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カテゴリ:改訂 上杉景勝
[上杉景勝] ブログ村キーワード
「改訂 上杉景勝」 (91) 「明日、本丸に出向かれると申されるか?」 「淀の方にこの旨、申し上げ秀頼公にお目にかかる機会をつくってくれえ」 言い終えて家康は分厚い目蓋を閉じた。 (そういう事か。幼い秀頼さまの名を借りその名代として豊臣家の叛臣として 上杉家をとり潰す魂胆か、考えたものじゃ。豊家の財力と兵力を利用して己 の権力を盤石とする考えか) 増田長盛は家康の腹黒い謀略の臭い感じ、憤りで蒼白となった。 「上杉家討伐の名目はなんでござる?」 長束正家が訊ねた、彼の口調も強いものであった。 「わしへの愚弄じゃ」 「なんとー・・・」 増田と長束が顔を見詰め合い、一瞬、言葉を失っている。 「わしは仮にも豊臣家の筆頭大老にござる。そのわしの上洛命令を無視し、 無礼きわまる書状で断りを申し送ってくるとは、叛逆そのものにござる」 「それは私怨にござる。確たる謀反の証拠でもありますのか?」 増田長盛が顔を染め、憤然とした口調で質した。 「黙らっしゃい。関東二百五十万石の大名のわしは豊臣政権の執政官でも ござる。そのわしの命令に叛くことは、豊臣家に対しての謀反じゃ。明日の 件は淀の方に確りと伝えてもらいたい」 その罵声ともとれる叱咤は、二人の奉行を金縛りとした。 一方的に二人に命じ、肥満した体躯をもてあますように家康は退出した。 「悔しいが豊臣家の天下は終わったようじゃ」 長束正家が無念の涙を滲ませ声を潤ませた。 「治部少輔は如何しておろうな」 増田長盛である。 「佐和山城の改修を急いでおるわ」 「長束殿、奴は内府と事を構える積りかのう」 「その積りにござろうな、改修工事は昼夜を問わずに行われているそうじゃ」 「佐和山城に使いを出そう、奴の頭脳が急場を救う手だてを考えくれよう」 「今になってあの横柄者(へいくわいもの)が懐かしわい」 長束正家の脳裡に石田三成の、才気ばしった顔が過っていた。 その晩、西ノ丸は遅くまで灯火が消えなかった。家康は主だった家臣と 極秘の軍議を催していた。 改訂上杉景勝(1)へ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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