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Oct 27, 2012
カテゴリ：改訂 上杉景勝
[上杉景勝] ブログ村キーワード
   「改訂 上杉景勝」 (96) 自分の五体を流れる血潮には謙信の血と、謙信の姉である己の母親の 血が濃く交わっているという、己の秘密をすでに景勝は知っていたのだ。 ならば及ばすとも、故不識庵公のような果敢な武将になろうと切磋して きた。事実、景勝は戦機を見逃さず、一騎駆けで敵中深く駆け込み、勇猛 果敢な武者働きを幾度となくやってきたのだ。 それゆえに誰にも負けない戦国大名としての自負があった。 無言で剽悍な眼差し一座を眺め、黙々と大杯を飲み干す景勝を目の 当りにし、島左近は主の石田三成と景勝を自然に比較ししていた。 主に景勝の武人としての資質が一つでもあれば、孤立せずに家康に 勝手なことをさせずに、対等の力を発揮できた筈である。が、三成には それが欠けていたのだ。 左近は思う、諸大名のなかで壮大な戦略を描ける大名は三成をおいて ない。ただ惜しいことに、三成には武功がなかった。 若き頃の柴田勝家との賤ケ岳の合戦、九州征伐、関東の小田原合戦で 忍城攻略の大将となったが、実績をあげることが出来なかった。 秀吉に官吏としての才能を見いだされ、そうした業務に明け暮れてきた のだ。そうした三成を諸大名は官吏としか見ていないのだ。 物思いに浸っている左近の耳朶に景勝の声がした。 「左近、わしはさがるが、後は山城守と天下のことを謀れ」 そう言い置いて景勝は前田慶次と上泉泰綱を伴って退室していった。 三人の気配が消え去るや、左近が膳部を横に置き、 「山城守さま、上方の戦略をお話しもうします」 と居住まいを正した。 「お聞きいたす」 島左近が三成の言葉を淡々とした態度で語り、兼続は容姿を正して 聞き入っている。 「大阪城には毛利輝元さまが総帥とし、入城なされますか」 「左様、それに野戦軍として吉川広家殿、安国寺恵瓊殿、毛利秀元殿も ご参陣されます。総勢、三万五千名にござる」 「それは重畳にござる。・・・じゃが吉川広家殿は如何か？」 兼続が白皙の顔を曇らせた。実質、毛利家を仕切っている大名が吉川 広家であつたが、なかなかと油断の出来ない曲者として知られていた。 「山城守さまもご不安にございますか、我等も同じく眼を離さぬように いたします。まずは動けぬ場所に布陣させましょう」 左近が渋い声で答え、含み笑いを響かせた。 改訂上杉景勝(1)へ お気に入りの記事を「いいね！」で応援しよう
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