何のために
「あなたは何の為に働いていますか?…誰の為に働いていますか?」?「あなたは何のために働いているのですか?」・・・と顧問先の経営者が集まる勉強会で質問をした事があります。多くの人が答えられませんでした。?ところがAさんだけは、ハッキリと答えました。彼の答えは、「おやじの為」というのです。多くの人が自分の働いている理由を答えられない中、彼だけが、「おやじの為」とハッキリ言うのです。なぜ彼は、このように明確に答えられたのでしょうか…??それは、昨年2月にAさんの父親が交通事故を起こして下半身不随になってしまった事がきっかけでした。以後、1年間寝たきりで、まだ入院されていますが、車椅子生活になってしまいました。当時、在庫過多で赤字の時に事故に遭ってしまった為に、Aさんは赤字店舗を全部たたみ10店舗を6店舗にまでしました。そして今年の8月決算をなんとか黒字にしようと計画しています。彼の思いは、会社を潰したくないという事一つです。引き継いだ会社をなんとしても、潰したくないという思いで仕事をしているのです。?Aさんは、もともと音楽をやっていて、ベルリンにいました。そして一生音楽で食べていきたいと、かつては話していました。しかし両親からすると、彼に会社を継いで欲しいという事で、私が彼と話をして意向を聞いた事があります。彼に伝えた事は以下のような事です。?音楽家で一流になるのは大変な事です。絵画の場合は初代でも天才が出ますが、音楽はそうはいきません。音楽をやっている環境で3代続かないと、天才は出ないと言われているそうです。彼の両親とも全く音楽に関係がなかったのです。一代で天才的な人はなかなか出ないといわれます。多少でも、祖父母の代から音楽的な素養がないと、難しいのです。もちろん趣味レベルでやっていくならばいいでしょう。でも仕事にした場合、たいした生活が出来るとは思えません。それは本人が一番知っている筈の事です。一方、父親の会社で頑張れば、少なくとも1000万円や2000万円の年収にはなるでしょう。?Aさんに次のように問いました。?「会社は15億円(当時)の売上があり、経常利益が7000万円出ている。経営者には3000万円の収入があり、そのパスポートを君は持っている。君はこれを捨てて他人に経営権を与えるのか。それとも音楽への道は諦め、宝石店を継ぐのか?」?2度ほど直接会って話をした結果、彼は家を継ぐ事に決めたのでした。その後、事故があり、彼の環境が変わりました。以後、父親から受け継いだ会社を潰さないように全力で頑張り、「誰の為に」と言われたら、即座に、明確に「おやじの為」と言えるほど、私心を捨てて、社長業に没頭しているのです。?これは凄い事だと思います。あなたは、「誰の為に仕事をしているのですか」と聞かれたら「誰の為」と答えられるでしょうか。この「誰の為」の答えが見つからないと「何の為」が見つからず、結果として全力で仕事に打ち込めず、成長を遅らせる事になりかねません。?それでは次に、「誰に勝てれば、あなたは自分の人生に自信を持てますか?」と聞かれたら如何でしょうか?この質問に、ライバルや目標とする人をあげる人もいますが、私は違います。自分が自分に自信を持つ為には、少しキザかも知れませんが、自分に勝つ事です。今の自分よりもっと良い自分を目指す事です。??