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Nov 1, 2012
カテゴリ：改訂 上杉景勝
[上杉景勝] ブログ村キーワード
   「改訂 上杉景勝」 (100) 「白河の南に芦野と申す宿場がござる。我等はその地で軽兵でもって、 家康の軍勢を攻撃したす。戦いつつ偽りの敗走をいたし、革籠原の 盆地に誘い込みます。それがしは盆地の西で三万名の精兵を率い 追撃する家康の軍勢の側面を衝きます。お屋形は白河城で旗本衆 八千名を率い、それがしが側面を衝いた時を見計らい、東から突撃し、 家康の軍勢を殲滅いたす。これなら勝ちを制することができましょう」 「うむー」 左近が再び絵図を睨んだ。 「妙案と心得ますな、拙者でも左様つかまつります」 妙に明るい声であった。 「左近殿の賛意が得られれば万全にござる」 ここに天下の軍師二人の意見が一致をみたのだ。 「あとは家康の出方次第、もし、小山から撤兵する事態が起こったら、 我等は国境を踏み出し家康を追撃いたし、首を刎ねましょう」 山城守が平静な口調で断じた。 「左様にございますな、会津からの撤兵を知ったら、我等は上方より大軍を 発し、南北より家康の進路を塞ぐことができます」 左近が寂びた声で家康率いる大軍の挟撃論を口にした。 「内々の話にござるが常陸の佐竹義宣さまも我等に同意しております」 「なんと・・・佐竹家との同盟も出来ておりますか？」 「左様。じゃがあの狸のこと常陸への備えは万全な手配りをする筈。 そうなれば、佐竹勢は簡単に動くことが叶いませんな」 「ならば如何なされます」 「佐竹家との同盟はのちのち生きて参りましょう」 山城守は動揺も現さず、平然とした態度でいる。 百戦錬磨の左近も直江山城守の、底知れぬ智謀には感心した。 「僭越ながら忠告を申し上げます」 「何事にござる」 「旧領土の越後の豪族を調略なされ」 左近の言葉に山城守が柔和な笑みを見せた。 「これは、いらざることを申し上げました」 左近が珍しく顔を赤らめている。 「合戦とは念を入れねばなりませぬ。越後の諸豪族には堀家への 決起を促し、越後に騒乱を起こすように指示をしております」 山城守が懐中から書状を取り出し、左近に示した。 「拝見いたす」 左近の視線に越後の豪族の連書が墨痕鮮やか映った。 「左近殿、これで堀家は家康の命でも迂闊に動くことが出来ませんな」 「恐れ入った手配りにございます」 ここに左近は直江山城守の深慮遠謀の才を改めて知らされたのだ。 改訂上杉景勝(1)へ お気に入りの記事を「いいね！」で応援しよう
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