ベルリン国立バレエ「ニーベルングの指環」Part3
ベルリン国立バレエ「ニーベルングの指環」Part3第3夜 「神々の黄昏」アルベリヒ。暗い思いを抱いて、人間のグリムヒルデ(バーバラ・シュローダー)に近付く。グリムヒルデは片方がトウシューズ、片方がハイヒールという、ありえない格好。当然トウの方だけで立つポーズが多くてすごく難しそうだった。丸い台形の台の上に座っているグリムヒルデ、長い毛皮をまとっている。2人が踊り終わってはけるとき、その台がやおら立ち上がって歩いていったのにはちょっと笑った。アルベリヒとグリムヒルデの子供はハーゲン(ヴィスラウ・デュデク)。まがまがしい~ 狂犬のような男。すごい表情。アルベリヒはハーゲンを操って自らの復讐を果たそうとしている。ハーゲンのソロが長くて、頭が文字通り真っ白になった。もう始まって4時間だよ~ もうそろそろ時計を見始めてしまった。早くこの苦行から解放してくれ!愛し合うブリュンヒルデとジークフリートだが、ジークフリートは武者修行に出る。ギーヴィッヒ家では時が流れて、グリムヒルデが年をとって、車椅子に乗っている。その子供のグンターとグートルーネはいまだに独身。母親は困っていた。そこでハーゲンは一計を案じる。ジークフリートをグートルーネと、グンターをブリュンヒルデと結婚させようというのだ。世間知らずのジークフリートは忘れ薬を飲まされて、ブリュンヒルデのことをすっかり忘れてしまう。そしてグンターに変装して、ブリュンヒルデを襲い、自分がブリュンヒルデにあげた指環を奪った。ブリュンヒルデは捕らえられ、腕をつかまれ、グンターに無理やり連れてこられる。ハーゲンの元にアルベリヒが現れ、指環を手に入れるように命令する。あまりしつこいんでついにはアルベリヒを殺してしまい、屍骸を足で蹴ってごろごろ転がして行く。ブリュンヒルデは捉えられつれて来られる。ここでブリュンヒルデは白いスカートに白い高いハイヒールを履いている。ジークフリートはグートルーネとワルツを踊っている。ブリュンヒルデの怒りが爆発する。恥知らずのジークフリート!グンターとブリュンヒルデとハーゲンはジークフリートを殺すことで意見が一致する。そんなことも知らないジークフリートは楽しくラインの乙女たちと戯れている。ラインの乙女は告げる。「でも、あなた、きょう死ぬのよ~」「あっはは…」死んだ者たちが、ジークフリートの前に現れる。不吉な予言。少年のジークフリートが現れる。少年のジークフリートは黒い目隠しをして現れる。目が見えない。目隠しをとって、オケピのところで死んでいる少年ジークフリート。ハーゲンと部下の兵隊の踊り。ほんとに兵隊さんなのよ。頭にコンバットのようなヘルメットをかぶって。下は迷彩服のような。なんかノイマイヤーの「オデュッセイア」みたいだなあと。ハーゲンは部下の軍勢を引き連れてやってくる。ハーゲンの部下の槍に捕らえられたジークフリートをハーゲンは背後から刺し殺す。ブリュンヒルデは怒りに燃えて、すべてを焼き尽くそうとする。ローゲを呼ぶ。ローゲとブリュンヒルデのワルツ。これ、すごかった~!ワーグナーの歌で、ぜんぜんテンポが違うのにものすごい速さでアイスダンスのような華麗なステップを踏むのだ。すごい!もうマラーホフとヴィシニョーワの2人の世界に完全になっていた。美しい!ローゲはブリュンヒルデを邪険に扱うが楽しんでいるよう。世界が崩壊する。高みの見物をしていた神々のヴァルコニーが落ちてくる。ワルハラは破壊され、壁が真っ二つに裂ける。この壁は、雷が落ちたかのように、何度もひびが入っていた。この伏線だったのだ。スモークが立ち込める。全員が舞台に登場し、座り込んだまま寝ている。一人たっているさすらい人。さすらい人は一人舞台の奥に去っていく。全幕了。カーテンコール巨人族のファフナーとファーゾルトが竹馬から下りて歩いて出てきたので「誰?」と最初思ってしまった。舞台上では怖く見えたが、素顔は可愛い若者。神々が最初、ヴァルコニーに立っている時と同じの、いわゆる神々の暑苦しい服装で出てくる。ひげとか被り物とかすごくて、ある意味笑える。それが2回目のコールでは、踊りの時の衣裳でみなさん出てきた。そうよ~これでないと! 美しいドンナーとフローに釘付けですわ。カーテンコールの一番最後のヴァージョンの、最後の組は、ヴィシニョーワ、マラーホフ、ミカエル・バンツァフの3人だった。やはり青年のジークフリートが主役3人の中の一人なのだなと思った。すばらしかったもの。カーテンコールも普段よりは短めだったと思う。何しろ持久戦で、座って見ているだけの客がこんなに疲れるのだから、ダンサーは死ぬほど疲れているだろう。ずっと出ていたアルベリヒとかローゲ、ヴォータン(ドゥビニン)、弁者はほんとくたくただろう。お疲れさまでした!!私はちなみにきのうは一日中ゾンビでした。最初にも書いたが、この作品の主役はブリュンヒルデですね~なにしろ、ヴォータン、ジークフリート、ローゲとの、もっとも主要な美しいパドドゥはすべてこの人が踊っているのだから。ディアナ・ヴィシニョーワは、燃え盛る炎のような、激しい気性の女でありながら、情に厚く、自分の信念をつらぬいて、愛する父の信頼や神性を失ってまで、愛を貫き通す、そんなブリュンヒルデそのものだった。可憐で小さいが、筋肉がすごい! マッスルな女だった。弁者はめっちゃうまくて、喋っているだけでなく、踊ったり、芝居に絡んだりするのだ。それはピアノ奏者のエリザベット・クーパーも同じ。めっちゃ芝居に絡んでいる。さすがだー。そういう舞台を創造したベジャールもすばらしい。ワーグナーの作品が面白いのは徹底的に光と闇、善と悪を対照的に描いているところ。ベジャールもよくわかっていて、人物の造形が実に特徴的。美しいものは美しく、醜いものは醜い。そして美しいほど人間味がなく、醜いほど、感情移入してしまうのだ。ミーメは最高だった!