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テーマ:癌(3518)
カテゴリ:がん医療について
『世界のエビデンスが日本では通用しないのはなぜか?(1)』からの続きです。
『世界のエビデンスが日本では通用しないのはなぜか?(1)』 からお読みくださいm(__)m (つづき) MDアンダーソンの上野直人先生が、 『経験と勘に頼ったがん医療は最低である』 とおっしゃったのを聞いたときにはびっくりしましたが、その真意は、 “経験と勘では『日進月歩』のがんの医療についていけず、古い治療が漫然と行われてしまうことになる。かといって、エビデンスのない『最新』の医療を行うということもまた、患者さんに効果も定かでない危険な治療を行うということを意味する” ということで、 『現時点では、最新のエビデンスに基づいた標準治療が最高のがん医療である』 ということでした。そのご見解には、大変共感しました。 日本ではなぜか、世界的な、信頼のある学会の発表するエビデンスに基づいて、世界で標準となった医療を行う医師や病院があっても、評価されません。 また逆に、世界標準とはかけ離れた医療であっても、医師法に違反でもしない限り、問題視されません。 学会も、特にそういった監視をしていません。 これは、大きな問題です。 ちなみに、日本では、国民一人当たりにかける、抗がん剤の治療薬の価格は、決してチープではありません。 私の持っている資料(2005年時点)によれば、調査22か国中、1位アメリカ、2位フランスについで第3位です。 しかし、その、使用されている治療薬の構成が、他の国に比べ非常に独特なのです。 使用されている抗がん剤の比率を、世界で最初に発売された年ごとにグループ分けして比較してみると、 2004~2003年:2002~2000年:1999~1995年:1995年以前 世界平均 1 : 1 : 4.5 : 3.5 日 本 0 : 0.8 : 2.7 : 6.5 と、大きく違うのです。 10年以上前に発売された古い抗がん剤が、日本では抗がん剤の購入価格の65%を占めてしまっています。世界平均はおよそ35%程度ですから、大きな違いです。 これは2005年時点のデータなので、2007年の今はこれよりはましかもしれませんが、これらの時間軸を2年ずつ後ろにずらして新しいデータをとっても、この比率が劇的に変わっていることはないのではないか・・・という気がします。 また、2003年~2004年に承認されている薬の比率がゼロであるのは、いわゆる薬の承認が日本では遅いというドラッグラグの問題によるもの、ということができますが、10年以上も前に承認されたような古い薬の使用量が、世界平均と比べて異常に高いことの説明にはなりません。 日本で提供されているがんの化学療法が、いかに世界標準のエビデンスに基づかない、独自の治療であるのか・・・を、このデータが如実に物語っていると思います。 このことは、日本のがんの医療にとって、とても大きな問題なのです。 読売新聞の『がんと私』にも、そのような記事がありました。 新薬導入の遅れ 患者に影響 (2007年9月21日 読売新聞 記事は) 先日、スウェーデンのカロリンスカ研究所とストックホルム商科大の研究者を招いた勉強会に参加した。彼らが5月に発表した、抗がん剤の早期承認・導入が、患者の生存にどんな影響を与えているかを分析した研究論文に興味を持ったからだ。この記事でも、薬の承認が遅いこと、古い治療が漫然と行われていることが、患者の生存に大きくかかわっていると指摘しています。 それなのに、この事実が、なぜ大きく問題視されないのでしょうか? 日本には、がんの患者会がたくさんありますが、この事実を問題視して解決しようと取り組んでいる患者会は、ごくわずかです。 PhRMA(米国研究製薬工業協会)会長の2007年年頭挨拶と10の疑問(2007年1月10日のニュースリリース)に書かれた10の疑問は、率直で大変面白いものでした。 新年明けましておめでとうございます。PhRMAの会長さんは、この挨拶の素朴な疑問の2番で、日本の多くの患者団体が、欧米に比べ社会的に未熟である・・・ということを指摘されているわけですが、この指摘は当を得たものであり、これを日本の患者団体は恥じて、奮起すべきだと思います。 しかし実は・・・一番の問題は・・・。 日本の多くの患者団体やその構成員が、社会に対してアンテナを張っていないため、この、PhRMAの会長の挨拶自体を、多分読んでいないのだろう・・・ということです・・・・ そして・・・ いわんや、一般国民は・・・です お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2007年10月13日 21時54分32秒
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