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『列島上空に巨大みかん現る!?』
ある夏の曇り空の朝、こんな見出しで新聞は始まっていた。 私はみかんの形が墓石になってもいいほど、そのままみかんと一緒に死んでもいいほど、みかんを愛していたので、その見出しを食い入るように見つめた。 8月某日、東ナシ海に突如出現した巨大みかんと思しき物体は、1時間に5kmという遅いスピードで日本列島に近づき、昨夜未明に四国に上陸した。 巨大みかんの下の地域には暴風は吹いていないものの、集中豪雨によって川の堤防が決壊し、床上浸水が約10万4500棟、床下浸水は現在も正確な数が把握できないほどの状況だという。 さらに被害が拡大する恐れがあるとして、自治体は住民全員を避難させた。 ○○県××市の市役所の大田氏はこのように説明した。 「兎に角被害が凄いのです。本当にこれは雨なのでしょうか、あたりには酸っぱい匂いが立ち込めています。この雨は凄い酸性だと思います。少ない情報によれば、すでに床上浸水した住宅の一部の柱は溶け出しているようです――」 新聞の真ん中には、オレンジ色の雲が空に浮かんでいて、その下には家が無残な状況をさらしている写真が載っていた。 「とんでもなくみかん色じゃないの・・・うふふ」 いつも危機感が欠けているといわれる私は笑って、朝食の目玉焼きに手を伸ばした。 「さてさて、今日も黄色い目玉親父ちゃんは私のお腹の中に・・・って、お母さん!」 なんと今日の目玉焼きにはオレンジ色の醤油がかかっていたのだった。 私、ソース派なんだけど醤油かけてくるというこの状況は、母親による家庭内暴力? って、そもそもオレンジぃ醤油って何よ! 分かった、これはネタね!?写メ撮ってやろう。 ・・・・あ、そもそも携帯持ってないんだった。 目玉焼きを『ゲゲゲの鬼太郎』の中の、ぬりかべのような表情で見つめていたら、キッチンからお母さんがやってきて宣言した。 「お食べ!シンデレラ!!なぁに、それともお嫌なのかしら?・・・お口の中に突っ込んであげるわよっ。喉の奥を広げて顔を上にお向け!」 「・・・・・お、お母さんっ?」 「・・・・・冗談よ、可愛い娘。最近巨大みかんが来ているでしょ?そのおかげでオレンジジュースが安くって安くって、お母さん笑みが溢れて・・・うふふふふふふ。だから今日は大サービスよ。目玉焼きにもオレンジジュースかけちゃった」 私は唖然とした。 お母さんの大胆さと、オレンジジュースの価格が急降下している理由を考えて・・・・。 オレンジジュースが超安いって事は、つまり最近の巨大みかんから降ってきたあのオレンジ色の液体をオレンジジュースとして売っている可能性があるという事だ。 何やってんだ、社会人!!! 私はくらっ、と眩暈がした。 あぁ、品質管理の問題は・・・安いモノ買いのおばさんの心理とは・・・・・。 「お母さん、味見したのよ。とっても美味しかったわ」 「な、んだって・・・・。母上、これを私に食えと申されるのですかっ」 「うむ、我が愛しき娘よ、朝食は大切じゃ・・・てへ、昨日の時代劇の真似でーす」 「い、いやそういう問題じゃなくってだからこの値段の急降下は信用できないしそもそも目玉焼きにオレンジジュースというのもおかしいかと思うけどでもでもでもでもお母さんの味覚を馬鹿にしてるわけじゃなくってなんていうかむしろ私の方が味覚おかしいから我が子を愛する素敵なお母さんとして自分の子供の味覚を尊重して目玉焼きにはソースをかけて欲しいというか・・・・・えぇい、部活に遅れちゃうじゃんっ」 私は時間を気にして普通は美味しいはずの目玉親父ちゃんをかき込んだ。 味は、まずかった。 「もふもふもふ、部活に・・いてきまふ」 ダダダッ。バックを担いで玄関を飛び出す。 バシャ・・。 勢いよく飛び出した私の足は、目の前にあった水溜まりに突っ込んだ。 いきなり濡れた。あーぁ。 さらに、 「あーっ、ちょっとお母さん忘れてたんだけど、今日は部活お休みですって電話着ていたの」 と玄関まで見送りに来たお母さんは水溜りに私が足を突っ込んだ後でのほほんと言った。 「何ぃっ!?」 最悪の事は続くものだね・・・うぅー。 理由はこうだった。 『この辺りにも巨大みかんの影響が出始めてきているから』 そういえば、家って四国に近いんだっけなぁ。 空は朝という時間帯にも関わらず夕方のように薄いオレンジ色だった。 危ないね、自分。 (続く、はず) 調子に乗って書いちゃいました^^ こんなお母さんいたらPTAとか任せられませんね お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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