デヴィーア様降臨!藤原真骨頂のノルマ 初日大成功!
ポリオーネの笛田 博昭さん(写真は2017年5月に撮影)と、オロヴェーゾ役の伊藤 貴之さん(写真は2017年4月に撮影)。Photo:©Shevaibra, courtesy of the artistsPhoto Album藤原歌劇団共同制作公演「ノルマ」 新制作2017年7月1日(土)★日生劇場指揮:フランチェスコ・ランツィロッタFrancesco Lanzillotta演出:粟國 淳 【キャスト】 7月1日(土)・4日(火) ノルマ:マリエッラ・デヴィーア アダルジーザ:ラウラ・ポルヴェレッリ ポリオーネ:笛田 博昭 オロヴェーゾ:伊藤 貴之 クロティルデ:牧野 真由美 フラーヴィオ:及川 尚志 ****デヴィーア様 日本でのオペラ引退公演ということで満員御礼のノルマ初日。主役3人がレベル違いのすごさを見せつけた。デヴィーアは全盛期の完璧さにはかけるが堂々ディーヴァだった。強大な声。超高音も出しさすがベルカントの女王コロラトゥーラもテンポゆっくりだが聴かせた。アダルジーザも悪くない。とても細いのにやはり強大な声で迫力満点。一番の見せ場 ノルマとアダルジーザの二重唱、圧巻だった。そして笛田さん!日本人離れした巨大な声しかも美声で甘く若々しい声。ポッリオーネは難役だったと思うが、すばらしかった。今日の会場の声「ポリオーネが一番良かった。「すごい声だったな「日本人だったの?外国人かと思ってたよ!など。絶賛の声が相次いだ。オロベーゾの伊藤貴之さんも素晴らしい美声で声量も充分。すばらしかった。いつも彼はメイクによる変貌ぶりがすごい。完全にナブッコのザッカリーア状態になっていた。指揮者すばらしかった!左手がクライバーのように弧を描く。指揮ぶりが美しく華麗。歌手の三重唱では全員にキュー出し。素晴らしい演奏を華麗に牽引した。演出の粟國淳さんすばらしかった!彼得意の円形の舞台で巨大な丸い壁が回る。とても美しい。壁は二重になっていて木の枠だけの仕切りが内側にあり別の動きをする。中に三日月🌙の形の舞台があり階段がついている。奥にはプロジェクションマッピングの背景。自在に色が変わる。何がすごいって回るもんだから歌手が動く必要がない。完全にデヴィーア様仕様。舌を巻く手腕。美的感覚もすばらしい。歌手は歌うこと以外、立ち座り以外は負担にならないようにできている。合唱が本当にすばらしかったです。お疲れ様でした。***この壁は何を意味するのか?あまりにも巨大な壁。一面に木の株のような模様が?これはドルイド教を信奉するガリアの原住民の神秘の森を意味する。きわめて排他的な世界だ。ローマから来た支配者たちを受け入れない最後の砦。その中には神殿があり、巫女ノルマの居住スペースがあるのだ。排他暴力それを超えるものとしての愛死を持って清めるしかない裏切り。古臭く野蛮だがなぜか現代でも通用するものだ。※中味にふれますのでご注意ください。序曲幕は開かないすばらしい演奏に耽溺できる。ここでもう指揮者に目が奪われる。その優美な動き!生き生きとしたリズム流れるような美しい旋律ハープすばらしい!幕が開くと巨大な壁が開き宗教的指導者のオロベーゾが歌う。Sì, Norma, sì verrà.来るべき戦いに備えて巫女のノルマの託宣を待っている。合唱もとんでもなくすばらしい!Sì. Parlerà terribileカバレッタになったら進み出てきて舞台の最前で歌う。これも演出家の心配りだ。勇壮に響くオロヴェーゾの美声。Nella città dei Cesari Tremendo echeggerà!兵士を鼓舞する。合唱最高!音楽は途切れることなく、遠くから響く。巨大な壁が閉じたいまつを持って森をさまようローマの兵士たち。現れるポッリオーネとフラヴィオ。ポッリオーネの笛田さん、最初から強い声だ。久しぶりの美声に心が洗われる。しかしこの先どうなるかと祈るような思いで見守る。ポッリオーネはパワフルなドラマティコが歌うこともあるが基本的にベルカント仕様であり、高音があり、技巧、アンサンブル能力が必要なので非常に難役なのだ。高音が得意なレッジェーロの歌手ならば技巧的に高音を入れてきたりする。オズボーンとか。最初のアリアMeco all'altar di Venereヴィーナスの祭壇を前にすばらしくパワフル!とても日本人とは思えない!アダルジーザへの思いを熱く歌う。Eran rapiti i sensi Di voluttade e amore最初の高音も完璧に出した。さすがやってくれます!そしてノルマへの恐怖を歌う。Norma così fa scempio D'amante traditor!銅鑼が鳴り響き、ドルイド教の信者たちが歌う。フラーヴィオの警告ポッリオーネは耳を貸さない。ここでカバレッタに突入Me protegge, me difendeL'empio altare abbatterò.カデンツァ部分雄雄しく歌いきりました。すばらしい!ついに期待高まるノルマの登場シーンです。壁が開く。三日月舞台が回転する。神殿の中の巫女たちノルマはしもてのそでから堂々と歩いて登場する。さすがの強大な声。ノルマはいろんな声を出さなくてはいけないのでもっとも難しい役だ。コロラトゥーラ、超高音、それでありながら大声量が要求される。グルベローヴァやデヴィーアなどのベルカントの女王の十八番の役だ。日本では大隅智佳子さんというベルカントの女王が歌える。グルベローヴァほどの声の甘さはないが、安定性は抜群。高い声も文句なく出て、技巧もすごい。なにより圧倒的なパワーを最後まで維持した。若い二人に負けてないんだからすごい。ノルマは巫女二人が持つ若枝を断ち切る儀式をする。そしてノルマは一人で回転する舞台に残り、高台に回転しながら上がっていく。半ばで立ち止まる。舞台が完全に静止してからまた上がる。演出家はさすがだ。ここのシーンはやはり睥睨して歌わなくてはいけない。Casta Diva, che inargenti 清らかな女神よカスタディーヴァだ。唯一このアリアだけがさすがに往年の輝きはないと思わせた。この曲は非常にレガート、しかも超高音をキープして歌わなくてはいけない。きっと4日はもっといいだろう。大拍手。ここのフライング拍手本当に勘弁してほしかった。バカ野郎と叫びたかった。せめて後奏聴こうよ。指揮者がカワイそう。そしてカバレッタへAh! bello a me ritornaここでものすごい超高音やコロラトゥーラが炸裂する。むしろここのほうがすごかった。懸案のアリアが終わりここからデヴィーアは絶好調に突入する。まさに真骨頂。さっきのはなんだったとうれしくなる。大興奮だ。いよいよアダルジーザの登場シーン。期待高まる。アダルジーザは細い御身のラウラ・ポルヴェレッリ。Laura Polverelli (born 1967) is an Italian operatic mezzo-soprano スカラ座やフィレンツェで歌っている人。ナブッコのアビガイッレができそうなパワフルな高い声のメゾ。実は、アダルジーザの本来の設定はソプラノなので作曲家の主旨にかなっている。声が非常にデヴィーアとかぶる、というか似ていると感じた。明確な違いが感じられないのでまるで双子のようだ。ポッリオーネが来る泣いているの?ポッリオーネの口説き。Io l'obbliai.ここから大好きな二重唱に突入する。Va, crudele, al Dio spietatoかっこいい~~!!アダルジーザも強大な声。Cielo e Dio ricopre un vel!声の甘さは笛田さんのほうが甘く美声。この声のすばらしさは今この瞬間しか共有できない宝石のような瞬間。命をかけて歌っているのだ!ADALGISA Deh! Mi lascia!POLLIONE Ah! Deh cedi, deh cedi a me!ベッリーニの重唱のうまさといったら!会話のような言葉がすばらしい歌になっている。他の誰にもまねできない美しいメロディ。なおも口説くポッリオーネ。突き放してからの泣き落とし強引な口説き文句。Abbandonarmi così! Voce in cor parla non senti, Che promette eterno ben? すばらしい!アダルジーザも強大な声。こんなに口説かれたら、相手が自分の上司の女性と事実婚状態で子供が二人いても、幸せだろうなってぐらいの口説き。アダルジーザはまだその真実を知らないのだが。男は罪な生き物!POLLIONE Giura.ADALGISA Giuro.アダルジーザは落ちてしまう。愛を誓ってしまう。あなたについていくと。場面変わってノルマの居住区子供がいる抱きしめるノルマしかしクロチルデに子供を連れて行くよう命じるクロチルデは牧野真由美さん。やはり強大な声で安定している。メゾ。クロチルデの設定はソプラノのはずなのでどうして?と思った。アダルジーザが告白しに来る。ここでもすばらしい会話のままの二重唱。Dolci qual arpa armonica ノルマは自分の恋の最初の頃を思い出す。Al caro oggetto unita Vivrai felice ancor.ノルマの高音そして二重唱Tu rendi a me la vita, Se non è colpa amor.ノルマはアダルジーザの恋を応援する喜ぶアダルジーザすばらしいハーモニーのコロラトゥーラのシーン、待ってました!これが聴きたかった!Vivrai felice ancor.このシーンが最もノルマで特徴的なシーンなのだ。彼女たちの魂は双子なのだ。しかしそこにポッリオーネが。あの人です。Ei! Pollion!その相手を知りがく然とするノルマのコロラトゥーラノルマはポッリオーネを脅迫する。あなたの子供のために震えるがいい!(子供?どういうことなの?)アダルジーザはいぶかる。そして恋人がノルマの内縁の夫であることを知る。そのショックといったらないですよね。Oh! Di qual sei tu vittimaすばらしい三重唱の見せ場に突入。ワルツのリズム。ここ指揮者もすごいので要注目です。L'empio il tuo core tradì!Norma! De' tuoi rimproveri 大興奮!震えるほどすばらしいここが日本とは思えません!三重唱は次のステージに移るポリオーネはアダルジーザに訴える。これは運命なんだノルマを捨てるのも運命なんだ。この言葉にノルマの怒りが沸点に達する。行きなさい!でも私の怒りが永遠にあなたを追いかけるわ。恐ろしい呪いVanne, sì, mi lascia, indegno,Maledetto dal mio sdegnoものすごい迫力の三重奏が展開する。これが日本で見れるとは!この三人はもう人間を超えたレベルの体力と気力ですね!まさに死闘。第1幕了休憩に入る第2幕寝ている子供ノルマは短剣を手にし、子供を殺そうと逡巡している。Di Pollione son figli Ecco il delitto. ノルマはしかし思い切れずAh! No! Son miei figli!できないわ!私の息子たちなのよ!子供が目を覚ます二人を抱きしめるノルマクロチルデを呼ぶ。アダルジーザが来る。誓う?誓います。ノルマは婉曲に自分が死んで神殿を清めると宣言する子供の面倒を見てほしいアダルジーザ「私が彼に話します。あなたさまのところに戻っていただけるよう」Mira, o Norma, a' tuoi ginocchi アダルジーザは子供たちをみてくださいと懇願する。NORMA Ah! Perchè, perchè la mia costanza ノルマの心がぐらっとする。重唱となる。「双子の重唱」だ。ステキ過ぎる~~アダルジーザはもう友情しか私の心にはありません。自分もいっしょに身を隠そうと言うノルマはまた友人を見出した。二人は一緒に身を隠そうと誓い合う。Sì, fino all'ore estreme 来た~名シーンです。重唱のアップテンポシーン。すばらしい!!日本でこれが聴けるなんて!ありがたい!!拝みたいぐらいだ。大拍手***ガリアの戦士たち彼らを抑制するオロヴェーゾガリア人たちはローマ人との戦闘を始めたいのだが、巫女のノルマの託宣がないのでできないでいる。その残虐な報復の時を切望しつつも、ノルマに従い、待ち続けるガリア人たち。オロヴェーゾの伊藤さん、すばらしい!なんて美声なのだ。うっとりする。声量も充分。この衣裳と髭ではさぞ暑いだろう。お疲れさまです!***Tempio d'Irminsulノルマは心穏やかにアダルジーザの吉報を待っている。しかしそうは問屋が卸さない。ノルマにアダルジーザの裏切り(?)心変わり(?)を告げるクロチルデアダルジーザはポッリオーネの説得に向かったがミイラ取りがミイラになる逆にポッリオーネにまたほだされてしまったのだ。あぁ、げに弱き心の者、汝は女。同じ女性で双子のように仲が良くて似ていても、気性だけはノルマとアダルジーザは真反対だ。E qui di sangue, sangue roman, Scorreran torrenti.ローマ人の血が河のように流れるわ!ノルマは激怒し、銅鑼を3回鳴らす。すぐにドルイドの兵士たちが参集する。先頭の戦士は走ってくる。ガリア人たちは血に飢えている。この時を待っていたのだ。Norma! Che fu?ノルマは言うGuerra, strage, sterminio合唱Guerra, guerra! Le galliche selve いけにえは誰なのかを告げてくれ!そこに騒ぎがポッリオーネが連れてこられる手首を縛られているポッリオーネはその場にひざまずかされる。ポッリオーネ殺せ!ノルマ私が殺します。ノルマはひざまずくポッリオーネの後ろ髪をつかみ、顔を上げさせる。見つめるノルマ緊張が走る。(できないわ!)群集Ferisci!刺すんだ!その前に…ノルマは事情聴取の必要があるからと人払いをする。壁が有効に活用される。壁が半ば閉まり、壁の前にポッリオーネと二人きり。ここからまた名シーンですIn mia man alfin tu seiポッリオーネを心理的に追い詰めるノルマ。女って怖いなあ。あたしにはできるのよあなたの命を救えるのは私だけなのよ。もうアダルジーザに会わないと誓って!私もそしたらもうあなたの前には現れないわ。誓って!No. Si vil non sono.私はあなたの息子も殺すとこだったわ。Oh Dio! Che intendo?なんだって激しく叫ぶポッリオーネそうよ。俺を殺せばいい。オレ一人が死ねばいいんだ。ローマ人全員が死ぬのよ!アダルジーザを火あぶりにすると脅す。Ma di lei, di lei pietà!お慈悲を!いまさらなの?もういいわあなたをあたしと同じだけ不幸にしてやったから。Ah! T'appaghi il mio terrore! 私だけに怒りを向けてくれ!Dammi quel ferro!その短剣をよこせ!ノルマは人を呼ぶ。またポッリオーネは拘束される。いけにえの名を告げよう。それは巫女だ。動揺するポッリオーネNorma, pietà!裏切り者の巫女の名は?火刑台を準備するがよい。しかしノルマは急に天啓のように気が変わる。アダルジーザを殺してポッリオーネを苦しめるということが理不尽であることに気づき反省する。Son io.私です。ポッリオーネも雷に打たれたように気が変わるノルマの本当の真実の愛を知りまたノルマを心から愛するようになったのだ。ノルマが、裏切り者なのか?皆、信じちゃいけない!ポッリオーネが叫ぶノルマは嘘は言わないわ。Sotterra ancora sarò con te一緒に火刑台に上り死にましょうah, sì, moriamo! ポッリオーネとノルマの二重唱二人は共に死ぬことを決意する。Pria di morire, perdona a me! Che feci, o ciel!巫女でありながらローマ人と情を通じた女を群集とオロヴェーゾは許さない。ノルマは子供のことだけが気がかりだった。父親であるオロヴェーゾに懇願する。お父様…Tu m'odi.聞いて下さい私は母なのですMadre!Deh! Non volerli vittime Ah! Padre, abbi di lor pietà!オロベーゾはついに娘と孫への愛の前に屈する。Padre, tu piangi?Oppresso è il core三重唱と合唱。笛田さんの声がひたすら立つ。すばらしいテノールだ!Padre Addio!二人が火刑台に向かう全幕了大感動の舞台!ひたすら感謝しかありません!お疲れさまでした。***次世代大型テノール小笠原一規さん。あす7/2公演、フラーヴィオ役で堂々藤原本公演デビューです!Photo:©Shevaibra, courtesy of the artist