ロッシーニ・レクチャー・コンサート
Photo AlbumPhoto:©Shevaibra, courtesy of the artistMusic Program TOKYOシャイニング・シリーズVol.3 ジョアキーノ・ロッシーニ没後150年記念 レクチャーコンサート「ロッシーニの魅力再発見!」2018年11月17日(土)15:00開演(14:30開場)東京文化会館 小ホール出演ヴァイオリン:岸本萌乃加 *第9回東京音楽コンクール弦楽部門第1位ヴァイオリン:山田香子チェロ:ピーティ田代櫻コントラバス:白井菜々子 *第13回東京音楽コンクール弦楽部門第3位クラリネット:アレッサンドロ・ベヴェラリ *第15回東京音楽コンクール木管部門第1位ピアノ:西村翔太郎 *第14回東京音楽コンクールピアノ部門第2位及び聴衆賞ソプラノ:天羽明惠メゾソプラノ:富岡明子 *第1回東京音楽コンクール声楽部門第3位メゾソプラノ:高橋華子 *第8回東京音楽コンクール声楽部門第2位及び聴衆賞テノール:小堀勇介テノール:渡辺康バリトン:ヴィタリ・ユシュマノフ *第14回東京音楽コンクール声楽部門第2位バリトン:市川宥一郎ピアノ:藤原藍子解説:水谷彰良(日本ロッシーニ協会会長)曲目ロッシーニ: 弦楽のための6つの四重奏ソナタより 第1番 ト長調 チェロとコントラバスのための二重奏曲 ニ長調より 第3楽章 クラリネットとピアノのための幻想曲 パガニーニへの一言 オペラ『マオメット2世』より「心配ありません 卑しい愛情には」 オペラ『湖の女』より 三重唱 オペラ『チェネレントラ』より 六重唱 他***ロッシーニ・レクチャー・コンサート解説の水谷彰良さんすばらしいですね。すっかり感心しました。膨大なロッシーニのデータをメモも見ずに的確に簡潔に教えてくれるんです。さすがプロです。とても勉強になりました。後半のロッシーニ歌手たちがとてつもなくすばらしい!大興奮でした。レアな作品を取り上げていただいて本当にありがたいです。綺羅星の如き歌手陣の中でも、テノール小堀さんが光り輝くすばらしい歌唱を披露しました。リッチャルドとゾライーデではHigh Cへのジャンプ、アジリタでHigh Dに上げたりといった超絶技巧が炸裂!湖上の美人ではなんとロドリーゴ役を早くも披露!難しいHigh Cへのジャンプを散りばめた三重唱が圧巻でした。また僭越ながら考察…昨日、ロシアGPでけがで苦しみながらも優勝した羽生結弦選手を見て思う。やっぱり小堀さんとの共通点あるな~と。完全なる王者であるゆえんは、臨機応変にもある。前日練習でけがをしてしまった羽生結弦はフリー本番ではリスクの大きい大技を回避しながらも優勝を狙える構成に変えてきたという。ほぼアスリートと言える、プロのオペラ歌手の世界にも通じるものがある。いかにリスクを減らしながらも最高のパフォーマンスを見せるか。昨日の小堀「選手」はすごかった。これは口では言えない。私の見た彼の姿と彼の演唱、すべてを感じ取っていなければわからない。プログラムの順番を急遽差し替えたのも主催のすばらしい采配だったと思う。彼は全力ですごい緊張感で「大技」を決めてきた。その凛とした声の輝き、まさに王者の輝きだった!またマオメット二世のカルボのアリアを歌った富岡さんがものすごいアジリタを披露!ダニエラ・バルチェッローナのようでした。***※以下水谷氏の解説はメモを下に記述。ロッシーニ:弦楽のための6つの四重奏ソナタより 第1番 ト長調 第1ヴァイオリン岸本萌乃加 第2ヴァイオリン山田香子 チェロ:ピーティ田代櫻 コントラバス:白井菜々子第1ヴァイオリン岸本萌乃加さんがすばらしい!ピーティ田代櫻さん、とても美しい!水谷「普通弦楽四重奏はコントラバスではなくヴィオラが入るのだが、この作品はCbが入っている。ロッシーニ16歳の時の作品です。12歳で書かれたと巷間喧伝されているが、最近正しく訂正された。なぜ12歳と言われていたかというと…(詳述割愛) ロッシーニ:チェロとコントラバスのための二重奏曲 ニ長調より 第3楽章(1824) チェロ:ピーティ田代櫻 コントラバス:白井菜々子 ピーティ田代櫻さんがとても明るく溌剌としていて美しい。水谷「フランスではルイ18世からシャルル10世に変わった。1825年、シャルル10世の作曲家となり、彼に捧げる「ランスへの旅」を書いた。その後「ギヨーム・テル」などの10作品を創った。7月革命がおき、シャルル10世はルイ・フィリップに代わった。この際、国王とロッシーニのすべての契約が破棄されてしまった。ロッシーニはオペラの筆を折って訴訟を起こす。終生年金を得るという契約を裁判で勝ち取ってイタリアに帰国した。1848年、2月革命。ロッシーニは1855年、パリに戻る。1868年没。ロッシーニは『老いの過ち』として160曲も書いた。それらにひき肉とかきゅうりとか変な題名をつけた。(ベルリオーズの『死刑台への行進』などといった)ロマン主義の題名を揶揄する意図があったようだ。」ロッシーニ:クラリネットとピアノのための幻想曲(1829) Cl:アレッサンドロ・ベヴェラリ ピアノ:西村翔太郎水谷「1829年は『ギヨーム・テル』を書いた年。1作2万フランで書いた。」飛び跳ねるように演奏するアレッサンドロ・ベヴェラリ。ロッシーニ:ピアノ曲「間隔の体操」 ピアノ:西村翔太郎ロッシーニ:ピアノ曲「ロマンティックなひき肉」 ピアノ:西村翔太郎『ひき肉』の超絶技巧がすごい!!ロッシーニ:パガニーニへの一言 ヴァイオリン岸本萌乃加 ピアノ:西村翔太郎水谷「「マティルデ・ド・シャブラン」の初演時に、指揮者とコンマスが病気になってしまった。その時、パガニーニがヴィオラを弾きながら指揮もした。そのお礼なのか、作曲した曲」ヴァイオリン岸本萌乃加さんが本当にすばらしい!酔った!彼女は大成するのではないでしょうか。第二部 オペラアリアと重唱ロッシーニ:『タンクレーディ』より、『恭しく崇める正義の神よ」 ソプラノ:天羽明恵神業コロラトゥーラ!水谷「オペラ・セリア『タンクレーディ』。コロラトゥーラや、アジリタと呼ばれる敏捷な歌い方が駆使されている作品。メロディに言葉がたくさんついているのがロッシーニ。この曲は高い声のハイ・ソプラノのために書かれた作品。 ナポリの王立劇場、サン・カルロ劇場のために7つのオペラを作曲。これらがRossiniの最高傑作と言われている。『リッチャルドとゾライーデ』は1990年に上演された。今までに世界で4回しか上演されていない。そのうち3回がペーザロのロッシーニ音楽祭。 ロッシーニ・ルネッサンスと言われているが、まだまだ「ロッシーニ・ルネッサンス」はこれから。 続いては『マオメット2世』のカルボのアリア。アルトのための曲。これはさらに技巧が『タンクレーディ』より高まっている。ドラマチックなアジリタが使われている。 ベルカントとは何か?それを知りたかったらこれからの2曲を聴いて納得してください。」ロッシーニ:『リッチャルドとゾライーデ』より♪彼女が常に私に忠実なら リッチャルド:小堀勇介(テノール) テノール:渡辺康Ricciardo e ZoraideCavatina con pertichini S'ella m'è ognor fedele (Ricciardo, Ernesto) Ricciardo: Yusuke Kobori, tenore Ernesto: Yasushi Watanabe, tenoreこれが最高でした!リッチャルド登場のアリア(カヴァティーナ)→二重唱RICCIARDOS’ella mi è ognor fedele,Se l’amistà mi è guida,Quest’alma non diffidaDi possederla ancor.ERNESTOAll’amistà ti affida,T’affida a questo cor.RICCIARDOTrionferemo insiemeDi sì tiranna sorte,Le barbare ritorteSaprà spezzare amor.ERNESTODividerò tua sorte,O vinto, o vincitor.RICCIARDOQual sarà mai la gioiaAllor che a lei d’accanto,Versando un dolce pianto,D’amor le parlerò,Se nel pensarlo solo,ogni più acerbo duoloGià nel mio sen cessò?小堀リッチャルド: QuestでHigh C →アジリタでHigh D(?)(JDFはHIGH C)渡辺エルネスト: T’affida a questo cor.小堀リッチャルド:アジリタ Saprà spezzare amor. アジリタ Se nel pensarlo solo,ogni più acerbo duoloアジリタ High C→High C→High Cここがすごい!声を転がしながらのHigh Cジャンプ連続部分渡辺エルネスト:Dividerò tua sorte,小堀リッチャルド: High C→ アジリタ High C二重唱小堀リッチャルド: 最後 High Cで締め。音程は可能な場合後で音源を確認して修正します。→修正済み。小堀さんはJDFが出していないHigh Dを出している。(多分)→今年のペーザロ音楽祭(2018)でJDフローレスがリッチャルドのこのアリアを歌っているんですが、JDF絶好調ですね。今回の小堀さん、それに劣らずものすごかったです。この相手役のエルネストがこの時、シャビエル・アンドゥアーガなんですけど、この人は2016年のペーザロ音楽祭『ランスの旅』で騎士ベルフィオール役で出演し、リーベンスコフ伯爵役だった小堀さんと共演しています。ロッシーニ:オペラ『マオメット2世』より「心配ありません 卑しい愛情には」 カルボ:富岡明子(メゾソプラノ)彼女は今年前半のコンサート形式のノルマでアダルジーザだった。今回もすごかった!まるでバルチェッローナのようなアジリタ。芯と重さのあるアルト。Brava!水谷「演奏曲を入れ替える。テノールを休ませるため。 『ギヨーム・テル』ではカバレッタに当たる技巧的部分がありません。ヴェルディを先取りしている音楽。」 『湖の女』はサンカルロ劇場のために書かれた超絶技巧を駆使するオペラ・セリア。三重唱は長いので、途中カットしているがそれでも10分ある。 ロッシーニはテノールにHigh C以上のHigh Dを書いている。またコントラルトにはソプラノの音域まで、2オクターブ半書いている。」ロッシーニ『ギヨーム・テル』より♪じっと動かず、片膝を地に着け」テル:ヴィタリ・ユシュマノフチェロ:チェロ:ピーティ田代櫻ヴィタリ、美声で感情込めて歌う。ロッシーニ:オペラ『湖の女』より 三重唱♪過酷な危機からスコットランドの王を救いましたLa donna del lago Atto secondoTerzetto:"Da rio periglio salvai di Scozia il re" ~"Qual pena in me già desta...Misere mie pupille!...Io son la misera"Elena :Akie AmouUberto: Yasushi WatanabeRodrigo:Yusuke Kobori ウベルト(国王ジャコモ)役の渡辺さん、美声!清澄な声のリリコ・レッジェーロ。小堀氏は敵役ロドリーゴ役。小堀氏はこの役を来年12月、園田隆一郎指揮の藤沢市民オペラ『湖上の美人』でロール・デビューする。(2019年12月1日(日) 演奏会形式「湖上の美人」) 実は今回予習でペーザロ音楽祭の『湖上の美人』の音源を聴きながら向かった。2016年の夏。ロドリーゴはマイケル・スパイアーズで、ウベルトはファン・ディエゴ・フローレス。ロドリーゴは低い声から高い声まで出なければならず、小堀さんには最適の役。 この時のペーザロの湖上の美人、彼はランスの旅にリーベンスコフ伯爵役で出演していたため、当然見学している。この時、彼は自分がロドリーゴを歌うことになるとわかっていたのだろうか?マイクル・スパイアーズは「上の音から下の音まですごい!」とのコメントを残している。この時は実はJDFよりもマイクルのすごさが際立った公演だった。このようにロドリーゴ役はおいしい役なのだ。 METで見たときはJDF,ジョイス・ディドナート、ジョン・オズボーンだった。 ウベルトとエレナが二人でいるところにロドリーゴが乱入。三角関係。怒りながら歌うロドリーゴがすさまじい!High Cの連発!超難しいシーンだ。突き刺すような強靭な高音が求められる。さすがすばらしかった。ノーミス!(フィギュア風に言えば)ロッシーニ:オペラ『チェネレントラ』より 六重唱Gioachino Rossini La Cenerentola Act II Scene 2:Sextet"Siete voi" ~Questo è un nodo avviluppato アンジェリーナ Angelina(チェネレントラ):富岡明子 ドン・ラミーロ Don Ramiro:小堀勇介 ドン・マニフィコ Don Magnifico:ヴィタリ・ユシュマノフ ダンディーニ Dandini:市川宥一郎 クロリンダ Clorinda:天羽明惠 ティスベ Tisbe:高橋華子こちらは小堀氏が今年オペラ全幕を東京と大阪で演じ、いわば自家薬籠中の作品。声楽的に技巧満載のシーンながら、小堀氏のすばらしい演唱が光る。富岡さんもすばらしい!SilenzioQuesto è un nodo avviluppatoDonna sciocca!Me la godo in veritàダンディーニのアジリタアンジェリーナAh! signor, s'è ver che in petto~E trionfi la bontàLo giuro: mia sarà.小堀、Lo giuroの高音はH.ダンディーニAlfine sul bracciale Ecco il pallon tornò 早口ロッシーニ・クレシェンド大拍手!やっぱりコンサートの最後にふさわしいシーンですね。アンコールまでありましたRossini, Guillaume Tell - FinaleGuillaume Tell: VitalyArnold Melchthal:小堀TMathilde: 天羽S?Jemmy: 天羽S?Hedwige: 富岡明子MSGUILLAUMETout change et grandit en ces lieux. Quel air pur!全員Liberté, redescends des cieux, Et que ton règne recommence!『ギヨーム・テル』のフィナーレ。全員でフランス語で歌います。テル役はヴィタリです。小堀さんのフランス語がまたすばらしいです!すばらしかった~ありがとうございました!!お疲れさまでした。