葉隠餡

馬鹿と言われるのはいいのだが、流石にお客さんに苦笑いされた。私がちょっと戸惑ったのだ。そしたら私を突き飛ばしてパソコンを操作し、そして「あとやって」と言ってその人はまた隣の席に戻った。
私は突き飛ばされた拍子にデスクにガンと大きな音を立ててぶつかった。お客さんは気の毒そうな目でしかし私に向かって苦笑いをしていた。




馬鹿と扱われてもそれは事実だから受け止めなくてはいけない。だが、状況も理由も何もきかれず、いきなり口を挟まれて意味がわからず聞き返そうとしたら上記の状況になった。時間がないならまだしもだ。1時間先の話であり、お客さんを待たせてる状況ではなかった。ただ、私は在庫を確認しようとしただけである。
私の目線から言えばだ。ただ、他の人から言えばそうではなかったのだろう。
私は真ん中の席だったのだが、左の人（私より一回り以上年下の人で馬鹿にされている）から「ぢゃるさんありますよ」と言われた。しかし、私はそのあるという事についてちょっと疑問があり、確認してからお客様に返答したかったのだ。



屈辱。いらっしゃいませと言葉を失う程。自分視線ではそう感じたのだ。その後、同僚に呼ばれてもまるで気がつかなかった。


この会社に入った頃、「いらっしゃいませ」と言ったらら同僚に変な顔をされた。「間違ってないけど言わなくていいよ」と言われたのを思い出した。同僚に「お疲れ様です」と言っても誰も返してくれなかった。それらは…別にこの職場に限った事ではない。この街でよくぶち当たってきた壁である。それでも、私は言い続けた言葉だった。「私は貴方が正しいと思う。たとえ新人であっても正しい事はただしい。だから言い続けるべき」と言われた事がある。先月移動した所長に。その言葉があったから私は今まで続けてこれた。
しかし、今は言わない時もあるし、客の前ですぐに横柄な人には自分も横柄になるようになった。以前では信じられない事であるが、それでいいと最近思っている。



若い頃なら間違いなくその場で席を立ち、後ろに呼び出して相手をぶんなぐるか、そのまま辞めていたであろうと思う。
しかし、今はもうその勇気もなくなった。大人になったのではない。単に私自身が疲弊してしまったのだ。



その職場のやり方というのは現実に存在する。その方法が世間一般において正か否かはさておき。
しかし、どうしてもおかしいと思う事もある。順番待ちをしてる人を飛び越してなんで予約を受け付けるのか。それも特に事情も何もない人を。
そんな事が多々ある。改善しようという前にそれらがおかしいと思っていないのだから、当然私は馬鹿扱いになる。


最近鏡を見るのが嫌だ。元々化粧をしないから尚更みない。しかし、それ以前の問題で鏡を見たら酷い顔をしている。険しい顔つきなのだ。



「貴方の言う事は正しい。会社として正すべきだ。ただ、上司としてではなく個人として一つだけ言わせてもらうなら仕事が出来ると周囲から言われるようになってから発言した方がいい。それまではどんなにおかしくても耐えるのが一番の得策だ」という事を何人か過去の人にわれたのを最近よく思い出す。
先日、私より後に入った男性に「私（ぢゃる）はプライドが高いと思うか？答えにくければいいが、できれば正直な感想を聞きたい」と尋ねたらしばらく考えて「正直プライドが高いとは思えない。ただ、これだけは譲れないというものをはっきり持っていますよね」と言われた。その人は前職がホテルマンだったらしいのだが「ここの会社に来る時に、年下、後輩、どんなに理不尽な事をボロクソに言われようとも絶対に我慢しようと決めてきた」と言っていた。確かにそれが普段ならできそうな人だ。クレームを言われてもひたすら感情を隠して対応している。あれだけの人は中々いないと思った。だが、その彼も一度だけ会社の人といい合いしたという話を聞いた。又聞きだが内容を聞けばそりゃぁね…と思ったのだが…。正直、その話を聞いた時少しほっとした。自分だけじゃないんだなと。。。





だが私は思う。
そう、私は口だけの人なのだ。



尊敬する人。そして目指すべき人物像は

「道化師」と「Yesマン」


今日から付け加える事にしよう。