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2007年10月19日
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テーマ:癌(3550)
カテゴリ:がん医療について
 みなさまこんにちは。

 2002年4月に、坂口力厚生労働大臣(当時)が、がんの患者団体の要望を受けて、

 『(諸外国の)優秀な薬につきましては、とにかく半年以内に導入を行う』

と約束して下さいました。


 それから5年以上が経過し、国もその対策に乗り出し、ドラッグラグを1年半以内には、と約束していますが、実際にはまだ、まったく機能していないといわざるを得ません。


 2005年1月に『未承認薬使用問題検討会議』がはじまり、以後、年に4回開会され、10月29日にその第14回目が開催されますが、そこで検討されて『迅速承認』の対象になっても、これで迅速といえるのだろうか・・・?という状態が、依然として続いています。


 最初に対象となったオキサリプラチンは、当時の日本の抗がん剤承認の遅れを象徴するような薬であったためなのか、2005年1月24日の検討会で検討されたあと、3月18日承認、4月6日薬価収載という迅速さでした。

 しかし、それ以外のものに関しては、迅速と呼べるのかどうか、はなはだ疑問です。
 たとえば、その第1回未承認薬検討会議で、迅速承認の対象として検討されたものに、悪性中皮腫治療薬としてのペメトレキセド(商品名:アリムタ)と、多発性骨髄腫の治療薬としてのサリドマイドがありました。

 アリムタは、今年の1月にやっと悪性中皮腫の治療薬として承認されました。
 その間に、アリムタは、欧米先進国だけでなく、世界85カ国で、非小細胞肺がんの二次治療薬として使用されるようになりましたが、日本で非小細胞肺がんに使用できるようになるためには、現状に甘んじていれば、あと2年ぐらいの歳月が必要なようです。

 サリドマイドにいたっては、いまだに承認されていません。
 年が明ければ、会議で検討されてから、4年の歳月が経過することになります。

 未承認薬使用問題検討会議では、会議が行われる直近の3ヶ月間に世界で承認・発売された薬がリストアップされ、重篤な疾患でほかに有効な治療薬がないようなものの場合、優先審査のほうのルートに振り分けられます。
 (初期のころは、有効な治療薬であるにもかかわらず、置き去りにされていた薬がたくさんあったので、検討する薬剤がたくさんありましたが、このごろでは、ここのテーブルに上がるものはごく最近世界で販売されたものだけになってきています)
 この検討会を傍聴する限りは、ここでの振り分けには違和感はないし、検討委員の先生方はとても真っ当な検討を加えていらっしゃるので、そのことに異議はないのです。

 ただ、問題はそのあとなのです。

 優先審査の対象になっても、その薬剤の治験や審査のための準備といった、承認申請のための準備の期間がまずあり、承認申請をしてからも、審査や保険の収載に、早くて1年かかります。
 そして、このごろでは、それが半年以上長くなってきてしまっている印象があります。


 9月21日の日記ブルー小にアップしてある一覧表を参照してほしいのですが、非小細胞肺がんの治療薬として申請されているエルロチニブ(タルセバ)は、このほど承認されましたが、実際の医療機関で患者さんの治療に使えるまでには、あと2ヶ月ほどかかり、現場の腫瘍内科医の先生方は、12月ごろには使えるようになる、と、患者さんに説明していらっしゃるようです。

 申請してから、1年8ヶ月以上かかったということになります。

 タルセバは、2004年11月18日にアメリカで、局所性または進行性の非小細胞肺がんの治療薬として承認されたのが、世界での最初の承認です。2005年には、カナダやヨーロッパで承認されています。
 日本では、2005年7月の第5回未承認薬使用問題検討会議で検討され、それから2年以上が経っています。
 ドラッグラグは、もうすぐ3年です。

 その第5回未承認薬使用問題検討会議では、下の表の5つの抗がん剤が検討対象でした。


成分名(薬剤名)適応部位世界初上市時期日本承認(薬価収載)世界初上市からの差
厚労省HP参照
ベバシズマブ(アバスチン)転移性結腸・直腸がん2004年2月2007年4月(6月)3年2ヶ月
セツキシマブ(アービタックス)転移性結腸・直腸がん2003年12月未承認3年10ヶ月経過
エルロチニブ(タルセバ)非小細胞肺がん2004年11月2007年10月(未収載)2年11ヶ月
テモゾロミド(テモダール)悪性神経膠腫1999年2月2006年7月(9月)7年5ヶ月
ストレプトゾシン膵島細胞がん1992年?未承認(治験準備中)不明

 

 たった5つでも、検討されてから実際に承認されるまでに、かなりの時間を要しています。

 また、日本では、安定供給という前提があり、どんなに対象患者さんの少ない疾患でも、国内の企業が生産・販売するルートがなければ保険承認されません。

 そういう事情があるために、この検討会でも検討された『ストレプトゾシン』は、まだ、治験開始にも至っていません。(やっと開始するようですが)
 膵島細胞がんは膵臓がん患者の中の2%程度がかかる疾患で、ただでさえ進行が早く治験の難しいすい臓がんの中でも、最も難しいタイプであるといわれています。このような稀少な難しいがんに対して、国内で治験をし、治療薬を製造販売するというのは、市場経済から取り残されるのは当然です。

 稀少の難病にはすべて当てはまることですが、対象患者が非常に少なく、治療の難しい進行性の疾患においては、そのような保険システムからは例外的に扱いを変えたほうが、患者さんにとっても保険制度にとっても、良いことなのでは・・・と思います。

 対象患者が国内に数十人とか数百人とか、そういう疾患の治療薬は、研究開発や治験のコストに対する利益がまったく見込めないので、企業は手を出しません。研究者の熱意で薬が出来上がっても、対象患者が少ないので、なかなかデータがそろいません。
 世界規模で見れば、このような場合は、世界中の対象患者さんを1箇所に登録して、国際的な共同研究が行われたりしていますが、日本は、そういうかさの中にほとんど納まっていません。

 また、せっかく治療薬が開発された場合でも、国内での販売のめどがまったく立たない場合がほとんどなので、仕方なく個人輸入して治療したりしますが、この場合は、高額な薬代も治療費も全額自費になります。

 対象患者数の多い部位のがんならば、ドラッグラグがあっても、いつかは承認されますが、稀少疾患の場合は、治療法がなかなかない上に、やっと世界のどこかで治療法が確立しても、それが使えるようになる日が、日本では何十年先になるのか、わからないのです。

 がん対策推進の『意見交換会』でも、『協議会』でも、患者数の少ないがんや、進行の早いがんなどについては、何らかのインセティブをつけて研究することも必要では、という意見を述べましたが、ほとんど棚上げにされているようです。ほえー




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Last updated  2007年10月19日 23時35分48秒
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