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小出裕章先生へ一問一答の続きです。
Q 福島原発から放出された放射能の量はどのくらいですか? 京に換算すると、何京ですか? A 日本政府がIAEAという機関に報告書を出したんですが、どれだけの放射能を放出したかというその数字が出ています。私が大切だと思っているのはセシウム137の数字ですが、広島原爆は8.9×10の13乗ベクレルです。それで福島第1原発は、1号機が5.9×10の14乗ベクレル(590兆ベクレル)、一番悪かったのは2号機で1.4×10の16乗ベクレル(1.4京ベクレル)、3号機は7.1×10の14乗ベクレル(710兆ベクレル)で、全部合わせて1.5京ベクレルくらいです。広島原爆の約170倍です。 Q 原発事故の収束の見通しについて、どのようにお考えですか? A 正確な知識が得られないから、どうなっているか分かりません。例えば、火力発電所なら簡単です。爆発しても、地震でひっくり返ったとしても、そこに行って見ればいい。どこが壊れたか、修理ができるのかどうかを見て直せばよい。でも、原子力発電所の場合は、壊れちゃったら現場に行かれない。その上、計測器が壊れて誤信号を送っているわけですから、本当に今、どうなっているのか分からない、そういう状態です。 この事故は、発電所全体が全所停電…、ブラックアウトしたことが原因で起きました。全所停電するとどうなるかというと…、原子炉というのはいついかなる場合でも常に必ず冷やしておかなければいけないという機械なんですけれども、冷やしておくためには水が要る。水を循環させるためにはポンプが要る、ポンプを動かすためには電気が要る、というわけですが、一切の電気がなくなっちゃったわけなので、ポンプは動かないし、水も回らない、水源すらもなくなっちゃった、という状態。それが一週間くらい続いたわけです。敵味方で言えば、敵は原子炉なんです。生き物ではないけれどどんどん動いて、能動的に放射能をばら撒こうとしている。それに対するのは東京電力で、私と東京電力は本当は敵同士ですが、原子炉との戦いでは、原子炉が敵で、東京電力はこちら側(味方)です。 で、その東京電力がすべての、戦う武器を奪われちゃった。放射能と戦うための力を奪われてしまって、どうにもならないまま、事故が進行していって、放射能が大量に出てきてしまったわけです。でも、今は電源が回復している。だから、東京電力は山ほど武器を持っている。敵と戦うための武器は手に持っているんです。ただし、戦場が荒れ果てているわけで、武器を行使することもできないまま、今立ち止まっているわけです。でも少なくとも武器は持っているわけで、これ以上悪い方向にいかせないことは、私はできるだろうと思っていて、東京電力に何とか頑張って欲しいと思っています。これ以上の放射能放出をしないで欲しいと思っているわけです。たぶん、できる可能性が高いと思っています。でも、絶対に勝てるという確信は持てないので注意はしておかなければいけないと。絶対に安心できる日がいつ来るかというのは分かりません。 これからは、大量の放射能が出てくるかどうかを注意して見ていく必要はありますが、その可能性が高いとは思わない。 Q では、万が一、また大量の放射能が放出される事態になれば、特に子どもはすぐに避難したほうがいいんですよね。 A そう思います。3月11日に事故が起きて2週間くらいの間にほとんどの放射能が放出されたんですが、その期間は本当なら子どもは逃げたほうが良かった。ただ、日本の国はそういう情報を流さず、秘密にしていたんです。だから、子どもも逃げることができずに被ばくさせられてしまった。 Q この2週間の間で、逃げられなかった人たち、例えば飯舘村の人たちはどのくらい被ばくしたのでしょうか? A これが3月11日から24日までの記録ですが、(と表を見せながら説明。その表は甲状腺被ばくの数値が書かれていて、100ミリシーベルトの数字があった) これは甲状腺のみの数値なので、全身の被ばくとは違います。ですから、加重係数でいって0.01ミリくらい、全身に換算した危険度としては数ミリシーベルト分の被ばくです。 2週間足らずで、飯舘村、浪江町、南相馬市の半分も100ミリシーベルトを超えている。もっと(原発に)近い双葉町や大熊町に行ったらすごいです。何千という・・・。避難をしたのは12日になってからですが、12日の(午前)6時から被ばくが始まっているので双葉町や大熊町の人たちはもっと被ばくをしてしまったと思います。5千とかね。(※5千の甲状腺被ばくなので、全身被ばくに換算すると100分の1。わずかな間で50ミリシーベルト分の被ばくをしたことになる)。これだけの被ばくをさせられてしまったということです。これからもう一度大量の放出があればこういうことが起きるわけですから、なるべく早く逃げたほうがいいと思います。 Q でも今、こういう地域に住民を戻そうとしていますよね。 A 戻そうとしているのは緊急時避難準備区域ですね。 Q 戻るのは良いことですか? A 良いわけないでしょう。 1平方メートル当たり4万ベクレル以上が放射線管理区域です。これを超えている物は、管理区域から外へ出してはいけないと決められている。それが日本の法律です。福島県の東半分全域が1平方メートル当たり6万ベクレル超えています。茨城県、群馬県、栃木県も(放射線管理区域相当に)みんな入ってる。 本来なら、(放射線管理区域に入るような)こんな場所に人を住まわせるなどあり得ない。 Q でも、これらの地域の人々が全員避難するとしたら、大変なことになりますね。 A だから国は、もうどうしようもないからと住民に被ばくを強制することに決めたのです。本当なら、こういう場所に人が入ったらいけません。 Q 日常生活の注意点を伺います。部屋の窓を閉め切ったほうがいいですか? A 今の時点ではそれは意味がない。窓を閉めるのは空気が汚れているとき。窓を閉めなければならないほど空気が汚れていたのは3月中旬頃でした。 Q 空気清浄機は使ったほうがいいですか? A 空気清浄機の性能がどこまでなのか、分かりません。ただ、今の時点では、空気清浄機を使うほどの空気の汚れはないと思います。 Q 部屋の掃除について気をつける点は? A 要するに放射性物質とは、皆さんの目に見える形としては「汚れ」なんです。(泥やホコリなどに放射性物質が付着している) ですから、掃除機やハタキなどでホコリを舞い上がらせるようなことはしないほうがいい。雑巾で拭いたほうがいいですね。 Q 洗濯物を外に干すことについては? A 今の時点(の空間線量)では外に干さないほうがいいというほどではない。洗濯物はやはりお日さまに干したほうがいい。ただ、風が強い日などに土ホコリが舞い上がるような状態のときは(外に干すのは)避けたほうがいいです。 Q 食品の放射能についてですが、3月頃にはほうれん草の放射能汚染が問題になりました。洗えば落ちると国は言ってましたが。 A 私は、放射能が葉に付着した小松菜を洗って、測ってみましたが半分しか落ちていませんでした。 Q それはなぜですか? A 野菜は生きていますから、降ってきた放射能を自分の中に取り込んでしまったのかもしれません。(植物の中に)取り込まれたものは洗っても落ちません。 Q 現在ではもう上から降ってくる放射能は少ないですよね。今は土に混じった放射能を根っこから吸い上げるわけですね。汚染野菜の放射能を減らす方法はありますか? A 今度は小松菜を煮てみました。煮汁には少し移ります。(4割ほどが煮汁に移る) Q では、生で食べるよりは煮たほうがマシですね。 A 完全には落ちませんが、それで納得できるならそのほうがいいですね。 Q お米を研ぐときに、水道水ではなくミネラルウォーターを使ったほうがいいですか? A 人間という生き物は、あまりにもエネルギーをたくさん使いすぎてしまった。それが今度の事故を招いた。その末路が今だと思います。ですから、これからはもっと、自然に寄り添う生活をして生きるほうが良いと思います。水は水道の水を使えば良いと思います。ペットボトルの水を買ってきて米を洗うなど、そんな不自然なことをしてどうするんだと思うわけです。 Q そういえば、スーパーで水を大量に買い込む主婦を見かけますが・・・ A 私は、そういうのはやり方を間違えていると思います。赤ん坊のミルクを作るならともかく、大人が米を食べるときに、ペットボトルの水を使うなど・・・。 要するに、これからどういう世界を造っていくのか、ということを問われているわけです。だから、ペットボトルの水で米を研ぐような世界は、私から見たらおかしいと思います。 でも、子どもは守らなくてはなりませんから、子どもを守るためなら、そういう選択肢もありだと思います。 Q 今、子どもが自然の中で遊ぶことが危険な環境になってしまいました。例えば泥んこになって遊んだり、どんぐり拾いをしたりなど、させても良いものでしょうか? A 私は、子どもは泥んこになったり、どんぐりを拾ったりして遊ぶべきものだと思っています。私の子どもが今もし、小さい子だったとしたら、私は遊ばせると思います。 Q それは被ばくを覚悟の上でですか? A もちろんです。もう、この世界で生きる以上は、被ばくは仕方がないのです。そういう世界で生きるときに、どういう覚悟を持って、どういう世界を造っていきたいのかと、構想するしかないのですね。 もちろん子どもは守りたいですが、泥んこ遊びもさせない、草にも触らせないなど、そんなことをしたら子どもがおかしくなると思います。 Q そんな中、沖縄に移住することを選択する人もいますが。 A すべての人が移住できるわけではありません。ほとんどの人がその場所で生きなければならないわけです。それでも、子どもが遊ぶ場所の除染などできることはあるわけです。汚れた土をはぎ取って、子どもには泥んこ遊びをさせる、ということをやるべきだと思います。 Q 子どもが行かないほうが良いのはどういう場所ですか? A 例えば、水たまりなどは被ばくをします。今降った雨はそれほど汚れているわけではありません。汚れた地面を流れてたまった水は汚れています。また、水たまりになりやすい場所の土は高濃度の放射能が残っています。そういう場所で遊ばないようにと子どもには教えることです。 Q 雨は今はそれほど汚れてはいないと? A まったく汚れていないというわけではありませんが、3月の頃に比べたらきれいになっています。雨にはなるべくぬれないほうが良いのはもちろんですが、そういうことを気にしすぎていたら子どもは外で遊べない。多少はぬれるのは仕方がない。その代わり、雨にぬれて家に帰ったら、服を脱いでシャワーを浴びさせるなど親が気をつける必要があります。 Q 植え込みなども子どもが好んで入っていく場所ですが、放射線量が高そうですね。 A そうですね。でも、(除染は)できないんです。学校の校庭とか幼稚園の園庭とか、家庭の庭などの土を取り除くことはやるべきだし、できます。でも山の木の下を除染したり、公園の土を(樹木、植え込みも含めて)全部はぎ取るなどできないんです。国は除染といってますが、(完全には)できないと思います。しかし、できないと思いながらやるしかない。でも、子どもが遊ぶ場所についてはできる限りやるべきだと私は思います。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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