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テーマ:癌(3550)
カテゴリ:がん医療について
今日のがんナビのReportには、患者団体アメリカ訪問記の連載第5回が掲載されています。
あなたは、自分のがんのことを、子どもに話せていますか? (記事は) この記事は、MDアンダーソンがんセンターのKNIT(=Kids Need Information, Too=子どもだって情報がほしい)というプログラムの紹介です。 KNITと、初めて聞いたときは、『編み物が精神的なケアになるのかな?』なんて思ったのですが(パッチワークやキルトなどのプログラムを提供している病院もあったので)、まったく違いました~~(^^;; KNITプログラムの詳細な説明は、ぜひ、上記にリンクした記事をお読みいただきたいのですが、このプログラムは、子どもにも親のがんについて知らせるべき、という視点でのプログラムです。(小児がんの患者さん向けのプログラムではなく、あくまでも、親ががん患者である、子どもたちに向けたプログラムです。) 私自身は19歳のときに父をがんで亡くしており、父が最初に発病したときが13歳、ちょうど私の長女の今の年齢と同じ年のときでしたので、このプログラムの趣旨には、感銘を受けることが多かったです。 KNITプログラムの基本にすえられているのは『3C』で、 『Cancer』 (=病気の名前は『がん』である) 『not Catchy』(=うつらない) 『not Course』(=あなたが原因ではない) という、この3つのことをきちんと子どもに伝えてあげなければならない、ということでした。 親は、子どもを守りたいので、アメリカでも、自分の病状を子どもに話すことをためらっている人が多いようです。わが子を守りたい、傷つけたくない、という思いから、自分ががんであることを子どもには知らせたくない、と思う人も多いそうです。 しかし、子どもの世界は、自分の体験・知識・感情が中心の世界なので、人生経験がほとんどないような幼い子どもには、『がん』とほかの疾患との違いがわかりません。 自分や自分の友達がなるような、『風邪』や『みずぼうそう』といった感染症と『がん』との違いを、きちんと説明することが大事である、ということでした。 理由は、以下のようなことでした。 がんの治療を続ける場合、手術の傷跡が残ったり、化学療法や放射線治療での副作用があったり、ということが起こります。 何も知らせず、ママは(パパは)ちょっと具合が悪いのよ、というような説明だけだと、病院にいくたびに(副作用で)具合が悪くなる親を見て、自分が風邪などをひいて病院にいくときに、病院にいくことや、治療を受けることを異常に怖がることもあるそうなのです。 また、自分がなった風邪も親のがんも、同じ『病気(sick)』という説明だけだと、自分も、親が受けている副作用のような状態になるのでは、と、病気そのものをおびえることにもなるので、『Cancer』であること、『not Catchy』であることを伝えるのは、とても大切なことなのだそうです。 もう少し年齢が上の子どもにとっても、このことはやはり重要なことで、親の病気ががんであり、がんという病気が、副作用を伴うような治療を受けなければならない難しい病気であることを理解することは、親のためにも、その子自身のためにも、大切なことだということでした。 そしてもうひとつ大切なのが、『not Course(=あなたが原因じゃない)』で、子どもは、自分を中心に物事を考えるので、親が病気になったことも、自分が生まれたせいで、ずっと忙しく大変だったからなのではないか、と、自分を責めてしまうことも多いからなのだそうです。 年齢により、病気の理解や死への概念なども違うので、その子の年齢・成長に合わせ、長期にわたるサポートが必要であるということでした。 そして、一番印象深かったのは、 『子どもは、親が大好きだから、いつも、我慢している。病気のことを理解して、いい子でいようと努める。闘病中もそうだし、遺族となってもそうである。 でも、本当は子どもだから、親にしてもらいたいこと、一緒にいてほしいなど、いろいろな感情を我慢している。 それがふとした瞬間に、憤りとなる。 一緒にいてほしいのに、これをやってほしいのに。 そして、神様に対して怒りを持ったり、親に対する怒りを持ったり、憤りを抑えきれなくなるときもある。“今一緒にここにいてほしいのに、どうしていないんだ!!” “自分だって、友達のように親と遊園地に行きたい!” そして、その次の瞬間には、神様を責めたり、親を責めたりした自分を責める。 自分はなんて悪い子なんだろうと思う。 だから、怒りを持つことはとても正常なことで、少しもおかしいことではなく、あなたは決して悪い子なんかではない、ということを説明してあげる。自分を責める必要はないと繰り返しフォローする。』 というお話でした。 私自身は、このときのマーサさんとのお話で、自分自身の心の底にしまいこんでいた罪悪感から、はじめて解放されました。 私の父が亡くなったとき、私は大学1年生でした。 父の具合がいよいよ悪くなった9月は、後期のレポート提出や試験の忙しいころでした。 私も兄も、神奈川県の横浜の大学に通っており(同じ学校ではありませんが)、父の入院している埼玉県の病院までは、学校からは片道3時間ぐらいかかりました。 母は当時小学校の養護教諭をしていて、病院と勤め先の小学校の往復という生活になっていました。 父は最期の2週間、ほとんど意識がありませんでした。 急変して『脳死』といわれてからいったんは意識を取り戻し、会話もできるほどになりましたが、モルヒネの量が多かったのか、その後は夢を見ているような状態で、ひとりでニコニコしたり声の出ない声でしゃべったりしていました。 私は、楽しい夢を見ているのだろうと思って、一緒に夢の中に入りたいなぁなどと思ったものです。 残念なのは、今思い出しても、父との最後の会話が何だったのか・・・わからない、ということです・・・・。多分、たわいもないことで、病室を出るときの『またくるね』ということだったと思うのですが・・・。 私はずっと、父が亡くなるなんて信じてなかったし、何とか、ずっと生き続けてくれることを願っていました。 でも、最後の意識不明の時期には、もう、このまま、良くなるなんてことはありえないのだと理解しました。 何日も母とも会えず、家と大学を行き来して、レポートや試験をこなし、兄と二人、わびしい夕食をとる毎日でした。何時間もかけて父のいる病院へ行くと、会うたびに母の頭が白くなっていました。 兄とのわびしい夕食のとき、ふと、父がこのままの状態が続くのなら、この状態が終わっても仕方ないのかな、と思いました。 母に、家に帰ってきてほしい、みんなで食卓を囲みたい、と思いました。 それはすなわち、父が亡くなっても仕方がない・・・ と、私が、父が死んでしまうことを受け入れてしまったということを意味します。 『みんなで一緒にご飯を食べる日がはやく来ないかな・・・』 と、私が兄につぶやくと、兄は困ったような笑顔で、 『でも、それって、父さんが死んじゃうってことだよ・・・』 と返事しました。私は、 『もちろん、お父さんも一緒に、ってことだよ』 と取り繕いましたが、そんな、幼い子どもが夢を見るような奇跡が父にはもう起こらないことを私もわかっていたので、この日々が終わるということは、目を開けなくなった父が病院から戻ってくることを・・・意味していました。 その次の瞬間、私は、なんて心の冷たい人間なのだろう・・・と、自分を心から嫌悪しました。父は、私のことを、本当にかわいがって愛してくれたのに・・・。 その日から数日して、父は亡くなりました。 私はずっと、自分の中のそういう心の冷たさを許せませんでした。 そして、そういう自分の一部を、自分で封印していました。 今回のアメリカツアーでマーサさんと出会い、KNITプログラムのお話を聞いているうちに、プログラムを受けている子どもたちが、私でもあるような気持ちになっていました。 あの時、私自身は、自分はもう立派な大人で、一人前だと思っていたけれど、精神的にはまだまだ未熟だったということなのではないかな・・・と。 たとえばもし、私の目の前に、当時の私とまったく同じ状況の19歳の女の子がいたら、私はその子を責めたり嫌悪したりするかと考えれば、そんなことは絶対ないと思うのです。 その子が自分を責めないように、と、心から心配し、アドバイスすると思うのです。 でもなぜか、自分のことだと許せない・・・。 そんな風に考えたら、自分のことを客観的に、解放することができたのです。 この経験は、長野で行われた『日本ホスピス緩和ケア協会』の2007年度の年次大会でも、お話させていただきました。(発表そのものは、素人丸出しみたいな発表で、つたなくて申し訳なかったのですが・・・) 日本では、患者のケアですらなかなか行き届かない現状があるので、家族のケアやフォローはほとんど取り組まれていませんが・・・・。 日本でも、このKNITのような取り組みはぜひ必要だし、始めていかなければならない・・・と思っています。 ヒューストンには、遺児となった子どもが、2週間に1回のペースで、来たいときに集うことができる BO’S PLACE という施設もあるそうで、家族と食事をしたり、レクリエーションしたりという、素敵なところなのだそうです。 これらの運営資金は、ヒューストンの企業からの寄付でまかなわれており、利用料金は無料だそうです。 国が動くのを待っていてもなかなか動かないので、民間のパワーを活用しつつ、何とか、うまく機能するものができたらいいな・・・と思います。難しいですけど。 ←もしよろしかったら、1日1クリックをm(__)m お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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