カテゴリ:独りの時間
1979年の秋... これまで聴いたことのないようなエキゾチックな旋律と美しい歌詞。 そして、透明感のある歌声に心を奪われた。 まるで、シルクロードのオアシスを想わせる情感豊かな歌詞... 西域の妖精迦陵頻迦(がりょうびんが)が、天から舞い降りて歌っているように思えた。 何故といわれても説明はできないけれど... その曲が放つオーラとでもいうべきだろうか... 何処か切ない歌詞と曲調が、無条件に心に響いたというほかはない。 最初にその曲を聴いたのは、先輩クルマの中だったと記憶している。 場所は... そうだ!宝塚の逆瀬川から六甲山を登り、神戸へ抜ける途中だったと。 カーラジオから流れる、関西ローカル局の「ヤングリクエスト」という番組中だった。 久保田早紀の「異邦人」。 久保田早紀は、ちょっと異色の経歴を持つ人だったようだ。 彼女は、母親の意向で幼少の頃からピアノのレッスンを受けていた。 一度、有名中学校への進学に失敗したときには、クラシックに傷心の心を癒され、学生時代はポップスに夢中だったとか。 そして、東京パブテスト神学校で神学を学んだ彼女は、1979年に「異邦人」でデビューし、歌い手の美貌にも注目が集まって、この曲は150万枚の大ヒットとなった。 そのほか、「夢がたり」、「エアメール」、など7枚のアルバムをリリースしたが振るわず、1984年の「夜の底は柔らかな幻」を最後に、僅か5年という短さで芸能界から引退した。 彼女は、中近東のエッセンスを織り込んだポルトガル民謡のファドーやサウダーデの旋律から、あのオリエンタルな香がする独特なメロディーを見出した。 彼女が引退してからも 「異邦人」の旋律は人を魅了し続け、誰もが心惹かれた。 時を経ても色褪せないメロディーは、度々CMソングとして起用され、 ZARDの坂井泉水、中森明菜、徳永英明、小柳ゆき、稲垣潤一duet with 荻野目洋子など、多くのミュージシャンにもカヴァー曲として歌い継がれている。 当時は、NHKの番組「シルクロード」の放送で、中近東から西域地方にかけての異国文化がちょっとしたブームとなり、当時の砂は、井上靖の小説に夢中になっていた。 久保田早紀の曲づくりの感性... そして、彼女が奏でた旋律は、今思えば少し時代が早過ぎたんじゃないだろうか。 「異邦人」という曲は、当時の出来事や想い出と重なり合いながら、今も砂の心に生きている曲だ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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