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ないものねだり

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2016.01.04
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さてさて、昨日からの続き...

(※脚色を加え、オリジナルとは異なる凄惨な描写があることをご了承頂きたい。)

女殺油地獄(下の巻)
月日は流れ、お吉は河内屋からのれん分けを受けた、豊嶋屋七左衛門の女房となり、
それなりに幸せに暮らしていた。 

DSC_0608.jpg

一方、与兵衛は度重なる放蕩で勘当され、挙句に大借金をしてしまう。 
金策に疲れ、まさに崖っぷちに立たされた与兵衛には他に頼るあてもなく、
一度は情を交わしたお吉に頼んで、金を工面しようと豊嶋屋へ向かう。

ちょうど、与兵衛が豊嶋屋に行き着いたときのことだった...

与兵衛は、偶然にも豊嶋屋に義父が豊嶋屋に入って行くのを目にする。
自分を勘当した両親が、「もし息子が訪ねて来たら 渡してやってくれ」と、
金を用意し、お吉に預けに来ていたのだ。  

DSC_0649.jpg

物陰に隠れ、一部始終を聞いた与兵衛は、この時あらためて親心を知り、
まっとうに生きようと決心し、お吉を訪ね、金を貸してくれと懇願する。

お吉にすれば、当然、与兵衛を助けたいのは山々だった。
しかも、渡りに舟とばかりに、徳兵衛夫婦にも頼まれたところだった。
けれど、今まで欺かれ続けたこともあり、易々と許すには躊躇いもあった。

DSCN8695.jpg

さらに、恩ある河内屋の旦那と奥様の心も察し、今回は心を鬼にして、
わざと厳しい口調で、お吉は与兵衛の心を確かめようと図った。 

しかし、お吉のあまりに厳しい態度に与兵衛の心は折れ観念した。
なら、ここで自害しようと思い詰め、持っていた匕首(あいくち)を抜いたが、
それが惨劇を招いてしまう。

DSC_0319.jpg

匕首を見たお吉は、てっきり与兵衛が自分を刺すものと誤解し、
咄嗟に与兵衛を突き飛ばした。

突き飛ばされた与兵衛は、かっと逆上し、逃げるお吉に切りかかる。 

逃げ惑うお吉、追う与兵衛... 二人はもつれ合い、
与兵衛は、お吉の着物の襟を掴み、匕首を脇腹に突き立てた。 

「今死んでは娘が流浪する!」 

「死にと~ない」 「金は要るほど持ってござれ」

「助けて下され与兵衛様ぁぁぁ」 

お吉は幼い我が子を思い、必死に与兵衛に命乞いをするが、
逆上して、が差した与兵衛の耳には届かなかった。 

お吉の帯を掴んで引き寄せ、なおも無我夢中で刺し続ける。
与兵衛は、お吉の身体を刺してはえぐり、抜いては切りつけし、
全身に返り血を浴びて、もはや悪鬼の形相だった。 

お吉は苦しみに身もだえして、店の油樽は次々に倒れた。 

土間には、ドクドクと油が流れだして見るみる油の海となり、
流れる油に足を取られ、二人はもつれながら倒れ込む。 

そして、油の海で馬乗りになった与兵衛に繰り返し腹をえぐられ、
力尽きたお吉は、下腹に匕首を突き立てられたまま痙攣して血の泡を吹き、
白目を剥いて絶命した。 

DSC_0362.jpg

髷(まげ)も解け、血と油にまみれた与兵衛は身を震わせて起きあがり、
戸棚の金を掴んで表へ逃げ出した。 

それは、まさに放蕩と愛欲に溺れた果ての惨劇だった...

 ― 完 ―


 夢に舞ひ 明けに骸(むくろ)の 糸蜻蛉 浮き世の川の 澱みなるかな(砂浮琴愚歌)

長々と、勝手気ままな乱文にお付き合い頂き、御礼を申し上げます。m(_ _;)m

さて、昨日からのblogの写真は、時々出掛けている近江八幡の風景で、
よく時代劇のシーンにも登場するので、見覚えのある方も多いだろう。







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Last updated  2016.01.04 22:43:28
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