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カテゴリ:改訂 上杉景勝
[上杉景勝] ブログ村キーワード
「改定 上杉景勝」 (124) 「街道の半ばまでが辛抱じゃ。そこには水原、前田勢が潜んでおる」 山城守は全軍を叱咤し、時には逆襲し、且つ退く作戦で見事な退却戦を 演じてみせたのだ。 そんな最中に輜重隊が車を引いている。でこぼこ道は石を埋め土を入れ て補修されていた。これは色部光長が指揮して補修した結果であった。 上杉勢は速度を落とさずに撤兵を進めている。 一方の最上義光は鬼の形相で先陣を駈け、愛用の鉄棒を振り回し追撃し た。これまで最上勢は山城守率いる上杉勢により、さんざんな目に遭ってい る。その屈辱を晴らすための追撃である。 その勢いを削ぐために、山城守は自ら殿軍を指揮し兵を督励している。 幸いにも色部光長のお蔭で撤退は思いのほかはかどっているが、これは 最上勢にも有利に働いていた。狭隘険路な街道を速度をあげ執拗に食い さがってくる。前方に前田慶次が姿をみせた。 「山城守さま、ここからは我等が殿軍を承ります」 見回すと上杉家の槍の勇士で知られる、水野藤兵衛、韮塚理右衛門、 宇佐美弥五右衛門、藤田森右衛門の四人が不敵な面をみせ、朱槍を抱え ている。その後に前田勢の精鋭が従っていた。 「慶次、水原親憲はいかがいたした」 「一丁ほどの地点に鉄砲隊二百名を率い、伏兵として控えております」 「奮戦を期待する」 山城守が騎馬をあおり、急坂を駈けのぼっていった。 敵の先陣と前田勢が鼻を突き合わせる格好となった。 「わしが、前田慶次じゃ」 凄まじい名乗り声を発した慶次が、自慢の大身槍を振り回し、敵勢の中 に躍りこんだ。まけずと四人も朱槍を抱え続いた。 その攻撃を受け血煙をあげ敵兵が坂を転がり落ちている。 「わっー」 と、上杉の伏兵が猛烈な攻勢をみせ圧倒した。 その勢いに押され最上勢が我先に後退している、それほどまでの凄まじ い前田勢の攻撃であった。 「者共、引くのじゃ」 戦機を計っていた前田慶次が血塗れの姿で坂道を駈けあがる。 全員が一丸となり退却を始めたが、四人の朱槍の勇士のみが踏み止ま り、最上勢の進撃を阻止している。 その時、水原親憲の塩辛声が轟いた。 「四人とも坂道に伏せよ」 「伏せるのじゃ」 韮塚理右衛門が叫び、道に躯を投げだすようにして伏せた。 「ゴオー」 兜の頭上を震わせ銃弾が最上勢に降り注いだ。 「伏兵じゃ」 最上勢の兵が顔を蒼白としている。 硝煙の煙のなかで悲鳴があがり、最上の兵が急峻な崖下に転がり落ち る阿鼻叫喚の世界となった。狭隘な坂道を密集し、攻め登ったために後方 に退けないのだ。 水原親憲は二百名の鉄砲隊を三分割し、間断のない銃弾の幕を巡らし た。つぎつぎと敵兵が銃弾の餌食となって坂道から、転がり落ちてゆく。 敵将の最上義光も兜に銃弾を受け、大事に至らずにほうほうの呈で後方 に退いた。潮合いを見計らっていた水原親憲が采配を振った。 「慌てずに退く、我等には鉄砲がある。敵が姿を見せたら撃ち放せ」 こうして水原勢も退却を始めた、途中に直江山城守が待ち受けていた。 改訂上杉景勝(1)へ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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