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プロフィールには記してないけど、
簡単に言えば、ボクはモノを作る仕事をしている。 今日、ある物件のラフを出力しに、 誰でも知ってるフランチャイズの出力店に行った。 秋にオープンする飲食店の開店前DMを、 趣向を凝らした粋なものにして欲しいとの依頼があり、 足りない頭で考えた挙げ句、和紙と稲穂を使うことにした。 ボクはその上がりのイメージを先方に掴んでもらうべく、 とりあえずは手作りで見本を作っていた。 この飲食店はいわゆる創作和食のお店で、 洋風なテイストも取り入れるらしい。 最近は珍しくもなくなったが、そこは依頼された以上、 他店との差別化を出したかった。 客単価も高すぎず、かといってお子さまが気軽に入れる感じでもない。 そのへんのバランスをうまく突いたDMになりそうだと、 ちょっとした手応えを感じていた。 製作に没頭していた時、ふと人の気配を感じ何気なく顔を上げると、 年の頃は80歳くらいのおばあさんが、ボクの作業を観察していた。 目と目が合ったおばあさんは、「これは何ができるの?」とボクに聞いてきた。 ボクは「今度新しくできる飲食店の案内状ですよ」と答えた。 「ま~、綺麗な和紙や稲穂があるから、私は何ができるのかなって思ってたの。 どんな感じのお店なの?」とおばあさん。 「和食のお店なんですけど、ちょっと洋の雰囲気も入ってます」とボク。 そう答えた瞬間、楽しそうにボクの作業を眺めていたおばあさんの表情が変わった。 さっきまでのやさしい表情から一変、険しい表情のおばあさんは、 「この雰囲気に洋風は似合わないわよ」と突き放すように言った。 いきなりの変化に若干驚いたボクは、 随分間抜けな顔でおばあさんを見返していたと思う。 ボクの間抜けヅラに気付いたおばあさんは、 急に居心地悪そうに「和食だけじゃ駄目なの?」とつぶやいた… 聞くとおばあさんは、先の戦争体験者だった。 当時は極限の生活を送っており、憎き相手は無論連合軍で、 洋風=アメリカという思考に結びついたらしい。 「今は何でもアメリカになっちゃってるけど、私たちは本当にひどい目にあわされたの」 孫にでも話しかけるように、おばあさんはボクに語った。 おばあさんは今でも戦っているみたいだった、というと言い過ぎかもしれない。 ただ、悲惨な過去を拭い去ることはできないみたいだった。 一通り話したおばあさんは、もう随分やさしい顔に戻っていて、 「お邪魔して悪かったわね、いいもの作ってね」と言い残し去って行った。 ボクは「みんなに伝えます」という力ない返事しかできなかった。 それからボクは非常に複雑な気持ちになった。 厳密に言えば、洋風というのはイタリアンだったのだが、 そんなことは問題じゃない気がした。 しかしボクは自分の作ったものに負い目を感じてはいない。 これは”戦争を知らない子供”の嗜好だ。 ボクたちはこんなものが好きだし、こんな今を生きている。 ボクは自信を持って作ったものをクライアントに見せた。 先方も気に入ってくれたと思うし、採用されればいいなと思っている。 ただおばあさんの気持ちも忘れないようにしたいと思う。 大事なのは知ることであり、伝えることだ。 このお店がオープンして、1番最初に一緒に行く相手に、 ボクはおばあさんの話をしようと思っている。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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