信長の棺
武蔵に続いて読んでみました。この作品は前にテレビドラマで見て結末は知っていたので、本能寺に向かうまでの明智光秀の行動に興味がありました。中でも興味深いのは、本能寺の黒幕は誰か?という事です。さまざまな諸説がありますが、どれも決定的なものはないのが現状です。この作品では朝廷説が有力みたいですね。果たして綸旨は出されていたのか?少し前の安土城の発掘では、城跡の柱の並びが内裏とそっくりになっていたそうですが、そのせいで信長が天皇を安土に招こうとしていたのではないか?と言われています。信長ならやりそうですよね。本能寺の変がなかったら実行していたと思いますよ。もしそうなら、今の世の中が変わっていたかもしれませんね(^^)天皇は昔から京にいてこそ天皇だ!と言われています。京から出るということは、権力も失墜する事を意味しています。必ず阻止しようという動きは出てきますよね。そう思うと朝廷が光秀に働きかけたのも納得する理由がありますね。光秀なら動くかもしれません。しかも、秀吉が尻馬に乗ってるし、家康も何らかの情報をつかんでいるようだし。知らんかったのは信長本人だけかいっ!!案外諜報戦には疎かったのかもしれないですね。私はイエズス会説を支持してるのですが、この本ではイエズス会は協力者に近い感じがしました。当時九州がキリシタンの国になっていたというのは、同感です!さて、本能寺前の光秀の行動を突き止めようとする牛一ですが、その日の天気や月の出が描かれてないのは残念でした。この本にも暦と天皇の権威が発端のように描かれていましたが、6月2日は旧暦では月は出てなかった事や、土砂降りの雨だったなど、愛読書の井沢元彦氏「逆説の日本史」ありましたので…。だんだん核心に迫りくるドキドキする展開でしたが、終盤はどうも話がうますぎると思いました。そんな当事者の爺さまが偶然にも紹介された身内だった…なんて。そこらへんが落とし所だったのかもしれませんが…。主人公太田牛一の信長観は、私と近いものがありました。確かに、残虐な面もあり性格には難ありで、仕えていても気が休まる時がない人だったかもしれないですが、関所の廃止など新しきを取りいれる事や、能力主義、そして中でも作家の塩野七生氏がおっしゃている「信長の比叡山焼き討ちが、日本人の政教分離を果たした」という面が素晴らしいと思っております。私も牛一に負けず劣らず信長マンセーですね(笑)しかし、牛一さん!都合の悪い事は「そんなの信長様じゃない!」と公記から削除しようとするのはダメですよ。物書きは真実を追求しなきゃ。などと言ってると、いろんなエピソードが「信長公記」に書かれてない理由が出来ないですものね!!