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テーマ:スガシカオが好き!(282)
カテゴリ:スガシカオ
【お題】 奇跡 19才 38分15秒 斜陽 夏陰~なつかげ~ タイムマシーン Rush Hop Step Dive 真夏の夜のユメ 7月7日 午後のパレード Progress 今回、かなり長くなってしまいました。^^; ちょっと無理やりな所もあると思いますが、読んでみたい方はどうぞ! 君には高い志があって、僕には夢も希望も無かった19才のあの夏の日。 時々頭ん中でリプレイするんだ。 通勤Rushの地下鉄をすり抜けるように飛び降りる。 冷房が掛かっているのに、汗がにじんでいるのが不快だ。 出口へと階段を駆け上がると真夏の太陽に殺されそうになる。 Hop Step Dive!と真っ赤な文字が角のビルのオーロラビジョンに映し出される。最近よく流れるビールのCMだ。 いくら暑いと言っても朝っぱらからビールなんてキツイな。 そんなこと思いながら会社に向かっているのだが、途中から、今夜はビアガーデンに同僚と寄ってもいいな、と思ったりし始めた。 時計を見ると8時38分15秒をまわっていた。 ゆっくり歩いても間に合うだろう。 すると、またあの日の君がリプレイし始める。 「Purogressって単語の意味、なんだっけ?」 予備校の自習室で君に小声で尋ねると面倒くさがらずに手を止めていつも答えてくれた。 「進行、進展、進歩、発展、向上とかって意味じゃなかった?」 君は医学部を目指して浪人を決め、僕は行く当ても無く仕方なしにここに通い始めた。 3年生の頃は同じクラスだった。校内でもトップクラスの君がまさか僕と同じ予備校に通うことになるだなんて思ってもみなかった。 勉強を教えてもらう為、と君に近づいていたけど本当は憧れていたんだ。 君の真っ直ぐな瞳に。 忘れもしない。7月7日。予備校の目の前の大通りで毎年恒例のパレードが始まった。鼓笛隊やブラスバンド、派手なコスチュームで踊るグループやアニメキャラクターの気ぐるみ、ミス七夕。パレードは午前と午後に分かれていて、予備校か終わる夕方5時に丁度午後のパレードが始まっていた。 何となく、いつも一緒に帰るようになっていた僕達はパレードを眺めながら駅に向かってた。 「ちょっと今夜は寄り道していかない?」 君の思ってもみなかった誘い。僕は嬉しかった。 「ちょうどパレードも始まったしね。」 走り出す君に手を引かれながら人ごみの中、出店をはしごしてたこ焼きやら焼きとうもろこしらや次々に口にほうばんでいく。 君はとても楽しそうに笑った。 別れ際の言葉が今でも耳に残っている。 「また七夕のこのパレード見に来ようよ。毎年、予備校の玄関で待ち合わせしようよ。」 話の流れで冗談のような約束を交わした。 その日の出来事はまるで真夏の夜のユメだった。 あれから7年。 その約束は1度も遂げられていない。 彼女は遠くの国立医大に合格し、僕もそこそこの大学に合格した。 そこで僕らの交流は途絶えた。 毎年気にしながら、来るはず無いと決めていた。 僕に彼女がいたように、君にも彼氏がいるだろうから。 きっと、君は忙しく勉強したり仕事しているだろうから。 だけど、タイムマシーンがあるなら、あの19才の7月7日に戻りたい。 夢も希望も無かったけど、甘くて切なくて、そして純粋だったあの頃に。 そう願ってしまう。 無理だから、いつまでもそう願ってしまう。 外回りから帰る途中、公園の大きな木の下の夏陰で一休みしていると、大通りが騒がしかった。起き上がって覗くとパレードだった。 あぁ、今日は七夕だったのか。 急に胸が騒ぎ始めた。 仕事帰り、丁度また午後のパレードが始まった。 地下鉄にも、ビアガーデンにも向かわず、僕はそのままパレードの流れに沿って大通りを歩き始めた。19才の頃通った予備校はこんなに近かったのに、どうして今まで一度も行かなかったのだろう? 途中、よく通った古本屋に辿り着く。店先に置かれた太宰治の「斜陽」が目に入った。今更太宰治は読まないけれど、なんだか懐かしい。もうすぐ予備高の前だ。不思議な事に胸騒ぎはおさまって静かで冷静な気分だ。 人を掻き分けるように一歩ずつ近づいていく。 もし、君がそこにいたら奇跡だ。 いや、それは僕達の必然かもしれない。 予備校の前、僕が辿り着くと、そこには君がいた。 君が微笑むと、僕の予感が弾けた。 PARADE編でした。 もうちょっと違うバージョンもあったのですが、これをUPしました。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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