謝る
教えてもらいました。その方(Yさん)は専業主婦なのですが、小学生の娘さんのことで悩んでおられました。Yさんの娘さんは、自分に自信を持てないため、友達にはっきり自分の意見を言うことができず、友達づきあいでヘトヘトに疲れていました。そして、次第に友だちと遊ぶことを避けるようになっていったのです。Yさんは、娘さんにきつく当たってしまうことが多く、しょっちゅう叱って育ててきたのでした。その背景を探っていくと、Yさん自身が両親から厳しく育てられてきて、心に傷をたくさん抱えていたのです。Yさんは、自分自身の心の傷に向き合い、癒していくプロセスに取り組みました。その結果、娘さんに優しく接することができるようになったのです。しかし、娘さんにはこれといって変化が見られず、あい変わらず自分に自信が持てないようでした。そしてYさんは、「まだ、娘にちゃんと謝っていなかった」 ということに気づかれました。そして、その日の夜に、娘さんに心から謝られたのです。「お母さんね、以前はあなたのことをいつも叱っていたでしょ。あなたのことを『悪い子ね』とか『ダメな子ね』とか言っていたでしょ。ごめんね。あれは全部、間違いなの。悪かったのは、あなたじゃなくてお母さんなの。お母さんね、自分の心が弱かったから、あなたに八つ当たりしてたの。ほんとにあなたは悪くないの。お母さんが悪かったの。ごめんね」謝りながら涙があふれてきたそうです。そして、それを見た娘さんも泣いたのです。その日からYさんは、毎晩、娘さんが寝入るときに、枕元で次のように謝りました。「あなたは素晴らしい子よ。八つ当たりばかりしたお母さんが間違ってたのよ。ごめんね」まもなく、娘さんに変化が現れました。Yさんに対しても嫌なことは嫌と言えるようになり、さらに、友達と遊ぶ回数も、目に見えて増えたのです。子どもは親の言葉に対して素直だし、無防備です。娘さんは、母親から言われる「悪い子ね」「ダメな子ね」という言葉を鵜呑みにして、自分のことを「悪い子」で「ダメな子」だと信じるようになっていたのです。そして、Yさんが心から謝ることで、娘さんの信じ込みも解け、心も癒されていったのです。「謝る」という行為は、「私はあなたのことを一人の人間として尊重していますよ」「あなたの気持ちは大切にされるにふさわしいのですよ」というメッセージでもあります。また、「謝る」という行為には勇気がともないます。自分の非を認める勇気、自分の正しさを手放す勇気、自分の行動に自分で責任を取る勇気。その勇気の原動力になるのは、「相手の受けた痛みを少しでもやわらげたい」「相手の気持ちを少しでも楽にしてあげたい」という愛だと思います。「ちゃんと謝って、自分自身も罪悪感から解放されたい」という気持ちが含まれる場合もあると思います。いずれにせよ、「謝る」という行為は、自分を癒し、相手を癒し、自分と相手の関係をも癒す力があるのです。では、どんな謝り方がよいのかも考えてみましょう。『人はなぜ謝れないのか 自分も相手も幸せになれる謝罪の心理学』の著者 ビヴァリー・エンゲルは、その本の中で、「有意義な謝罪とは次の3つのRを伝えるものだ」と語っています。1.Regret(後悔)迷惑をかけたこと、傷つけたこと、損害を与えたことに対する「後悔」を伝えることで、反省の深さが伝わるとともに、相手に対する共感も伝わります。2.Responsibility(責任)自分のしたことを誰かのせいにしたり、言い訳したりせず、全責任を認めること。さらに、自分の行為が生む結果に対しても全責任を負うことで、誠意が伝わります。3.Remedy(改善)「事態を改善するための行動」、「同じ過ちを二度と犯さないための解決策」、「相手のこうむった被害を償う行動」などを伝えることで、相手は安心します。たしかに、この3つのRが含まれていると、ちゃんと謝られた気がしそうですね(^^さて、あなた自身は、過去の出来事を振り返ったときに、「あのことについては、○○さんに謝りたい」 と思う出来事はありますか?私はたくさんあります(^^;