横浜バッティのアイーダDay 1
Photo AlbumPhoto:©Shevaibra, courtesy of the artist神奈川県民ホール・オペラ・シリーズ2018グランドオペラ共同制作ヴェルディ作曲 オペラ「アイーダ」AIDA by Giuseppe Verdi全4幕/イタリア語上演・日本語字幕付き/新制作Day 12018年10月20日(土) 神奈川県民ホール 大ホール後援:イタリア大使館 イタリア文化会館 出演 【指揮】アンドレア・バッティストーニ 【演出】 ジュリオ・チャバッティ 【原演出】マウリツィオ・ディ・マッティア【出演】20日アイーダ:モニカ・ザネッティン ラダメス:福井 敬 アムネリス:清水華澄アモナズロ:今井俊輔 ランフィス:妻屋秀和 国王:ジョン ハオ 巫女:針生美智子伝令:菅野 敦(両日出演)合唱:二期会合唱団 バレエ:東京シティ・バレエ団 ほか 管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団●10月20日(土) アモナズロ役は堀内康雄に代わり今井俊輔が出演いたします。●10月21日(日) ラダメス役は西村悟に代わり城宏憲が出演いたします。それに伴い伝令役は、両日共に菅野敦が出演いたします。***このオペラのタイトルはやはり「アムネリス」だった。清水華澄さん、圧倒的なパフォーマンス!やんやの大喝采を浴びていた。アムネリスは彼女の十八番そして今日の公演は彼女の金字塔になるだろう。そのくらい凄まじかった。そして対する雄、ラダメスの福井敬さんもものすごかった!パワーハンパないドラマティコ。重い声で高音部も美しく出て最高音はアクートが決まる。彼も金字塔的パフォーマンスだった。だからこの2人が対決するシーンが最高にすばらしかった。一方タイトルロールのアイーダはこの2人に挟まれては分が悪い。悪くはないが、いいところがない。超高音が強靭に出ず、声質もソプラノのはずだが、メゾのようにダークで主役の輝きに欠ける。また注目のアモナスロ、今井俊輔。出てきただけで空気が変わった。声も強靭でピアノとフォルテを使いわける歌唱が見事で演技もうまい。敗軍の将でありながら誇り高く復讐に燃え 娘を利用することに良心も咎めるがしかしデューティーを全うする武人を演じてすばらしかった。バッティストー二の音楽が本当にすばらしい!演出が大時代的で凡庸でつまらないのは彼の音楽を引き立てるためだったのか。すばらしいテンポ 楽器に歌わせる。テンポがほぼ高速のバッティ・ワールドに酔いました。また巫女の針生さんが美しいソプラノでとんでもなくすばらしい!まさに天に昇って行くようなお声でした。王様のジョンさん いかめしい威厳ある声。ランフィス妻屋さん悪役に徹して見事。すばらしかった。***今日は4階どセンターという望みうる最高の席だった。神奈川県民ホールはやはりセンターでないときついから。超ラッキー何しろ今日はデッドなホールをものともしない特大ヴォイス2人が主役だったのでありがたかった。序曲がまるで別の曲に聞こえる程ゆっくり。バレエシーンが多かったがバレエすばらしかった。pas de deuxが終わるとラダメスランフィスCeleste Aida清きアイーダすばらしい。Ergerti un trono伸ばす!un trono vicino al sol~~~~!最高音も強靭に胸音さすがです。アムネリスの疑念。感ずかれたかとおののくラダメスアイーダが来る。アイーダはラダメスを見てくるがアムネリスに気づき、背後の奴隷たちの輪に加わるアムネリスはアイーダを呼ぶあなたのことは妹と思っているのよ…奴隷のくせに!震えるがいいわ!三重唱!ラッパが鳴り響き、エジプト王が現れる。戦地エチオピアから来た使者をここへ!伝令が来る。よろめきながら進み出る。指揮官はアモナスロです。戦争だ!ランフィスが叫ぶ王は指揮官の名を告げるラダメス!王が勇壮に歌う。Su! del Nilo al sacro lido続けてランフィスGloria ai Numi!合唱Guerra, guerra e morte allo stranier!すばらしい~!ラダメスとアムネリスも加わるGuerra!バッティの超アップテンポ!アムネリス高らかにRitorna vincitor!一人取り残されたアイーダRitorna vincitor!勝ちて帰れですって、なんておぞましい言葉が私の口から!di catene avvinto!ここは刺すように歌ってほしいAh! Sventurata che dissi?私ったらなんてことを口走ったのラダメスの死を願うなんて!I sacri nomi di padre, d'amanteNumi, pietà del mio soffrir! 神様、憐れみください。アイーダの苦しみ。恋人のことも父のことも口にできない哀しさ、無念さ。場面転換第二場メンフィスの神殿高いところに一人立って歌う巫女まるで天女の声かと思うほど美しいリリック・ソプラノ。Spirito animator, ah!すばらしい!巫女に呼応する男声合唱の超ピアニッシモが実にすばらしい。アメイジングぞくぞくしてくるこのようにはっとさせる瞬間が限りなくある。さすがバッティストー二!バレエシーン。聖剣を携えた美しい男性が踊る。神の化身らしい。このダンサーがラダメスに聖剣を授ける。ランフィスIl sacro brando dal Dio tempratoランフィスNume, custode e vindiceラダメスNume, che duce ed arbitro二重唱合唱のパワーが解き放たれすごい!!ここでも合唱に負けないラダメスの声がすごい。Noi t'invochiamoImmenso Fthà!第1幕了休憩第2幕アムネリスのかしずかれる部屋無数の女官たち戦いはエジプト軍が勝利した。宴の準備をしているアムネリスアムネリスAh! Vieni, amor mioバレエがすばらしい!男性ダンサーがファイブ・フォーティーを二回決めるその前は空中で二回転を二回ダブルのジュテ・アントゥールナンこの人すごいですアイーダが来たわおつきを下がらせるおつきの数もすごいのです。アムネリスはアイーダの本心を探ろうとしている。Ebben: qual nuovo fremito T'assal, gentil Aida? アムネリスはラダメスが死んだと嘘をつく悲しむアイーダいいえ生きてるわアイーダは喜ぶあなたのライバルはこの私、ファラオの娘なのよ!アイーダは悲痛に訴えるPietà ti prenda del mio dolorどっちがメゾなの?って思うぐらい2人の声が逆転している。トランペットが響くe apprenderai Se lottar tu puoi con meNumi, pietà, pietà, pietà!勝ち誇ったように豪華な衣裳を翻し、アムネリスが去る第二場いよいよ凱旋の場!胸が高鳴るアイーダトランペット!舞台のかみしものそでに3基ずつ配置されている。もう最高です!Gloria all'Egitto, ad IsideGloria!Gloria!合唱もガチ歌いまくってます。エジプト王、アムネリス、ランフィス、アイーダが入場してきます。かみての玉座に陣取ります。アイーダは王の足元にかしずいています。アイーダトランペット!左右でサラウンドで響き渡ります。かっこいい!!バレエシーンこのバレエもすばらしい!今度は別の男性ダンサーがソロアラスゴンドのピルエットグランジュテのマネージュ見事です。女性もシングルのフェッテ・アントゥールナン群舞Vieni, o guerriero vindice合唱 すばらしいいよいよラダメスの凱旋王がラダメスを迎えるSalvator della patriaアムネリスが冠をラダメスに被せる捕虜たちが現れるその中に密かに敗軍の将 アモナズロが紛れ込んでいた。お父様!よせ!お前は?アイーダの父ですMa tu, Re, tu signore possenteアモナスロの強靭な歌唱に胸が熱くなる誇り高き敗軍の将。その押し隠した復讐心の演技にいたるまでリアルな存在感のアモナスロこんな中ラダメスはアイーダを愛しく思っている重唱・合唱がすばらしい!!押し問答の重唱がすさまじく見事です。捕虜たちは弱々しく歌い、ランフィスたち神官一同は強く歌います。合唱とオケを切り裂いて飛んでくるラダメスの声が見事です。ここはアイーダもがんばらないとと言うシーンです。ラダメス:王様はおっしゃいました、私の望みをかなえると。望みを言うが良い捕虜たちを釈放してくださいランフィスいけません王様は中庸を選ぶランフィスの進言を入れ、アイーダの父だけは捕虜として残すことに。ラダメスよ娘と結婚するがよい。アムネリスが勝ち誇るまたもや重唱&合唱 オケがすばらしい〜!やはりオペラの中の最高のシーンの一つであることに間違いありません!お客さん大興奮です。第2幕了休憩第3幕ナイルの河畔アムネリスとランフィスが現れるランフィスDe' mortali nel coreここが超低い音程です。妻屋さん見事です。神殿に入っていく2人。アイーダが密かに現れる。ラダメスと密会するのだ。その後ナイルに身を投げる決心をしている。O patria mia, mai più ti revedrò!もう二度と祖国には帰れないのね…もう二度と…アモナスロが来る。このシーンを待ちわびておりました。E patria, e trono, e amor, tutto tu avraiアモールは極めて優しく言うすごいな。故郷に帰るという思いで嬉しくなっているアイーダに厳しい命令を突きつける。Tripudii immensi ivi potrai gioirアモナスロ伸ばしどころ伸ばす!さすがです。バッティの棒でもやるときゃやります。これがライブです!エジプト軍は老人や子供を殺したんだぞ!怖ろしい思い出に苦しむアイーダ我が軍は準備できている軍の行軍するルートさえわかればそれは誰が探り出すのですかお前だ。アモナスロはアイーダに詰め寄るお前はラダメスをここで待っているのだろう?お前を愛しているそしてラダメスはエジプト軍の将軍だIntendi?..わかったか?(ぞく~~~!これをアイーダの耳元で囁くように言うんです!)アイーダは絶叫する勘弁してくださいNo! no! giammai!できません!できません!Ti additan essi e gridanoならばエジプト軍が我らの都市を殲滅することになるのだぞ。骨となった骸骨の腕がお前の頭に手を置くそれはお前の母親だNon sei mia figlia! Dei Faraoni tu sei la schiava!お前は私の娘ではないファラオの奴隷なのだ!Faraoni を思いっきり大音量で伸ばします。かっこいい~~~お父様、お許しください私は違います奴隷じゃありませんまだあなたの娘と呼んでいただけますPensa che un popolo, vinto, straziato, Per te soltanto, Per te soltanto risorger può民の苦しみに思いをはせるのだ彼らを救えるのはお前しかいないのだここ大好きなのです!すばらしい歌唱にもう大感動です。アイーダO patria! o patria, quanto mi costi!もう涙ダーです。うちひしがれたアイーダにCoraggia! がんばるんだ!としゃべるように歌うもう~すばらしい~ラダメスが来る音楽の動機何度も同じフレーズが繰り返されさわやかなラダメスの声がかぶってくるというヴェルディ先生のすばらしい筆ラダメスPur ti riveggo, mia dolce Aidaやっと逢えたね、愛しい人よ!大声量だ!アムネリスと結婚なさるのでしょう?Odimi, Aidaトランペットと歌うラダメスアムネリスから逃れられるというの?逃げましょう逃げるだって!!??絶叫するラダメスすごい!アイーダは説得するLà tra foreste verginiラダメスl suol dov'io raccolsi二重唱Il ciel dei nostri amoriほんとパワフルラダメス。Sì, fuggiam da queste muraラダメスはアイーダと逃げる決心をし、エジプト軍の進軍ルートを漏らしてしまうアモナスロが現れるがく然とするラダメス、錯乱する。オレは恥知らずの裏切り者だ!そこにアムネリス裏切り者!アモナスロは腰の短刀を抜き、アムネリスに襲いかかろうとするラダメスが防ぐ兵士が追ってくるアモナスロはアイーダの手を引き逃げるラダメスは二人を逃がし兵を押しとどめるランフィスがゆっくり近づくラダメスはひざまずき両手を差し出すio resto a teアムネリスは動転している場面転換第3幕了またもや大大拍手。ここは休憩なし第4幕ここからのアムネリスがもうものすごい神が降りてたゾーンに入ってたラダメスを愛しているアムネリスのせつない心彼を助けたい!Io l'amo sempreラダメスを呼びなさいラダメスは悠々と兵士に囲まれて出てくる将軍だったプライドがにじんでいるアムネリス:弁明してください。私がお助けしますわ。私は弁明いたしません。私は自分に恥じていない。ラダメスはアイーダが死んだと思い、自分も死のうとしているアムネリスの涙ぐましい説得私のために生きてください!E patria, e trono, e vita Tutto darei per teアイーダは生きているわ行方不明になったのよ。アイーダをあきらめれば助けるわやめてください。アムネリスは怒る命などいらないおまえの情けが一番怖いTemo sol la tua pietàラダメスは衛兵4人に囲まれ去っていく。この演出はまるで台本どおりにしようとしているようだ神官たちが奥をえんえんと通り過ぎるいったい何人いるの?ってぐらい長い行列。アムネリスが苦しむ中チェロとの共演。さきほどのアイーダはオーボエラダメスはトランペット。Io stessa lo gettai!私が、私自身が彼を死に追い込んだのよ!あの方は無実です。どうかお救いください!Mi sento morir!ああ、死んでしまいそうだわ。Radamès! Radamès! Radamès!ラダメスの訊問ラダメスは黙秘を貫く。Traditor!アムネリスは苦しむAh, pietà! Egli è innocente! Numi, pietà!ああ、お情けを!ラダメスは無実よ神様、お願いです!ラダメース!と呼ばわる声の音程がだんだん高くなっていく!妻屋さん見事です!高い声から低い声まで美しい!ラダメスは生きながら墓に埋葬される刑に処せられることに。アムネリスは泣きながら神官たちに食ってかかるが、彼らは無視する。ここで私が感じてたのは男性と女性の違い。男性にとって社会での規範を破ることは絶対許されない。それが自軍の将であっても、仲間であっても、その罪はないことにはできない。女性にとっては感情が優先され、いともたやすくそれができるのだ。Anatema su voi!アムネリスは神官たちに呪詛の言葉を投げつける。第2場ラダメス墓の中もうアイーダには二度と会えないのか…!アイーダが現れるTu... in questa tomba!悲痛なラダメスの絶叫。アイーダは刑の執行を予測し、しのびこんでいたのだ。ラダメス:Morir! sì pura e bella!アイーダ:Vedi?... di morte l'angelo見て、死の天使が。背後に巨大な○○が現れるIvi comincia l'estasi D'un immortale amorもういいのですO terra, addio; addio, valle di pianti.二人は恍惚の中、寄り添って死んでいくpace, pace!そのかたわらで、悲痛に嘆くアムネリス涙を誘うシーンでした。全幕了聞いていた様にせり上がりや四面舞台もなく回転も左右の動きもない新しい舞台機構をまったく使っていない。日本全国でやるとそれぞれの劇場のキャパが違うのでこうなるのかだとしたら誠に残念。もしかしたらこういうわざと昔のオペラの演出を施してみたかったのか?予算がなかったのか?目の肥えた東京のオペラファンにしてみたらアイーダにしてはあまりにもベタな演出だった。しかし音楽と歌手らがすばらしく、お客さんは大熱狂だった。お疲れさまでした!会場を出たらかつてないゲリラ豪雨10秒で全身びっしょりになってしまった。これはアムネリスの涙…***後日談:この公演の翌日の日曜、玉川上水の国立大学の院オペラにうかがった。私は予感していた。ラダメスが今日はもしかしたらこちらにいらっしゃるのではないかと。やはり福井敬さん、穏やかな笑顔でいらっしゃいました。昨日のことがまさに嘘の様です。昨日はすばらしかったです!福井敬さんは、教えてくれました。この舞台はローマの野外歌劇場のセットをそのまま持って来たのだと。その雰囲気をお客さんにも味わってもらうためわざと、黒子による装置の移動や転換も見せているそうです。野外オペラには幕や緞帳というものがないからです。グランドオペラスタイルでアイーダの本場での上演の姿を再現しているのです。この話を聞いて思いました。この方はやはりオペラを愛している方だと。私はカルチョを見るためにヴェローナには行きましたがアレーナには行かなかった。ブレゲンツにも行っていないイタリアの風を感じながらの野外オペラのスペクタクルいつかは味わってみたいものです。そのような雰囲気をこのアイーダでは味わえるのかもしれません。Kei Fukui, tenor, 21 Oct. 2018Photo:©Shevaibra, courtesy of the 福井敬net.