MOTO GUZZI V7Racerはこんなバイク
2009年ミラノショーで発表され、2011年(平成23年)に発売された実質V7カフェの後継機種にあたる。最高出力40.1HP/6,250rpm 最大トルク50Nm/3,600rpm タンク容量17Lであった。2013年(平成25年)にエンジンの70%に新たな部品を使用してモデルチェンジされた。これに伴い、最高出力50HP/6,200rpm 最大トルク60Nm/2,800rpm タンク容量22Lにスペックが増大した。2014年(平成26年)にはマイナーチェンジが行われた。主な変更点は、ゼッケンプレートのグラフィック変更、サイドカバーのカラー変更(シルバー→ブラック)、ミラーのカラー変更(クローム→ブラック)、シートのレザー色変更(ブラック→ブラウン)、ホイールリムにMOTO GUZZIロゴステッカーの追加、オルタネーター及びカバーの変更。2015年(平成27年)にはV7/2が発売され、ABS、トラクションコントロール、6速が追加されたが、最高出力が48HPにダウンとなった。V7Racerの主な装備はクロームメッキのタンク、ピレリのタイヤ、Bitsuboのリアサス、Bremboのブレーキ、シングルシート、アルミ製バックステップなどで、特徴としては縦置きVツインOHVエンジン、シャフトドライブ、車体は実にコンパクトで400cc並である事であろうか。馴らし運転の1,000km走行が終わったので、このバイクの感想を書いてみよう。エンジンVツインOHVは鼓動感があり、「仕事をしているな」と感じさせる。この感覚のあるエンジンは国産で殆どないだろう。特に80km/h位までが一番美味しい所だ。低速でギアを5速に放り込んだまま、アクセルをジワリと開けて行っても粘り強く、更に鼓動が増してくる。モーターの様に回るマルチエンジンとは明らかに異なるフィーリングである。馴らし中であったので上限4,000回転までしか回していないので、それ以上の上がり具合は分からないが、レスポンスは予想以上に良いと思った。まあ、回して楽しむというエンジンではないので、何回転で頭打ちになるなどと言う事はどうでも良い事だ。マフラー最近のバイクの特徴として排ガスと騒音規制のためにバカでかく、異形のマフラーが多い中、このバイクのマフラーは大きさ形共に申し分無くデザイン、質感も素晴らしい。音量と音質については試乗時にはショボイと思っていたが、W800などよりは音量と音質共にかなり良い。あまり音量を大きくすると、エンジンのドコドコ音が消されてしまうかも知れないので、これでも良いような...。だが、もう少し重低音でパンチの効いたアゴスチーニのマフラーを付けてみたいような....。シャフトドライブシャフトドライブのバイクに乗るのは初めての経験である。巷では走行フィーリングがチェン駆動とかなり違うなどと言われているが、乗った感じではチェン駆動と大きく変わるように感じる事はない。確かにバイクを駐めた状態で、ニュートラルに入れてアクセルを煽るとブルブルと右に傾こうとするが、走り出すと右に傾くような挙動は感じられない。それよりも、発進時にアクセルを開き気味でクラッチを繋ぐとリアタイヤが浮き上がるのだ。初めて遭遇した時、この現象は気味が悪かった。走行中はアクセルを開けても大丈夫である。シャフトドライブの癖はあるのだが、チェン駆動に比べて大きなマイナス点となるような事ではなく、それよりもメンテナンスフリーとBMWと同様これが味となってのプラス点の方が大きいように感じる。クラッチ乾式クラッチのバイクに乗るのもこれまた初めてである。巷では湿式と違って半クラッチがやりにくくスパッと繋がるなどと言われているが、クラッチ操作にそれ程神経を使うような事でもない。エンスト防止の為に発進時に多少回転を上げ気味で繋いだ方が良いという程度で、走り出したら湿式と同じようなものだ。ただ、私の場合クラッチを繋ぐ時に半クラの時間が短くポンと繋ぐ癖があるので、余計に違和感が無いと思うのかも知れない。サスペンション最初のツーリング時には前後共硬い印象が強かったが、1,000キロ走った現在ではサスが馴染んだのか、慣れたせいもあるのか、当初のような硬さは感じられない。リアをもう少し柔らかく調製しても良いような....。シフトこのバイクの不満点でよく言われるのが、1速のシフトがやりにくい。と言う事である。確かに他のバイクと比べて1速に踏み込むストロークが大きくフニャフニャ感があり、ギアが入っているのか、いないのか分かりずらいのである。入れたつもりが入っていない事もあるので、その場合はクラッチ操作で確かめる。この点は改善して貰いたいのだが、構造上難しいのかも知れない。ただ、色々な古いバイクに乗ってきた経験上、今の最新バイクと比較しての話しであり、昔のバイクではもっと酷い物もあった。1速の問題はあるものの、慣れればどうと言う事でもないし、ニュートラルを探しにくい事もない。1速以外は普通にシフトできる。ブレーキフロントはBrembo製が付いているがリアはロゴも無く不明。怪しい。中華製だろうか?フロント、リア共にシングルディスクなので、最近のスポーツバイクのようにガツンとは効かないが、不安を感じるようではない。必要にして十分と言う所だろうか。所有するバイクが古い物ばかりなので、私には凄く良く効くブレーキで所有するバイクの中で一番良く効く何の問題もないブレーキと思える。ハンドルV7Racerはセパハン風ハンドルが標準である。セパハン風と言うのは、普通のセパハンはフロントフォークにハンドルを直接取り付けるのであるが、このバイクはフロントフォークに取り付けるハンドルにステーが含まれており、ハンドルの高さがトップブリッジより高めにセットされるようになっている。従って通常のセパハンよりはハンドル位置が高いのである。この絶妙な高さがRacerを選んだ理由の1つでもある。このタイプのバイクのスタイルを見るときセパハンは美しい。しかし、長距離ツーリングではきっと手首が痛くなるだろう事は予想できる。スタイルは崩したくないが、なるべく手首が痛くなく、過度の前傾姿勢にならないで済む高さだと思えたのだ。最初のツーリングでは1時間も走ると手首が痛くなり、1日走ってみると長距離ではもう少しハンドルが高い方が楽だと感じた。それから500km走ったのだが、手首の痛さが大幅に軽減され、ハンドルの低さも気にならないようになった。バイクに体が慣れたのだ。バイクは趣味の乗り物である以上、美しくなければならないのだ。メーター右がタコ、左がスピードの2連メーターは黒い文字盤にホワイトの文字でオーソドックスで視認性も良い。多分回らないであろう1万回転表示のタコと絶対無理な220km/h表示のスピードメーターは雰囲気だけで十分である。タコの中にはデジタルの時計と温度計が仕込まれていてパネル上のボタンで表示を切り替えるようになっているのだが、デフォルトが温度計。一旦エンジンを切るとデフォルトに戻ってしまう。スピードの中には同じくデジタルのオドとトリップが仕込まれていて、同じくボタンで表示を切り替えるようになっているのだが、デフォルトがオドメーター。一旦エンジンを切ると同じくデフォルトに戻ってしまう。イタリア人の頭の構造はどうなっているのであろうか。日本人が作ると絶対にデフォルトを視認頻度の高い時計とトリップメーターにする筈である。メーター中央上部には各種の表示ランプが付いているが、ウインカーランプは1つしかないので右が点いているのか、左が点いているのか分からない。昔のバイクは1つだったが、2つのランプに慣れていると不便に思える。燃料コックなどが無い代わりに残量警告ランプが付いているのだが、22Lのタンクに対して残り10L位で点灯する。イタリア人は用心深いのか臆病なのか、タンクの半分弱の残量で警告表示が出るのは早過ぎる。給油のタイミングは距離を目安にした方が良さそうだ。更に燃料を満タンにしても残量警告ランプが暫く消えない。店主が言うに日本のバイクはフロートで残量を計っているが、MOTOGUZZIは圧力か何かで計っているらしいとな。イタリア人の考える事は益々訳が分からない。