ないものねだり

あれから１５年



愛用の品　車　住まい　食べ物　水　仕事すら...



今まで　自分の周囲に存在した　当たり前の日常が



わずか１分足らずで　目の前から砕けて崩れた



色彩を失った街並み



いや...　もはや街ではなく　塊だった



住み慣れた部屋... 妻子...　親兄弟...　恋人...　友人知人...



住み慣れた街...　馴染みの店...　想い出の写真...　



あのとき、自分の周囲に起きた事が



余りにも非日常的に見えて



誰もが　自分に起きた出来事を直ぐにはのみ込めなかった...



目に映る　何もかもが色を失い灰色にみえた



誰が想像していただろう？　



明日はどうなる...　どうやって生きよう...　



そんな毎日が来ることを



いったい誰が想像できただろう...



当時は受け入れられなかた事を...



時間とともに ようやく受け入れられるようになった　



いや...　受け入れなければ　何もはじまらなかった。



そして自分の新しい日常は　



たった一人で歩き続け



暗闇の中で飲み水を探し　寝る場所を探すことからはじまった



漂う死臭　埃まみれの髪　汚れた服　空っぽの心...



焦げ臭い灰色の瓦礫の山から１５年



神戸の街は　あれから光を取り戻した



だけど　あの日から



一変した暮らしの中で　



誰もが　"失う"という事を知った



そして



誰もが　失くしたものを　時々振り返っている