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カテゴリ:西忍寺道場
こないだの日曜日の稽古日誌を書きます。
この日の柿崎は午前中曇り、午後からかなり強めの雨が降りました。 今回のメンバーは4人。 N師範、O大師兄、S君、私。 最初は太極拳対練。 行気から打擠。 いまのところ、この技をこらえることができる人がいないので、さっと流して稽古した。 次は琵琶勢。 これはいろいろやって、相手が踏ん張っても、逃げてもかかるようになったが、相手が肘関節が極まらないように最初から肘を曲げて突いてくる場合は、化勁を使わないと関節技が極まらない。 化勁を使わないで、なんとか、相手の重心が安定し、肘を曲げて踏ん張っている状態で関節を極められないかと考えてみたが、なかなか難しい。 さしあたってできるのは、お腹で肘関節をひっくり返して肘を極めるやりかただが、もうすこし、スマートに美しく極める方法がないか? また壁にぶち当たってしまった。 琵琶勢は、あらかじめ関節技がかからないように準備しておけばかからない技だが、それでも体の使い方を工夫してなんとか乗り越えてきた。その結果、飛躍的に技の次元が変わってきた。 また、今回の壁も乗り越えるのが楽しみだ。 次は攬雀尾。 これは、技の動きが流れ出すと、だれにも止められないので、これもサラっと流した。 次は左右搬攔。 これも普通にやると技がかかってしまうので、化勁を使わないでやってみた。 相手の右中段突きを体を横にしながら左右の前腕を開くようにして、上から受け落とす。 受け落とすといっても、強く打ち落とすのではなく、上からネットをかぶせるように受ける。 次に相手は左上段突き。 こちらは左手で後ろへ化勁。相手は前のめりになって崩れる。そのまま両手で前方に押すと、相手は吹っ飛ぶ。化勁の方向を手前に円を描くようにすれば、相手は水平に上半身を回転させられて、そこを押されると吹っ飛ぶ。化勁の方向を下にすれば、相手は背中を丸くして下に崩れおち、ゴムまりのように跳ね上がる。 このように化すれば、技がかかってしまい、面白くないので、化勁を使わないで、相手の左上段突きを下の落とし、その上腕を外側から、こちらの左脛で押さえる。このときこちらの左足裏は相手の膝に触っている。つまり、こちらはサイ脚の形で右足一本で立っている。 これによって、相手は腰と右肩の動きを封じられるので、身動きが出来なくなる。 こちらは、相手がすこしでも動けば、どのような攻撃でも加えることができる。もし、後ろへ逃げようとすれば、相手の膝に触れているこちらの左足が、そのまま膝を踏み折るか、下腹部に蹴りが入るので、逃げようがなくなる。 次は提手上勢。 これは肘と膝を合わせて前進をボールのように回転させれば、化勁を使わなくても技がかかるので、これも流して稽古した。 次は雲手。 これは薄くたなびく雲のように化勁を使うと相手は崩れたまま身動きができなくなり、わかっていても踏ん張れないので、これも流して稽古した。 ここで、お昼になったので午前中の稽古は終わり。 いつもなら、午後から太極拳教室をやるので、私はここで帰るのですが、今回は休みなので、午後からの稽古にも参加した。 昼食を食べ、休憩してから午後の稽古。 先週、私が帰った午後から先生が新しい技を教えてくれたというので、それをN師範から習った。 相手がこちらの前に出した両手首をそれぞれ掴む。 こちらは、手の平を返して相手の顔のほうに押す。 そのまま前方に歩く。 このとき、こちらは手の平を返すと同時に指先を相手の目に向かって軽く突きこむようにする。 こうすると、相手は後方にのけぞる。 そのまま、こちらは前方に歩いていく。 もちろん、合気がかからなければ、相手は崩れもしないし、こちらが進むこともできない。 相手に掴まれたら、肩甲骨を縦に後方に回転させ、それと同時に手首の動きも同調させて、相手の目の方向に突き出せば、合気はかかり、相手はのけぞる。 しかし、肩甲骨の回転や手首の回転の連動を使わないで、ただ手の平を返すだけで、相手がのけぞらなければいけない。 これはかなり至難の業だ。 まず、手の平が返るときに両肘がその位置のまま移動しないということ。 肘の予備動作なしで、空間上の一点の静止しながらいきなり前方に動き出すということ。 そして、相手の目に指先を向けるので、結果的にこちらの前腕は平行から内側に向けて前方に突き出されるということ。 この2点が正確になされることにより、相手は瞬時に後方にのけぞることになる。 次にそのまま前方に進んでいくのだが、この時、腕や肩に力が入ると、相手はそこを力の拠点として、態勢を立て直すので、進んでいくことができない。 従って、「腕の力を抜いて丹田で進んでいく」とN師範は言う。 何回かこれを稽古した。 そのあと、N師範が照れくさそうに言った。 「あ、これ進んでいくの、おれが考えたんで、先生は歩かないでやったんで、でへへへへ!」 いや、でも、勉強になったので、N師範に感謝です。 次は、歩かないで、そのままの態勢でこちらは左右の手を上下に回して、胸の前にボールを持ったような形にする。 こうすると、相手はひっくり返って倒れる。 これも上手く同時に左右の手を操作しないと、相手は手を離してしまう。 こつは、上になっている方の右手指先が相手の目に向いていること。 相手の目にこちらの指先を向けるのではなく、相手の目がこちらの指先に向かってくるように仕向けること。これが成功すれば、相手は掴んだ手を離せなくなり、丸いボールに引き込まれるようにひっくり返る。 ここで先生が出てこられた。 「お、石月さん、今日はどうしたの?帰らなくてもいいの?」 「はい、今日は太極拳教室休みなんで・・・。」 「おうそっか、めづらしいな。まあ、ゆっくりやっていきない(上越弁でゆっくりやっていきなさいという意味かな?)。」 次に稽古したのは、柔術。 最初は四方投げ。 これは、できるだけ足さばきを少なくした。 前足を踏み込んだら、そのまま踵を返して、後ろに振り向きざま相手を倒す。 ちょうど刀を振りかぶり、振り向きざまに振り下ろす要領だ。 次は船底。 相手はこちらの手首を掴む。 こちらは、掴まれた手首を船底を削るように下から横に振り、それに合わせて外側の足を横に移動させながら重心を下から横に移動させ、すかさず手を返す。 こうすると相手は手首、肘、肩を捻られて下方に崩れる。 すかさず、相手の親指をこちらの手首で圧迫すると、さらに下方に潰れる。 そこにダメ押しで、両手の親指で手の甲のツボを押さえながら小手を極める。 相手が潰れて身動きができなくなったところに、アバラに蹴りを入れる。 それを見ていた先生が一言。 「君ら、そんな面倒なことしなくたっていい。じゃ、先生の手首掴んできてごらん。」 O大師兄が左手で先生の手首を掴んだ。 「ふん。」 と、言いながら先生が掴まれた手首を小さく内旋させた。 その瞬間、Oさんは、肩、肘、手首をひっくり返されて、頭から床に突っ込んでいくように崩された。 「ね、これでいいんだ。それをさ、みんなんの見てるとさ、たいそうに、こんなことして、こんなことしてやってんけれどもね、こうやって手首をキュキュキュっと返せばいい。こんで充分なんだからさ。」 もういちど、今度はN師範が先生の手首を掴んだ。 また先生が手首をくるっと返すとN師範はもんどりうって潰された。 先生は、私にもS君にも同じことをやって見せた。 ほんの一瞬のできごとだった。 手首をくるっと返されただけで、全てが終わってしまった。 身動きが出来ず、床が目の前にあった。 「こうすっとね、O君なんか生意気に、ぐっと頑張っておさえようとするだろ、こんなふうにグッとグッとといくとさ、いかせないように押さえつけるだろ?」 先生はOさんに手首を思いきりつかませ、いかにもこれから手首かえすぞ!という動きをして、「ほら、ほら、いかんだろ?あらかじめわかっていれば、こんんもんだこてさ。そういう時はね、グッとこらえさせておいて、クルッと返す。」 先生はさっきと手首を逆に回転させ、すなわち外旋させると、Oさんはいきなりひっくり返った。 「こんなの、ㇰっと、ㇰっとがんばらせておいて、くるっとひっくり返す。そうせば終わりだこてね。」 またこれもみんなに技をかけてくれた。 「手首から先で技をかけるということね。やってみてね。」 すごい技のようだが、これは考えようによっては掛けやすい技だ。 足を移動させたり、掴まれた手首を移動させたりするれば、相手はその動きの起こり際を押さえつければ、こちらの動きは止められてしまう。 実際にこの技は、相手がこちらの動きをあらかじめ知っていて、力づくで手首を掴んで押さえつければ掛からない。そこで、相手の力の支点を作らないように足を外側に移動して着地するまでの間に手首を回転させてしまう。こうすると掛かる。しかし、この手と足の動きのタイミングがずれると、相手に思いきり押さえつけられてしまう。 そうでなければ、途中でつかんだ手を放してしまう。 掴まなければ技のかけようがない。 ところがこの、手首の動きだけで技がかかれば、相手は押さえつけるきっかけをつかむことができない。 体は動かない。足も動かない。肘も肩も動かない。手首だけが動くが速すぎて対応できない。 そのうえ、掴んでいる手を離すこともできない。 こちらの予備動作が見えない状態で手首を返されると、何も対応できないまま技にかかってしまう。 大切なのは、つかまれたほうの肘が膝の上に位置すること。 こうすると、相手にこちらが働きかけなければ、相手の掴んだ手とこちらの掴まれた手首が支え合わない空間が生まれる。そこで、力みなく一瞬で手首が返れば、相手は放すこともできないまま、その動きに巻き込まれて、頭から床に突っ込むことになる。 手首を内旋させれば相手は頭から突っ込む。 外旋させれば、ひっくり返る。 いずれにしても掴まれた手首を空間に浮かべて予備動作なしに回旋させることだ。 これはみなさん、あまり苦労せずできるようになった。 「あと、なんかわからんとこ、あっかね?」 と先生に言われたので、「あと、突いて来た手を掴んで押す技、あれがどうもうまくいかないんですが・・・」と言ってみた。 「お、そんじゃ、まずやってみて。」 と言われたのでやってみた。 相手が上段突き。 これを片手で掬い上げて掴み、そのまま押していく。 これで相手はだんだん後ろに崩されてた倒れる。 しかし、あらかじめわかっていると、肘を曲げて踏ん張ったり、こちらが押す方向をいなして、推されないようにしたり、後ろに押されるのがいやで、横ににげたりする。 もう、グズグズの状態になった。 これを見た先生が言った。 「この技の設定としては、相手が本気で当てるつもりで突いてくるのを、こちらは下から掬い上げて、推していくというもんなのに、当てる気もない、踏み込まない、届かない拳を突き出してその場で、さあ、技かけてみろなんて、かからんわね、そりゃ。そんなことじゃなくて、相手に向かって、ほんき出して突いてくるもんに掛ける。そうしんきゃ、何技なんかかかろうばね。」 まあ、確かにそうだ。先生の言う通りだと思う。 相手が思いきり突いてきたその瞬間に技をかければ問題はない。 しかし、それはみんなできる。 できてしまうものには、面白みがない。 これは私の性格なので、どうしようもない。 相手はこちらがどんな技をかけてくるか知っている。 それにそなえて肘を曲げ、手足を突っ張り踏ん張って絶対くずれてやるもんかと突いてくる。 充分頑張らせておいて、なおもそこに技がかかってしまう。 これが私の理想なので、そこにこだわりたい。 でも、私は先生の動きの中にそれが実現できるヒントが隠れていると思う。 他の技でもそうだった。 動画などで他の人の動きを真似して、その問題を解決するのではなく、本などでめずらしい理論をさがしてきてくっつけるのではなく、先生の動きを細かく分析して検証していった結果として問題を解決してきた。 この技を行う時の先生の動きの中に、普通でない動きの仕組みがあることはなんとなくわかっている。 それがわかれば、相手がどんなに踏ん張ろうが突っ張ろうが、技はかかるはず。 これは私の勘だ。 この勘は、今まではずれたことはない。 先生が説明しないなにげない動きの中に、ダイヤモンドのような宝石が埋もれている。 私はいつもそんな眼で先生の動きを視ている。 そうこうしているうちに午後3時をまわった。 雨がかなり激しく降り出した。 「おうい、そろそろどうかね?3時まわったし、みんな熱心だからね、こっちはまだやってってもらってもいいんだけど・・・。」と先生が言った。 雨も気になってきたので、これで今回の稽古は終わりにした。 みなさん、汗びっしょりになった。 お疲れでした。 気分もすっきりして、体もれフレッシュできた。 しかし、最後のあの技、もっと何か工夫できないかどうか、帰宅してからも考えた。 そのことを妻に話した。 妻とは以前、西忍寺で一緒に稽古をして知り合い、結婚した。 今は稽古はしていないが、武術が大好きだ。 そうすると彼女からヒントをもらった。 「相手の突きを下から掬う時、賢一さん(私)の腕と相手の腕が一本の棒のようにつながればいいのよ。」 なるほど、それだ!と思った。 確かに先生の腕が相手を押すとき、肘が伸びきっているのを思い出した。 いつも先生は肘が伸びきってはだめだ、と言っているのに、この技を掛けるときは、思いきり肘が伸びきっているのだ。そして、相手の肘も先生が歩き始めると伸びきってしまう。 まさにお互いが一本の棒のようになってつながる。 これにより、相手は自分の棒のようになった腕に押し込まれてひっくり返る。 こちらの伸びきった棒のような腕が、相手の腕を棒のようにする。 これができれば、この技はどんなに踏ん張ろうがかかる。 坐った状態で妻相手にやってみたが、なるほど上手くいく。 これがN師範やOさん、S君のような腕力のある男性だとまだまだ難しいところもあるが、問題を解決する手掛かりになることは確かだと思う。 妻に感謝! またいろいろと試行錯誤していきたい。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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2024.09.17 16:51:56
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