東大和市の魔笛・オリジナルの全編コメディに大笑い
Photo AlbumPhoto:©Shevaibra, courtesy of the artistSHINZO Kinen Opera Vol.4オペラ「魔笛」全二幕/ドイツ語上演(セリフ部分日本語)/日本語字幕付き作曲:ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト日時:2018年5月12日(土)17:30開場/18:00開演会場:東大和市民会館ハミングホール 大ホール料金:2500円(全席自由)指揮:酒井 俊嘉演出:太田麻衣子台本:大山 大輔プロデュース:新造太郎舞台監督:八木清市ザラストロ:髙崎翔平タミーノ:吉田連夜の女王:中江早希パミーナ:盛田麻央パパゲーノ:齋藤一頼パパゲーナ:川田桜香モノスタトス:宮西一弘侍女I:藤原千晶侍女II:六車琴美侍女III:坂野アンナ武士I:秋山和哉武士II:上間正之輔弁者:野寺研吾僧侶I:髙橋駿僧侶Ⅱ:山田健人童子I:吉田拓真童子II:島田恭輔童子III:沖山元輝合唱:GIOVANI MUSICI合唱指導:黒田正雄オーケストラ:TSオーケストラコンサートマスター:伊藤太郎コレペティートル:有岡奈保、平川綾菜、岩上恵理加チラシデザイン:bocca***いまだかつてこんなに面白い魔笛があっただろうか?魔笛はパパゲーノ出演部分のみが喜劇仕立てだが、この魔笛は全編コメディであった。真面目な教訓譚が爆笑喜劇になっていた。恐るべし、大山大輔(台本)&太田麻衣子(演出)昨年のメリーよりさらに喜劇度アップ普通の魔笛には出てこない謎の物体が次々と登場!パロディ要素満載でブロードウェイでも興行出来そうな派手でセクシーなオトナの魔笛。若い力がすごい!歌いながら演技したり、歌いながら踊ったり、大変な運動量!完売公演なのもうなずける、圧倒的エンターテイメントでした。今回注目していた新星ザラストロの高崎さんすばらしかった!朗々たる美声のバス。しかもあるまじき超イケメン!これは大スターになる予感。日本のディアナ・ダムラウ中江さん 夜の女王、やはり圧巻でした!超高音も完璧なコロラトゥーラ、すごかった。演技もすごくて、悪役に徹していました。しかしどこかコミカルで憎めない夜の女王。パミーナの盛田さんも美声のリリック・ソプラノで美声と表現力を兼ね備え、パミーナにぴったりでした。意外にもコメディエンヌぶりがとても板についていて、面白かったです。タミーノ王子をお聴きするのは私は2回目と思われる吉田連さん。独特のセクシーな美声のタミーノで、完璧な人間ではなくすごく人間的に描かれていました。リリックな美声を聴かせてくださいました。今回爆笑キャラがたくさん出てくるのですが、中でも最高だったのが三人の童子。童子なのにオトナの男声が完璧なハーモニー!その独特な動き!こんなに低い音程の三人の童子は史上初!(^^笑爆笑の渦でした。昨年のメリーのトリオ再びという感じでした。鎧の武人二人はザラストロのボディーガード。テノールの秋山和哉さん スピントで歌ってくれました。すばらしい!秋山和哉さんは秋に?院オペラでコジのフェッランドをやるそうです!音楽はすばらしい!演奏が常に速く、軽快な展開でとてもよかったです。ドイツ語を早く歌わなくてはいけないので歌手の皆さんは大変ですが、こちらとしては速い展開がエキサイティングで楽しめます。指揮者の酒井 俊嘉さん、お疲れさまでした。見所聞きどころ満載の魔笛 最高でした!***ホールには長蛇の列、チケットは早々と完売。お客さんの平均年齢は20代、ファミリー層中心で、客席がすごく若々しい(笑)。周りの大半はオペラを一度も聴いたことがない人たちだ。彼らが釘付けになった「魔笛」。さてどんな魔法が使われたのか?上演は歌の部分、独唱、重唱、含め音楽のついている部分は全てドイツ語、音楽のない部分はすべて日本語です。ドイツ語部分には字幕がつきます。冒頭のアナウンスからして、すでにストーリーの一部なのだから驚き。大山大輔の台本はすべてのシーンに読み替えや新しいものを出してきてサプライズ満載だ。こんなに楽しい魔笛は、言ってみればブロードウェイのミュージカルが日本語で演じられているようなおもしろさなのだ。蛇女に追いかけられるタミーノ。お色気むんむんのおっぱい女にまさに食べられそうになっちゃうタミーノ!この女性はセサミストリートの人形と一体化したようなカラフルなピンクなピンキー蛇なのだ。可愛い!そこにお堅い系の女三人が出てきておっぱいミニスカ女を退治する。そうとも知らずタミーノは自分がセクハラを疑われるかと心配のあまり逃げ出す。パパゲーノが来るが、これが…今回のものすごいアイディアアルターエゴ役名は「叡知?」であるが全身黄色タイツのその男の背中には「H」最初はパパゲーノのエッチな妄想のこと?と思っていたがそうではなく「叡知」、理性。人間のやってはいけないぎりぎりのところまで来ると、彼がピーッ!と笛を吹き鳴らすのだ。すると人間はそこで行動をやめるという…(笑)これっておもしろすぎじゃないですか?誰しも心の中に持っている安全ブレーキなのですよこの役を演じた加藤隼さんが仏頂面でおもしろくなさそうに演技してるのでやっぱり欲望のままに生きられないということはこんなにつまらなく自己抑制的なのだなと考えちゃって。説明してもいまいちわかりづらいと思うのですけど。パパゲーノという男はいわゆる典型的欲望のままに生きる男なのでこの影といっしょに常に行動してなんとか社会的人格を保っているのです。おもしろいなあ。こういうの魔笛に入れてくるアイディアっていったいなんなのだろう完全に創作ですよね!大山大輔恐るべし!パパゲーノの笛の部分はH君の口笛なのでこれも爆!パパゲーノとタミーノの会話はとっても普通じゃない(笑)お前の趣味は?お前は僕は…ほ、ホーロータミーノが自信なさげに答える。パパゲーノ「最近流行の、自分探しってヤツ?」(爆笑)パパゲーノ、倒れている蛇女を見て「これはパンがオーソレミオ!」(爆)三人の侍女パパゲーノの口にチャック!これがほんとのチャックで開け閉めできる(笑)タミーノにハートの肖像画を渡すここでタミーノのアリア♪なんて美しい絵姿Dies Bildnis ist bezaubernd schön美しい声で歌います侍女が告げる女王様です中江さんの女王すべてが圧巻でした!アリアO zittre nicht, mein lieber Sohn!まさに耳にとっての極楽体験日本のディアナ・ダムラウ体感しました!幸せです!この難しいアリアをドラゴンボールのように魔術を使いながらやるので面白すぎです。まじ演出、鬼です!Hm! Hm! Hm! Hm! Hm! Hm!パパゲーノは口のチャックをとってもらうこれでまたしゃべれるよ!侍女たちはタミーノたちに笛と鈴を与え旅立たせる旅の道案内は…ここが大爆笑でした。三人の童子が子供でも女性でもなく、男声!ハイテノールとバリトンとバスでしょうか?完璧なハーモニー!オクターヴ下げたのでしょうか?他の歌手との重唱もあるのでそうなんでしょうか。この三人が歌は完璧なのにしぐさと演技、動きが面白すぎて出てくるたびに爆笑でした。Lebt wohl! lebt wohl! auf Wiedersehen***モノスタトスの部下たちが登場します…のはずなんですが彼らは全員パミーナ・ファンクラブなのですパミーナはいったんモノスタトスの手を逃れ脱走しますがまたつかまえられてしまいます。パミーナはモノタを平手打ちしますが自分が気を失います。パパゲーノが登場し、お化けと思ったモノスタトスは逃げ出します。パミーナの本人確認をするパパゲーノ目が二つ…本来の台本よりもっとおバカに変えておりますBey Männern, welche Liebe fühlenすばらしい!三人の童子に導かれタミーノは試練の門へ。ここはタミーノの見せ場。Paminen retten ist mir Pflicht.背後には舞台にオケが載っているのでセットはなくタミーノはしもてのそでに入ろうとするが下がれ!と言われます。三番目の門から出てきたのは…ボブ・ディラン?泉谷しげる?弁者ですがこのプロダクションの設定では「自由人」とのことつまり浮浪者(爆)盲目で、服装もすごく自由。舞台のそでに住んでいる?黒めがね。他の全員が宗教団体に所属しており黒尽くめの服装なのに彼だけが普段着なのです。そして○○!彼のそばに立った役者は全員「○○!」という演技をします(笑)。弁者はタミーノが女の言葉に騙されていると教え諭す。このプロダクションは結末を見てもわかるように男軍団と女軍団の対決という演出をしていますどうしようもない男たちとそんな男たちにあきれている女たちという設定でしょうか。現状のme too 現象なども盛り込んだ、女性差別の原作を逆手にとった演出で完全に男のバカな愛すべき部分を描きまくっております(笑)。Bald sagt ihr, oder nie! タミーノはパミーナが生きていると知り、うれしくなって笛を吹きます。フルート奏者がしもてのそでで演奏します。森の動物たちが集まってきます。フルートにHの口笛が応えます(笑)タミーノがはけると、パミーナとパパゲーノが登場。そこにモノタおい、縄を持って来い!そして追い詰められたパパゲーノは例の鈴を鳴らします。すると何が起こったでしょう!?このシーンが最高のシーンでした。これはすごすぎます。これを歌いながらやるのです。これはぜひもう1回見たいです!再演お願いします!!来年もお願いします!そこにザラストロ登場の知らせが!Die Wahrheit! sey sie auch Verbrechenパミーナすばらしい!ザラストロに熱狂する女性信者たち。ザラストロには屈強なボディガードが2人ついていて女性たちからガードしています。それもうなずけます。登場したザラストロ、髙崎翔平さん、ものすごいイケメンです!かっこいい!これはこういう演出をつけたくなるのも納得です。まるで俳優のような整ったかんばせお声はヴェルヴェットのように美しいリリックバスヴォイスSteh auf, erheitre dich, o Liebe!ここはザラストロの最低音の見せ場です。タミーノが連れられてきてパミーナと初めて会います。タミーノはもうパミーナしか目に入りません。抱き合う二人。引き剥がされる。しかしモノタは鞭打ち刑を宣告されますモノタはボディガードによって連れ去られます。ここでもう一つの出会いも描かれています。パパゲーノとパパゲーナです。パパゲーナはパパゲーノに激しく惹かれ、恋に落ちています。パパゲーノはまったく気づいていません。タミーノとパパゲーノは修行することに。休憩を告げるのは…(笑)***第2幕椅子が並べられている僧侶たちの会議。ここも面白い演出。オーケストラが美しい音楽を演奏している間彼らは議論しあい、それが高じて大喧嘩に発展するが音楽が演奏されている間は無音で展開しているのですしかし序曲が終わったとたん喧騒状態に かんかんがくがく(笑)おもしろすぎです!ザラストロのアリアO Isis und Osiris schenketすばらしい!低音も完璧!***僧侶とタミーノ、パパゲーノの修行を始める前の講話の部分も会話が全面的にオリジナルになっていておもしろいです。パパゲーノは彼女を用意するというオーダーを僧侶に。この僧侶、山田健人さん、なにげにパパゲーノに振り回される演技がすごく秀逸でした!僧侶の二重唱Bewahret euch vor Weibertücken三人の侍女が登場Wie? Wie? Wie?僧侶たちが全員登場し、侍女を追い払います僧侶たちの歌が誠にすばらしい!O Isis und Osiris, welche Wonne!パパゲーノは気絶中***パミーナは鎧の騎士(パミーナファンクラブ会員)の二人の膝枕でお昼寝中。そこにモノスタトスAlles fühlt der Liebe Freudenすばらしい!宮西さん美しい声のリリックテノールで発音もすばらしいです。そこに夜の女王が!モノタは硬直します。またまた圧倒的な歌唱!Der Hölle Rache kocht in meinem Herzenすばらしい!夜の女王はパミーナに短刀を渡します。モノタが話しかけますおいらが力になるよ!あなたっていい人だったのね…このあとの展開が爆笑です。登場したザラストロの言葉がまたおもしろすぎです。めっちゃ受けました。振られたモノタザラストロの押し付けがましいアリアですが歌唱はものすごくすばらしい!In diesen heil'gen Hallenなぜかパミーナに密着してくるザラストロme too なの?***沈黙の修行を続けるタミーノとパパゲーノに救いの手が。三人の童子だ。パパゲーノはバナナをもらう三人の童子がタミーノに笛を、Hに鈴を渡す。なんでこんなに真っ黒なんだ?確かに(笑)そこに笛の音を聴きつけたパミーナが沈黙の行を貫きしゃべらないタミーノパミーナここで渾身のギャグ(笑)このあとでパミーナのアリアギャグのあとに独唱ってすごい演出だ…!(笑)パミーナすばらしい!Ach ich fühls, es ist verschwundenもう私は死ぬしかないのね…パミーナ去るタミーノの悲しみパパゲーノ「なんでギャグに笑ってやんないんだ?」そこ?(爆)***パパゲーノのもとに老婆がやってくるあんたいくつなの18歳だよそうカレシいるの?いるよ!とパパゲーノを指差す。パパゲーノは逃げ出す。***ここで悪魔のようなザラストロがまた登場する。さあ、パミーナ、タミーノにお別れを言いなさい。これはザラストロとタミーノ、パミーナの三重唱なのですがザラストロはタミーノにぴったり寄り添い、なんとなく男の軍団側に連れて行こうとする感じを出していました。やる気のないパパゲーノのために僧侶はサービスします。ワインです。「1957年物のロマネ・コンティ…」Ein Mädchen oder Weibchen ワインがぶ飲みのパパゲーノ鈴を鳴らしているのはH。僧侶がワインを取り返しますがもうワインはなく、僧侶は悲しみます。パパゲーナが登場しますが僧侶はとうせんぼします。匍匐前進してもダメ(笑)それならばとパパゲーナは僧侶にばれないように老婆の格好で登場します。ばれなかった!あんたあたしに永遠の愛を誓わないと一生ここから出られないよ誰もいないハミングホールに取り残されて…誓うパパゲーノ振り向くとそこには美しいパパゲーナが…パ…!連れ去られるパパゲーナ***三人の童子パミーナの様子がおかしいと話している。パミーナが短剣を手に出てくる。童子はパミーナの剣を奪うZwey Herzen, die von Liebe brennen四重唱声の高いテノールの童子Iの吉田拓真さん、すばらしい!とにかく動きも見た目も面白すぎる三人の童子が出てくるたびに笑いの渦でした。***ついに来た!このシーン。鎧の武士のシーン。このシーン大好きなのです。鎧の武士は別名「ガチムチSP」という役名で筋肉隆々という設定。ボディビル演技を披露したりしてます(笑)Der, welcher wandert diese Strasse voll Beschwerdenすばらしい。タミーノが来ますが、2人に阻まれ中に入れてもらえません。Tamino, halt, ich muss dich seh'nしかしパミーナの声がすると軟化する二人。Ja, ja, das ist Paminens Stimme! 二人はパミーナファンだからなのです。Tamino mein! O welch ein Glück!Sie leitet euch auf grauser Bahnパミーナとタミーノは再会し、すばらしい四重唱ここが大好きなのです最初はタミーノが上の音程を歌い、二回目は鎧の騎士テノールが上の音程を歌う。ここはパワフルな歌唱が要求されるのです。秋山さんのパワーあふれるスピントのような歌唱を聴けました。そして火と水の試練ですがここも爆笑でした。パミーナのあちっあちっという演技が可愛すぎますタミーノの目に入ったよこの野郎!という演技も楽しすぎます。***パパゲーノと「H」Papagena! Papagena! Papagena!パパゲーノは自殺するぞと脅します。ここもおもしろい演出!Hさんも活躍笛を回すんだ!パパゲーナとの再会。Pa - Pa - Pa幸せの瞬間です。ここで可愛い子供たちが登場しますがパパゲーナばっかし…!(笑)しかも何十人(笑)パパゲーナとお揃いの服で可愛い。モノタと侍女、女王は宮殿に侵入しますが…無力化されます。魔力の戦いでザラストロが勝ったようです。ザラストロDie Strahlen der Sonne vertreiben die Nachtここの女王の演技もすばらしい!タミーノとパミーナが登場し大団円。かと思いきや最後が…!という面白すぎて大感動だった魔笛なのでした。カーテンコールですばらしいおまけまで!これはうれしい!皆様お疲れさまでした!!来年も期待しています。