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1904年某日、陸軍参謀次長児玉源太郎の前に引き立てられた男。
「名は」 「張作霖。ロシアの密偵です」 「ほう、貴公が張作霖君か。なるほどよい面構えをしておる。ま、そこへ掛けられよ」 「閣下、こやつはスパイですぞ」 「イヤイヤ、こん張作霖君はいずれ満州国において将軍か王として覇を唱えられる方じゃ。万事遺漏なきようおもてなしばせい」 命じられた部下もそうだが、張作霖自身も怪訝な顔をして児玉源太郎を見、 「私は馬賊の棟梁にしてロシアの密偵として働く張作霖です。また卑しき生まれであるこの私が将軍・王とは何をもって言われるか」 「君の眼中には大きな星が輝いとる。天下人となる器量をもっておられるあかしじゃ。ロシアの密偵としてこの地において死するようにはなっとらん」 張作霖の児玉源太郎を見る目が畏怖の光を帯びる。 「田中(義一)少佐を呼べ」 呼ばれて田中少佐(後の総理大臣)がやってきた。 「田中少佐、こん張作霖君を貴様に預ける。力になってやれ」 「わかりました。張作霖君、田中義一です。よろしくお願いします」 「児玉将軍閣下、あなたはこのまま私を放免なさるのか」 「放免もなにもない。この度はわしの部下が貴公に対して大変失礼なことをしました。今後不都合な点があったら、この田中少佐に言って下さい。では、少佐、張作霖君を食事にご案内いたせ」 「は、承知しました」 張作霖は児玉源太郎との邂逅によってこの時一命をとりとめ、日本軍の逆スパイとしてロシア側の情報収集をするようになる。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2009.06.27 18:08:51
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