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Oct 31, 2012
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カテゴリ:改訂  上杉景勝
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       「改訂  上杉景勝」  (99)

「若松城と会津十六城の改修はすべて終わり、会津一帯の要塞化は

出来申したが、あの神指原城をいかがするか迷っております」

 山城守が左近にそう告げ、手を打った。

「はっ」 すかさず小姓が姿を現した。

「酒が冷えた新しき酒を用意いたせ。その後はこの部屋の警護を成せ」

 山城守はこの極秘会談の漏れることを恐れいたのだ。

 山城守のいう神指原城とは、景勝が故太閤殿下から会津に移封を命じ

られ、会津に入った時に家康の動きを、牽制する意味であらたに手がけた、

巨城であった。規模はこの若松城より大きく朝鮮の役で得た、かの地の

城郭の利点を取り入れた、日本初の近代的な巨城であった。

 小姓が熱燗を数本並べ、足音を消してさがっていった。

「迷いがあると申されますか?」

 左近が熱燗を口にし、山城守の白皙の顔を見つめた。

「既に九割がた工事は進んでおりますが、こうも早く家康と事を構える

ことになろうとは、それがしにも思い及ばぬことにござった」

「籠城をお考えでしたか?」

「左様、家康が十万の大軍で攻め寄せようと、神指原城に籠り会津一帯を

我等が支配いたしておれば、四、五年は家康を引き付ける自信がござった

が、今となっては考えもの、白河城が案外と脆いことに気づき申した」

 白河口攻めは家康が自ら担当すると決めた攻め口であったが、両人は

知る由もなかった。

「左近殿、家康率いる東軍の主戦場は白河口にござろう」

 だが家康の考えを知らぬ山城守が、自信をこめて断言した。

「急造の城を頼りとするは、兵法の鬼門にございます」

 左近が寂びた声で忠告した。

「・・・お屋形には中止を進言いたしましょう」

 山城守が莞爾(かんじ)とした笑みを浮かべ、熱燗を左近に勧めた。

「頂戴いたします」

 左近が旨そうに飲み干し、「上杉家の戦略をお聞きいたす」

 興味ある眼差しで山城守の端正な顔を見つめた。

「家康とは気の長い男、一気呵成に会津領内には攻め込んで参らぬと、

それがしはよんでおります」

「下野の小山付近に本陣を構え、御当家の動きを探りましょうな」

 山城守と島左近の考えが一致した。

「それに大阪の石田殿の動きが気になり、諸大名の動きにも目配りをせ

ねばなりませんな」

 何が可笑しいのか、珍しく山城守が含み笑いをしている。

 初夏といっても会津盆地は、この刻限ともなると冷え込んでくる。

 二人は暫く口を閉じ、黙々と熱燗を胃の腑に落とし込んでいた。

「万一の場合を想定し戦略を練ってみました、左近殿の意見を拝聴したい」

 山城守が傍らの領内の絵図を広げた。

「我等は家康を領内に引き入れ、痛撃を与えたい。その場所がこの白河口

の南にござる」

 山城守が絵図の一点を指差した。

「ここが白河口にございますな」

「左様、ここに革籠原(かわごはら)と申す広大な盆地がござる。ここを予定

戦場としたい。正面には一里ほど防塁を築かせております。ここに軽兵を

潜ませ、北側の丘陵から攻撃を仕掛けます」

 左近が食い入るようにして絵図を見つめている。

 山城守は左近が口を開くまで杯を舐めながら待った。

 四半刻ほど左近は思案をしていたが、顔をあげて訊ねた。

「この地に敵を引き込む戦術は如何にございます」

 惚れぼれとする男の色気を醸す、左近の顔に興味の色が浮かんでいた。

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Last updated  Oct 31, 2012 11:52:32 AM
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