岩田ジョヴァンニ 演出の側面から
Day 2 Cast: Taiki Tanaka as Leporello, Carlo Kang as Don Giovanni,Sadahiko Higashihara as il Commendatore, Tatsuji Iwata as the director and Yuta Otsuka as Masetto Photo AlbumPhoto:©Shevaibra, courtesy of the artist岩田ジョヴァンニ 演出の側面から藤原歌劇団 ドン・ジョヴァンニ 新制作 東京公演 Day 2 キャスト表・概要はこちら今までの岩田演出に過剰なまでにあった、暴力がすっきりと昇華されている。言って見ればちょっと岩田演出っぽくないすっきりしたスタイリッシュさがある。言って見れば、わざと猥雑に描いていた部分がすっきりしている。彼の熱い熱過ぎる思いを我慢してジョヴァンニ一人に注ぎ込んだかのよう。ジョヴァンニという悪魔のような自己中心的人間の中に彼のマリスがすっかり吸収されたかのようだ。そう今回のジョヴァンニこそ、岩田そのものなのだ。そしてそのジョヴァンニを徹底的に苦しめる演出だ。ジョヴァンニにコミカルさは微塵もなく、野獣のようにギラギラと、女を破滅させることしか考えてない。ジョヴァンニに翻弄されつつ人間的にまともである部分を示すのはレポレッロ。彼は最も人間的でコミカル。彼の犠牲者であると共に彼の全てを見届ける証言者。重責だ。彼がいなかったら客は感情移入する先がなくなってしまうからだ。ようはこの二人の主役と狂言回しがそれ以外の人物とどう関わっていくかという話。魔笛におけるタミーノとパパゲーノ ボエームにおけるロドルフォとマルチェッロの位置付けに似ている。序曲はそのまま演奏され幕が開くと、大きな壁に囲まれた大きな室内そこにあるのは巨大な十字架の形をしたお立ち台。壁の上方にある左右3つずつの窓は十字架の形になっているそうここはキエーザキエーザにあるのは、お墓 霊ピョウです。最初はわからなかったが、そのうち確信した。出入りできる扉が左右に二個ずつある 手前のそでと奥の正面も出入りに使えるので7つの出入り口があることになる。巨大な十字架に磔になっているように見えるのは、ジョヴァンニではなくレポレッロ。Notte e giorno faticar,寝たままで歌うジョヴァンニとアンナジョヴァンニは白いハチマキで顔を隠している。ジョヴァンニはネグリジェ姿のドンナアンナを組み敷き、犯そうとする父親が現れ、決闘になる。アンナは逃げるここ注目ポイント父親は剣の使い手でジョヴァンニの剣を叩き落し、ジョヴァンニの右の手のひらを傷つける。とっさにジョヴァンニに拳銃を渡すレポレッロ。ジョヴァンニは発砲。騎士長は撃たれる。騎士長はジョヴァンニの上に覆いかぶさりジョヴァンニの目隠しを剥ぎ取る。騎士長は犯人の正体を知り驚愕しつつ絶命する。そのままの状態でLeporello, ove sei?レポレッロ どこだ遺体を裏返す逃げるアンナとオッターヴィオ 部下アンナの悲しみ気つけ薬を!遺体を運べ去る二人ジョヴァンニとレポレッロレポレッロはジョヴァンニの傷に包帯をする。è da bricconeジョヴァンニに注進するレポレッロを恫喝するジョヴァンニかみてから ドンナ・エルヴィーラクラシックな上流階級の服装 19世紀末あたりか帽子Ah, chi mi dice mai 素晴らしい!凛とした美声が響く再会しお互い驚く二人Madamina, il catalogo è questo カタログの歌大きな白い布が落ちてきて浮かび上がるのは無数の女性の名前レポレッロの手帖は登場せずこの布で表現される。この布も最後まで象徴的に使われるので要注目。無数の手形がこの布の上に投影される。いわばハンコのようなイメージか。お手付きが表現される。田中大揮さんの歌唱が素晴らしい!豊かな美声。彼は今度バリトンの役のファルスタッフを歌うそうだが、きっとすばらしいだろう。奥の大きな入り口から乱入する白い服装の村人たち。若さいっぱいで生き生きしている。左右に分かれ、男たちはゼルリーナを囲み、女たちはマゼットを囲んでいる。ジョヴァンニは花嫁が誰か問うと人の輪からゼルリーナが出てくる。ジョヴァンニは最初からゼルリーナに目をつけたわけではなく、誰でも良かったのだ。一方のゼルリーナも満更ではなく、積極的な雰囲気だ。O caro il mio Masetto!とマゼットを向くがすぐにゼルリーナのほうに振り向くジョヴァンニ。マゼットを追い払おうとするレポレッロHo capito, signor sì!行きますってば!マゼットはおかんむりだ。ジョヴァンニとゼルリーナLà ci darem la manoお手をどうぞパワフルで強靭な二人の声がすばらしい。キスそこにエルヴィーラAh, fuggi il traditor! ゼルリーナを連れて行くそこにアンナとオッターヴィオ。バレてない、とジョヴァンニは安心する。しかし最後の一言ですバレてしまう。Or sai chi l'onore怒りのアンナDalla sua paceオッターヴィオのダッラスア・パーチェ岩田演出は今回歌唱を尊重してしっかりとアリアは歌に集中させていた。結果 神歌唱が頻発オペラの醍醐味を味わえた。大拍手レポレッロはエルヴィーラを閉め出した顛末を語るFin ch'han dal vinoジョヴァンニのシャンパンアリアここだかわからないが、ジョヴァンニの手の傷口が開き出血し始める。ゼルリーナとマゼットBatti, batti, o bel Masettoぶってよ、ベルマゼットゼルリーナはぬけぬけと嘘をつき、単純な農民マゼットをなだめる。仮面の三人Protegga il giusto cielo美しい三重唱まさにモーツァルトの美の極致です。ゼルリーナはジョヴァンニに見つかるゼルリーナを押し倒すが覆いかぶさって顔を上げるとそこにマゼットの顔。十字架の台をうまく使っている。ここはコミカル。取り繕うジョヴァンニ。屋敷に招かれた三人ジョヴァンニとレポレッロ 村人たちViva la libertà!仮面の三人ジョヴァンニと戯れるゼルリーナマゼットは女性たちに囲まれて動けない。悲鳴ジョヴァンニは全てレポレッロのせいにするが、オッターヴィオは嘘を暴く拳銃を突きつける。ジョヴァンニは傷が痛み出し、苦しむ。ここだかわからないが、彼の右手は次第に石化しているように硬直し始めている。騎士長の呪いが全編にわたって、じわじわと彼を苦しめる。オレは負けない!あらゆる圧力への挑戦神からの警告への否定休憩召使い4人に丁重にかしづかれるジョヴァンニ一人は髪の毛爪 傷?靴磨き洋服面白いのは、レポレッロは彼ら4人の黙役よりも身分が下でバカにされていること。レポレッロに靴べらなどの必須道具を投げつけて彼らは去っていく。おヒマをくださいと頼むレポレッロをバカにしたように金貨を放り投げるジョヴァンニ屈辱を感じつつも承諾するレポレッロ女をやめてください。バカなのか?そんなことはありえんさ。次のターゲットはエルヴィーラの侍女服を取り替える二人エルヴィーラがジョヴァンニの歌唱に誘い出されるジョヴァンニはレポレッロに自分の動作を真似させる。ここ面白かった。Discendi, o gioia bellaエルヴィーラはいったん戻ると下に降りてくる。レポレッロに抱きつくレポレッロは調子に乗ってエルヴィーラの腕にキスの嵐燃え尽きちゃったよ。笑いながらバカにしているジョヴァンニ大声を上げ、二人を追い払ういよいよ窓辺に出でよDeh, vieni alla finestraすばらしい歌唱!ただゆっくり歌うのでマンドリンの伴奏が先に行ってしまう。二度も繰り返してしまう。ここは残念。マゼットと村人ジョヴァンニはレポレッロのふりをする。Metà di voi qua vadano村人たちに指示を出しながら歌うジョヴァンニ左右を向く村人たちがユーモラス。フェリテ,フェリテやっちまえ!村人たちを追い払うマゼットはいったんはけるが戻ってくる。ジョヴァンニは味方を呼びに行く。マゼットに武器の確認をし、猟銃とピストルを受け取るジョヴァンニ。マゼットはジョヴァンニの部下4人にボコボコにされる。貴族は 身分の高い人は、自ら手を下さない。なるほど。4人に殴る蹴るされても生きてるマゼット 強い。ゼルリーナがきてゼルリーナにキスをねだる。Vedrai, carino幸せな二人一方レポレッロとエルヴィーラエルヴィーラは置き去りにされるレポレッロはジョヴァンニと間違えられるゼルリーナはレポレッロをリンチしかねない勢いエルヴィーラが割って入る私の夫なんですギョッとする一同Dei! Leporello!重唱ここもすばらしい!種明かしするレポレッロエルヴィーラの目が点Ah, pietà, signori miei! レポレッロは逃げ出すIl mio tesoro オッターヴィオのイル・ミオ・テゾーロも神歌唱すばらしい!Mi tradì, quell'alma ingrataエルヴィーラのアリアもまたすばらしい難しいアジリタも。この時奇跡が起きる。地獄への入り口に足を踏み入れているジョヴァンニを救える可能性があるのは、タンホイザーにおけるエリーザベトのように彼を愛する人の祈り エルヴィーラの祈りしかないのだ。大きな○○が○○しだす。しかし…墓場ここのシーンすばらしかった。装置が瞠目岩田演出はまるでお化け屋敷。心臓に悪いまだ2時か宵の口だレポレッロは主人に気づかないふりをするおい主人がわからんのかおい誰に会ったと思うお前の女だった構わんだろその笑いも今夜までだ誰だ⁉︎ジョヴァンニには騎士長の亡霊が見えない。墓碑銘を読めそこにあるのは墓ではなく、騎士長の血塗られた剣だ。嫌ですよおい死にたいのかレポレッロが読むコメンダトーレここにて復讐を待つおい 晩餐に招待しろええ!死ぬか?あっしじゃなくて主人が亡霊がジョヴァンニの背後に近づくがジョヴァンニには見えないまるで恐怖映画!騎士長の声だけが聞こえ、二人は墓場を後にする。アンナとオッターヴィオアンナのアリアNon mi dir, bell'idol mioいよいよ最終シーン晩餐ジョヴァンニの部下たちがサーブするレポレッロは盗み食いをする本当に食べているレポレッロ。おい口笛を吹けできません試し喰いしてたんで試食してただと?そこにエルヴィーラ悔い改めてエルヴィーラが座り込むのでジョヴァンニもしゃがみこむが彼女を無理矢理立たせる酒を頭からかけるキャアアエルヴィーラ去る。ぎゃあああどうした 見てこいわあああターターターター何だ?騎士長の亡霊が入ってくるDon Giovanni, a cenar tecoドン・ジョヴァンニ晩餐に参ったぞ料理を用意しろみんな死にました冥界の者は食事しないお前こそ冥界の晩餐に来るか旦那様は忙しいんで来るのか?行かないって言って!俺は卑怯者じゃない行くぞでは誓いに手を出せほら。騎士長がジョヴァンニの手を取ると手は完全に石化してしまう。苦しむジョヴァンニ悔い改めよ嫌だ悔い改めよ嫌だハイ、だろ嫌だ。ハイだ。嫌だもう時間がない巨大な布が落ちてきて背景を隠す。悪魔の合唱レポレッロは食事のテーブルの下に避難している。ジョヴァンニは…衝撃の展開本当にいつも思う、ジョヴァンニはここで終わってほしい。全員出てきて大団円床の上の黒いマント?に刺さっている剣これは騎士長の制裁の証しなのか。皆それぞれの思いでバラバラの人生を歩んでいく。全幕了こんなにすごいオペラをあの時代に書いたモーツァルトはやはり天才です。お疲れ様でした。