「待っておくなせえよ、最初は嘉納の旦那が襲われなすった。その後が

老中の松平信明さま、さらに書院番組頭の内藤右京さまと大番頭の岡部

大学守さまでしたね」

 猪の吉が過去の事件を振り返っている。

「その後は西の丸の首座殿を二度にわたって襲いおった。閣僚も首座殿も、

初めは江戸の町を騒乱におとしめると曲者と思われたが、その後になり、

幕閣の権力争いの一環として考えられるように成られた」

 求馬が猪の吉の言葉に補足を加えた。

「そうでございやすね、その黒幕は一橋治済さのと皆さまが思われやしたな」

「そうじゃ、その黒幕と思われた一橋さまが曲者の真の標的であった」

「摩訶不思議な事件ですな」

 猪の吉には事件の背景も求馬の意図も、まったく分からなかったが、

三日後に旦那は、事件の黒幕を退治されようとしている。それは長年の

付き合いで理解できた。

「猪の吉、上様は今年には成人あそばされる。その上様を牛耳ることの

出来るお方は、一橋治済さまただ一人じゃ。首座にとっては苦難の年と

成ろうな、改革も思うように進まぬ、それがわしの苦痛の種でもある」

 求馬が宙に眼を遊ばせているが、猪の吉には求馬の言葉の意味が分から

なかった。

「猪のさん、昨晩はご苦労さん。たまには昼酒もいいもんだよ」

 お蘭が二人の前に箱膳を並べ、妖艶な笑みを浮かべて労った。

「師匠にそんな事を言われちゃ、尻の穴がこそばやくなりやすよ」

「猪のさんの勘も捨てたものではないね」

 お蘭が猪の吉の杯に徳利をかたむけ、笑い顔を見せた。

「頂きやす」

 膳部には鰯の煮付け、天麩羅の盛り合わせと蛸の酢の物が乗っていた。

「ご免なさいね、こんなもので」

「ご馳走ですよ、それに師匠の酌なら申し分ありやせんよ」

「猪のさんも、歳をとると口が巧くなるわね」

「こいつは一本とられやしたね」

 猪の吉が満更でもない顔つきをした。

「どうせ事件の話でしょ、あたしは遠慮しますよ」

 お蘭が残り香を漂わせ次の部屋に去った。

 二人は暫く黙々と食べ独酌した。

「猪の吉、音羽町か目白台の道筋の居酒屋なんぞに知り合いは

居らぬか?」

 突然、求馬が訊ねた。

「知らぬとは言いませんが、それがどうかいたしやしたか?」

「鬼子母神へ奴等の頭領が姿を見せる刻限は、早くて夜の五つ(午後八時)

頃と思っておる。そこに事件の黒幕も現れるかもしれぬ」

「成程、我々はその店で奴等の現れるのを待つてえ寸法ですな」

「なるべくなら二階が良いがの」

「目白台なら、恰好の店がありやすよ。音羽屋といいやす、二階を貸切に

するように交渉してきやすよ」

「頼んでくれるか」

「合点承知、明日なら暮れ六つ頃からでいいでしょう」

 無言で肯いた求馬が、美味そうに酒を飲み干した。


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Last updated  Nov 30, 2011 11:10:52 AM
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