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May 22, 2012
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カテゴリ:改訂  上杉景勝
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       「改訂  上杉景勝」 (84)


 閏三月四日、石田屋敷は物々しい雰囲気におおわれていた。

 ことの発端は加藤清正を頭とし、武断派の荒大名等が屋敷を襲撃する

との噂を島左近が聞き込んできたのだ。

 疎漏も甚だしい出来事である。

 直ちに左近は密偵を走らせ情報の確かさを探らせ、間違いないとの報せ

を受け取った。

「馬鹿共が集まって合戦騒ぎというぞ」

「面白い、奴等と一戦いたすか」

 石田家の誇る三家老の島左近、舞兵庫、蒲生郷舎が、手をぶしている。

 この三人は合戦の名手として天下に聞こえた武将である。

「清正や正則なんぞ、錆槍の餌食にしてくれるわ」

 舞兵庫と蒲生郷舎が精悍な顔を嬉しそうに崩している。彼等も合戦に

飢えていたのだ。

「左近、伏見城下で豊臣家の家臣が争っては、天下に聞こえが悪い。

わしは佐和山城に移る」

 三成が童顔を引き締めている。

「移ると申されましても、伏見城下には奴等の兵でいっぱいですぞ」

 左近は驚きもせず忠告したが、三成は童顔をほころばした。

「窮鳥、懐に入れば猟師も殺さぬと申すぞ、わしは内府の屋敷に隠れる」

「・・・・・」

 三家老が三成の言葉に呆然としている。

「供はいらぬ。わし一人で参る」

 流石の島左近も三成の蛮勇に仰天し言葉もない。

「七将どもが参ったら、わしは逃げ出したと申せ。だが屋敷内に踏みこむ

気配なれば、存分に相手をしてやれ」

「しかし、あまりにも無謀に存じます」

 蒲生郷舎が髭面を曇らせ忠告した。

「わしは行くが心配するな、奴等には構えて遅れをとるなよ」

「畏まりました」

 三成の毅然とした態度に気おくれした三人が拝跪した。

「左近、佐和山城で会おうぞ」

 平服の三成の小柄な身体が、すっと闇に溶け込んで行った。

「驚いたお方じゃ」

 残された三家老が改めて主人を見直していた。

「兵庫、郷舎、合戦の支度じゃ。踏み込む者は容赦しない」

 島左近が言い終えて屋敷の奥に駆けこんだ。

 それから半刻後に三成は向島の徳川屋敷を訪れ、家康の謀臣の

本多正信に玄関で出迎えを受けていた。

「治部少輔じゃ。佐州であるか」

 三成は正信を官名で呼んだ。

「左様に、本多正信にございます」

「わしは困惑しておる。七将に追われ、御当家を頼って参った」

 そう言う三成の声は平静であった。

「加藤主計頭(かずえのかみ)殿にございますか」

 受けた正信も陰湿な顔つきを変えずに応じている。

「そうじゃ」

「お匿い申しあげましょう」

「奴等を煽っておる者は、案外とそちではないのか」

 三成の言葉には毒がある。

「滅相な、お寛ぎいただく部屋にご案内いたします」

 枯れ木のような痩身の正信が三成を先導している。

 このまま小男の命を絶つか、正信の胸に殺意が走った。

 三成は慣れた態度で足を運び、

「わしを殺すか」

 声にいささかも乱れがない。

「お揶揄いなされますな、かりにも内大臣のお屋敷内にございます」

 二人は相手の腹を探りながら部屋に着いた。三成は当然のように上座に

座り、正信と相対した。

「佐州、腹が減った、湯漬けを所望いたす」

「畏まりました」

 本多正信が部屋を辞して行った。三成は庭の見える障子を開けた、何度と

なく見た光景が闇に広がっている。

 秀吉存命のおり、別荘として使っていた屋敷である。

 往時の想い出が胸を締め付けた、殿下が崩御されいくばくもない間に

世の中は驚くほとに様変わりしたのだ。

 三成は家康憎しの思いを隠し、凝然と暗い庭を見つめていた。


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Last updated  May 22, 2012 11:05:55 AM
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