【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! --/--
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

フリーページ

2003年08月13日
XML
カテゴリ:カテゴリ未分類
プロフィールには記してないけど、
簡単に言えば、ボクはモノを作る仕事をしている。
今日、ある物件のラフを出力しに、
誰でも知ってるフランチャイズの出力店に行った。

秋にオープンする飲食店の開店前DMを、
趣向を凝らした粋なものにして欲しいとの依頼があり、
足りない頭で考えた挙げ句、和紙と稲穂を使うことにした。
ボクはその上がりのイメージを先方に掴んでもらうべく、
とりあえずは手作りで見本を作っていた。

この飲食店はいわゆる創作和食のお店で、
洋風なテイストも取り入れるらしい。
最近は珍しくもなくなったが、そこは依頼された以上、
他店との差別化を出したかった。
客単価も高すぎず、かといってお子さまが気軽に入れる感じでもない。
そのへんのバランスをうまく突いたDMになりそうだと、
ちょっとした手応えを感じていた。

製作に没頭していた時、ふと人の気配を感じ何気なく顔を上げると、
年の頃は80歳くらいのおばあさんが、ボクの作業を観察していた。
目と目が合ったおばあさんは、「これは何ができるの?」とボクに聞いてきた。
ボクは「今度新しくできる飲食店の案内状ですよ」と答えた。
「ま~、綺麗な和紙や稲穂があるから、私は何ができるのかなって思ってたの。
どんな感じのお店なの?」とおばあさん。
「和食のお店なんですけど、ちょっと洋の雰囲気も入ってます」とボク。
そう答えた瞬間、楽しそうにボクの作業を眺めていたおばあさんの表情が変わった。

さっきまでのやさしい表情から一変、険しい表情のおばあさんは、
「この雰囲気に洋風は似合わないわよ」と突き放すように言った。
いきなりの変化に若干驚いたボクは、
随分間抜けな顔でおばあさんを見返していたと思う。
ボクの間抜けヅラに気付いたおばあさんは、
急に居心地悪そうに「和食だけじゃ駄目なの?」とつぶやいた…

聞くとおばあさんは、先の戦争体験者だった。
当時は極限の生活を送っており、憎き相手は無論連合軍で、
洋風=アメリカという思考に結びついたらしい。
「今は何でもアメリカになっちゃってるけど、私たちは本当にひどい目にあわされたの」
孫にでも話しかけるように、おばあさんはボクに語った。

おばあさんは今でも戦っているみたいだった、というと言い過ぎかもしれない。
ただ、悲惨な過去を拭い去ることはできないみたいだった。

一通り話したおばあさんは、もう随分やさしい顔に戻っていて、
「お邪魔して悪かったわね、いいもの作ってね」と言い残し去って行った。
ボクは「みんなに伝えます」という力ない返事しかできなかった。

それからボクは非常に複雑な気持ちになった。
厳密に言えば、洋風というのはイタリアンだったのだが、
そんなことは問題じゃない気がした。
しかしボクは自分の作ったものに負い目を感じてはいない。
これは”戦争を知らない子供”の嗜好だ。
ボクたちはこんなものが好きだし、こんな今を生きている。

ボクは自信を持って作ったものをクライアントに見せた。
先方も気に入ってくれたと思うし、採用されればいいなと思っている。
ただおばあさんの気持ちも忘れないようにしたいと思う。
大事なのは知ることであり、伝えることだ。

このお店がオープンして、1番最初に一緒に行く相手に、
ボクはおばあさんの話をしようと思っている。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2003年08月13日 17時46分44秒
コメント(2) | コメントを書く


PR

キーワードサーチ

▼キーワード検索

プロフィール

{Kaoru;}

{Kaoru;}

お気に入りブログ

まだ登録されていません

コメント新着

 ぷりたん@ 超ラッキー!(* ̄ー ̄) 今まで風イ谷に金出してた俺って超バカスww…
 キタキタ@ イヤッホォォォォォウ! やべーこの女やべー! 終始そんなこと考…
 コースケ@ お、俺のおtmtmがぁ――!! もう、もう……なんも出まへぇーん!(TT…
 鳥蘭丸@ うにゅぅぅぅぅ…… 可愛がってもらうだけ可愛がってもらって…

© Rakuten Group, Inc.