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2006年06月11日
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カテゴリ:がん医療について
 みなさまこんにちは。

 がん対策基本法案が衆議院を通過し、まずはホッと胸をなでおろしているところですが(ただ、大どんでん返しなんかがあったら大変ですから、まだまだ油断は出来ませんが)、置き去りにされてしまったものについて、何が置き去りにされてしまったのか・・・を、検討しておきたいと思います。

 【置き去りにされてしまった政策】
1.抗がん剤等の治験等の促進(民主党案十三条)
 民主党案十三条 国は、外国において有用であるとの知見が得られた抗がん剤等であってわが国において使用された場合には健康保険法(大正十一年法律第七十号)第六十三条第一項の療養の給付又は同法第八十六条第一項の特定療養費の支給その他これらに準ずる医療に関する給付の対象とならないものの使用に係るがん患者の経済的負担が過大となっていることにかんがみ、これらの抗がん剤等の治験の促進等これらの抗がん剤等が使用されたときに同項の特定療養費の支給その他これに準ずる医療に関する給付がされるようにするために必要な施策を講ずるとともに、有効性、安全性等に関する事項の審査が迅速に行われるように必要な施策を講ずるものとする。

 或いは、民主党案(基本理念)第二条の三
 外国において有用であるとの知見が得られたがん医療が、わが国において出来る限り提供されるようにすること。


 <point>これは基本法だから、細かいことは入れなくてよいのだ、というのが与党案のようですが、常に、最新の医療を求めていかなくてはならないがん医療にとって、海外で有用との知見を得た治療法を迅速に取り入れ、がん患者の過大な負担を軽減する・・・というのは、これから先も恒久的に必要な施策であるだろうと思います。私のまわりの進行がん患者の方々が、過大な負担を強いられている現実を前に、この部分が置き去りにされてしまったことは、残念でなりません。


2.がん登録の実施(民主党案第八条)
 国及び都道府県は、がん医療の向上に役立てるため、すべてのがん患者(がん患者であった者を含む。以下この条及び第二十条第二項第三号において同じ。)に係るがんの診断、治療の経過及び結果その他のがん患者に係る事項の登録を行う制度の実施に関し必要な施策を講ずるものとする。

 2 前項の施策を講ずるに当たっては、登録された情報がその利用目的の達成に必要な範囲を超えて用いられることがないようにする等がん患者に係る個人情報の保護が図られるようにしなければならない。


 <point>がん登録は、法整備ありきでなければ進みません。
 がん登録がいかに大切で必要なものであるかは、このブログでは何回も採り上げました。
 でも、自民党内では、がん登録の文言を削除しないのであれば、このがん対策基本法案を通すことはさせない、という剣幕だったそうです。
 与党案の第一条に書かれていたようにがんの対策がうまくいっていたのであれば、がん登録にもその結果が現れることでしょう。
 もっと以前からがん登録が行われて、今軌道に乗っていたら、もしかして、アスベストや中皮腫の問題は、もっと早くに対策がとられていたかもしれません。
 ただ、まあ、テレビのドキュメンタリーなどで見る限り、構造としては、水俣病のときと同じでしたから、がん登録ごときでこの問題が避けられたかどうかは、私としても疑問ですが。かなり早い段階から、国や企業は問題を把握していたのに、経済最優先で、対応を出来るだけ先延ばしにして放置したのですから。問題の把握、という点に関しては、がん登録がなくても、把握していたんですよね、政府は。


 3.基本計画の見直し時期
 与党案は5年ごと、民主党案は3年ごと。


<point>患者団体の多くは、3年ごとの見直しを希望しましたが、受け入れられなかったようです。
 


 基本理念に関しても、民主党案は、第二条において、
 一 がん患者に対し、その病状、治療方法等についての適切な説明がなされることにより、がん患者の理解と自己決定に基づいたがん医療が提供されるようにすること。
 二 がん患者に対し、系統的に収集され、整理され、及び評価されたその時点においての最新のがん医療に関する情報に基づいた適切ながん医療が提供されるようにすること。

と、患者の理解と自己決定、というインフォームドコンセント、インフォームドチョイスを明記しています。
そして、均てん化、標準化もについてもはっきり言及されています。

この基本理念がなくなってしまったのは、やはり残念ですね。

基本法案であればこそ、中身のある基本理念を謳ってほしかった・・・・。


 とはいえ。

 協議会の誕生は大きなことです。

 20人以下の委員の中に、患者や家族、遺族を、委員として参加させると明記されているのですから。

 医療従事者と、学識経験者と、患者サイドの代表者・・・。

 がんは、がんの種類や部位によって、また、進行度合いによって、さまざまな問題点があるのですから、患者サイドの代表者は、そういう観点のわかる、いろいろな人が入る必要がありますよね。

 『患者の気持ちは患者にしかわからない』ということがあるように、長期生存者の多い乳がんなどの患者さん本人も、代表になるべきでしょうし、逆に、進行が速く、長期生存のむずかしい部位のがんの代表には、家族や遺族がなるべきでしょう。
 実際、アメリカのアドボケイトは、消化器がんは遺族が圧倒的に多いということでした。

 また、医療の政策について、訴えてきた人間の主張もぜひ採り上げて欲しいと思います。

 こういう活動をしてきた人間や、また、がんのジャーナリストなども、委員に入れて欲しいと思います。


 これまでの検討会を見る限り、検討会そのものは、あまり意味をなしていないように思いました。
 私が傍聴するような検討会は、その下準備の段階で結論が出ていて、あそこでの議論は殆どパフォーマンス、ただのプレゼンテーションの場になってしまっているんですよね。
 だから、治験のあり方に関する検討会なんて、検討委員の先生が、常に3~4人は舟をこいでいると言う有様です。

 この協議会は、そういうものではなく、きちんとした人選の元、中身の濃い協議会になって欲しいと願っています。

 お飾りの、偉いお医者様には、できるだけご辞退いただきたいと思います。





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Last updated  2006年06月12日 16時54分08秒
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