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★「執行猶予。恐らく、私がこの旅で望んだものは、それだった。」(p174)
★「ただ単に逃げたかっただけなのかもしれないという気がしていたのだ。 つまり、属することで何かが決まってしまうことを恐れ、回避したのだ」(p175) ★「わからない。すべてがわからない。しかし人には、わからないこそ 出ていくという場合もあるはずなのだ。」(p176) ★「私がシンガポールにもうひとつの香港を求めていたとすれば、 たとえそれがどんなに魅力的な街であったとしても 本物以上のものを見出せるはずがなかった。」(p187) ★「自分の形みたいなものがあって、その形をなぞるのは辛すぎる。」(p205) 【サラっとく】 ●「インドのデリーからイギリスのロンドンまで、乗合いバスで行く」 そんな馬鹿げた発想から始まった、遠路2万キロのユーラシア放浪。 誰にもできるけど、誰もやろうとしない、粋狂な試み。だからこそ得られる、 純粋な喜びや悲しみ、葛藤…それらは今、も旅行者の心を掴んで放しません。 ●日本のいわゆる「バックパック」ブームの先駆けとなったのが、本書です。 海外を放浪している日本人の足を止め、バックパックの中を探れば、 きっとこの「深夜特急」シリーズの文庫本が見つかることでしょう。 ●著者の沢木耕太郎氏は当時26歳。著作がヒットし、仕事依頼が殺到していました。 そんな中、全てを投げ出し、心に様々な葛藤を抱えつつ放浪の旅へ…。常識から すれば「せっかく軌道に乗り始めたのに無謀な…」という声が聞こえてきます。 ●しかし、著者からすれば「軌道に乗り始めたからこそ」なのでしょう。 ジャーナリズムに忘れ去られるのも覚悟で手に入れたモラトリアム。 そこで沢木氏が書き上げた渾身のルポタージュを、どうぞ一読あれ。 【突っ込んどく?】 ●なぜ「軌道に乗り始めたからこそ」仕事を放り出して旅に出ちゃうんだ? 当然、そんな疑問が皆さんの心をよぎったかと思います。沢木氏は本書の中で、 「執行猶予。恐らく、私がこの旅で望んだものは、それだった。」(p174)と述べます。 ●当初「ライターとして一生食っていくつもりはなかった」という沢木氏にとって、 自分の内部で膨張を続ける仕事の体積は、底知れぬ不安と映ったのでしょう。 片鱗に追いやられた「自身を探す心」は、静かな革命を起こします。 それが、「外国に行くから」という理由で仕事を断るという行為。 ●それが来るところまで来て、後に引けなくなり出発、というのが真実のようです。 ただ、これとは別に、やはり沢木氏は根っからの自由人なのだと思います。 「人の関係とか、物とかがふえていくに従って、不自由になっていきますよね。 僕は、そいういうふうに物をふやして、関係をふやして、そして不自由になって、 安定した感じて生きていくようにはなりたくないと思うんですよね。」 ●高倉健氏との対談で、沢木氏は上のように述べています。 これを読んで、芸術家、岡本太郎の「人生は積み重ねだと誰でも思っているようだ。 ぼくは逆に、積みへらすべきだと思う。」という言葉を思い出しました。 ●確かに積み重ねた「蓄え」や「守るもの」といった存在は、充足感や安心感を 与えてくれる一方で、それに固執しすぎると、自由や柔軟性を奪われかねません。 それを回避するために、旅行や転職で、時にダイエットを行なうのもいいかも。 要は「攻め」と「守り」の絶妙なバランス感覚、こういったものが必要なのでしょう。 オススメ度★★★★★満点! →・旅行好きな方 ・「ツーリスト」でなく「トラベラー」 ・アジア好きな方 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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