独演 望月哲也 シューマン尽くし
Tetsuya Mochizuki, tenor gave a recital specialized in Schumann Lieder with the pianist Mariko Sano at Nippori sunny hall in Tokyo 22nd Jan. 2016.Photo:©Shevaibra, courtesy of the artists日本声楽家協会第96回 独演コンサート 望月哲也(テノール)2016年1月22日(金)19:00 日暮里サニーホール 望月哲也(テノール)佐野まり子 (ピアノ)R.シューマン作曲R. Schumann リーダークライス 作品24 Liederkreis. Op.24 リーダークライス 作品39 Liederkreis. Op.39 詩人の恋 作品48 Dichterliebe Op.48***いつも望月哲也さんの芸術活動を見て思うのは、天才だ!ということです。必ず新しいことを高い次元で挑戦します。彼は自分にそれを課しているのです。例えば、リーダークライスのOP39 はとんでもなく難しい作品です。難しいほど彼にとっては好餌のようです。レガートで歌いました。オペラと同じようにレガートで歌い、肺活量の大きさをあからさまではなく示していました。低い音から高い音まで、抜群の表現力で美しく歌います。詩人の恋は暗譜で間を一切空けずまるで一つの曲のように歌いました。オペラティックで独特の感情移入で歌い、爆発的発声や華麗なヴィヴラートのかかった高音もちりばめられ リートというよりまるでオペラのシーンのよう!ドイツ語の美しさは筆舌に尽くし難く、明瞭で聞き取れるアクセント。彼はシューマンを歌うために生まれてきたのか!とすら思ってしまいました。ぜひCD出してください。完売でしたが マエストロ河原もお見えになっていました。***Liederkreis, Op. 24, I. Morgens steh’ ich auf und frage毎朝起きると自分に訊ねるII. Es treibt mich hin, es treibt mich her私はいらだって歩き回る速い!お得意ですね。テンポのオン&オフIII. Ich wandelte unter den Bäumen木陰を歩いたらゆったりと語る。すばらしい!うっとりIV. Lieb’ Liebchen, leg’s Händchen aufs Herze meinいとしい人、君の手をV. Schöne Wiege meiner Leiden私の悲しみの美しいゆりかご歌詞が文頭韻を踏んでいるそしてDoch!Doch du drängst mich selbst von hinnen激しく強調さすが望月哲也最後に冒頭部分をリピートすばらしい~VI. Warte, warte, wilder Schiffsmann待て、荒々しい船乗りよWarte!とアクセント強調Ei, mein Lieb, warum just heuteオペラティックに歌う 恋人に歌いかけるようにDu brachst’st beides, Flamm’ und Tod.Tod(死)を鋭い高音!VII. Berg’ und Burgen schaun herunter山と城が見下ろしているすばらしい~ すてきな曲だ。Rings umglänzt von Sonnenschein.VIII. Anfangs wollt’ ich fast verzagenはじめから望みもなくAnfangs IX. Mit Myrten und Rosenミルテとバラを持ってMit Myrten und Rosen, lieblich und hold,Mit duft’gen Zypressen und Flittergold,高い音程 すばらしいDu süßes Lieb im fernen Land.拍手***日本語のトークはいっさいなく次の歌曲集に突入。さきほどのOP24はハイネの歌詞でまさに「詩的」で曲もロマンティックで美しく短い。哀切ながらも美しく愛らしい趣き。しかしOP39はアイヒェンドルフの詩で、非常に象徴的で、自分の見た幻影を詩にしていて何かを象徴しているのだがそこが謎に包まれている。曲調もがらっと思索的になる。これを望月哲也がどう歌うのか?興味津々であったが…I. In der Fremde異国にてWie bald, ach wie bald kommt die stille Zeit,da ruhe ich auch, und über mirレガート。音を伸ばす伸ばす。さきほどの明確な短さとがらっと変わる。歌い方さえ変えているのだ。II. Intermezzo間奏曲Dein Bildnis wunderselig.Mein Herz still in sich singet幸せそうに歌うIII. Waldesgespräch„Es ist schon spät, es ist schon kaltこの曲は魔女ローレライと男との対話形式になっている最初女性はしおらしく本性を隠している。しかし男性が正体を見破ると…恐ろしくなるEs ist schon spät, es ist schon kalt,二回目の spät を爆発的な発声で歌うIV. Die StilleEs weiss und rät es doch keiner軽やかに歌うV. Mondnacht月の夜Es war, als hätt’ der Himmelすばらしい!この曲もレガーーートで歌うすごくゆっくり歌うのですごい肺活量を使っているVI. Schöne Fremde美しい異郷Es rauschen die Wipfel und schauern,前半に高い音程あり前曲とがらっと変わって、情熱的に激しく歌う。VII. Auf einer Burg城の上でEingeschlafen auf der Lauerこれもおとぎ話のような一節重々しくゆっくり低い音程があるund die schöne Braut, die weinet.VIII. In der Fremde異郷にてIch hör’ die Bächlein rauschen,und ist doch so lange tot.激しく!IX. Wehmut哀愁Ich kann wohl manchmal singen,ゆっくり自問するように歌うX. Zwielicht黄昏Dämm’rung will die Flügel spreiten,ここの鹿のエピソードも非常に象徴的でメルヘンのようであるが現実にかけているんですよねhüte dich, sei wach und munter.非常に哲学的な世界に突入しているヘルマン・プライが唯一歌わずしゃべるように歌っていた部分、やはり望月氏もささやくように歌った!XI. Im Walde森でEs zog eine Hochzeit den Berg entlang,und mich schauert’s im Herzensgrunde.すばらしい!XII. Frühlingsnacht春の夜Überm Garten durch die Lüfteすばらしい!„Sie ist deine, sie ist dein!“大拍手!!ここで一言も発さず休憩へ第二部いよいよ詩人の恋、再び!これはもう暗譜。譜面台も楽譜もなく彼はピアノの横まで行ってみたり自由に歌うRobert Schumann / Heinrich HeineDichterliebe, Op. 481Im wunderschönen Monat Mai美しい五月に美しい2Aus meinen Tränen sprießen僕の涙から3Die Rose, die Lilie, die Taube, die Sonneバラ、ゆり、鳩、太陽テンポが速い!さすがの展開だ4Wenn ich in deine Augen seh'君の瞳を見つめる時すばらしい!もちろんこの歌詞はルネ・パーぺが歌ったときからハートにドキュンなんですよね!客の目を見てDoch wenn ich küsse deinen Mund,はないわ~~歌詞の効果を考えて歌ってるMundと発するときの歌い方、口の形がまたセクシーで困る。こういうのは天性のものなのか。so muß ich weinen bitterlich.5. Ich will meine Seele tauchen僕の魂をひたそうIn wunderbar süßer Stund’.6. Im Rhein, im heiligen Stromeラインの聖なる流れの重々しくDie Augen, die Lippen, die Wänglein,7. Ich grolle nicht僕は恨まない低い音から高い音にしだいにあがっていくとともに情熱も高まっていく。Ich sah, mein Lieb, wie sehr du elend bist.すばらしい!やっぱりオペラ歌手だ~激しく情熱的で8. Und wüßten’s die Blumen, die kleinenWie tief verwundet mein Herz,心の中にどんな深い傷があるかをあの小さな花が知ったならNur eine kennt meinen Schmerz;9. Das ist ein Flöten und Geigenあれはフルートとヴァイオリンすぐにこの曲に移る速い!Dazwischen schluchzen und stöhnen熱い!10. Hör’ ich das Liedchen klingenDas einst die Liebste sang,かつて愛する人が歌ったあの歌を聴くとゆっくり哀しく11. Ein Jüngling liebt ein Mädchenある若者が娘に恋をしたいたずらっぽく軽やかに冗談めかす12. Am leuchtenden Sommermorgen明るい夏の朝に夢を見ているのだ花々が話しかけてくる"Sei unsrer Schwester nicht böse,優しく「花の声」を表現する13. Ich hab’ im Traum geweinet僕は夢の中で泣いていた夢から覚める悲しい14. Allnächtlich im Traume seh’ ich dich毎晩夢で僕は君に出会いメロディアスすばらしいUnd’s Wort hab’ ich vergessen.印象的。15. Aus alten Märchen winkt es昔話の中からAh~~~~!すばらしい!Doch kommt die Morgensonne, Zerfließt’s wie eitel Schaum.ここで我に返る目が覚めるのだその表現が秀逸!16. Die alten, bösen Liederあの昔の嫌な歌すごい!Wißt ihr, warum der Sarg wohl So groß und schwer mag sein?音程を一気に上げる!すばらしい~ピアノの後奏が夢のように続くここ大好きです大拍手!!本当にすばらしいシューマンの世界。また聴きたいです。トーク:(メモを元に記述)望月哲也:僕はオペラを歌うことが多いのですが、リートやコンサート、宗教曲の演奏を積み重ねていくことで歌はうまくなっていくと思う。ドイツリートの歌唱もイタリアオペラの歌唱にいい影響を与えると信じてやっている。ウィーンに10年超えるが一年に何回かリートをリサイタルでやっている王子ホールでやってきたがしばらくお休みをして新しい企画をそのうち発表できると考えているので楽しみにしてください。シューマンはピアノが雄弁に語って歌のテクストとのアンサンブルがすばらしい。言葉をうまくしゃべって間違えたんですけど…(笑)今日は緊張しました。これからも続けていく。24番、39番、詩人の恋すべてシューマンは1840年に書いている。アイヒェンドルフの歌詞のOP39は書き始めたのが1840年でその後改稿しているこれらは皆短い時間に集中して書かれた。リートの時代私にとって価値がある。ありがとうございました。きょうは9+12+16計37曲歌ったのでアンコールは1曲で(笑)(そでに向かい、「佐野サーーーン!」と叫ぶ。)同じくシューマンの歌曲集「ミルテの花」からDu bist wie eine BlumeMyrten Op. 25 歌曲集『ミルテの花』 作品2524. Du bist wie eine Blume 君は花のようHeinrich Heine ハインリヒ・ハイネDu bist wie eine Blume So hold und schön und rein; Ich schau’ dich an, und Wehmut Schleicht mir ins Herz hinein. 印象的に終わるお疲れさまでした!